【ドラジ】松嶋菜々子「お金は絶対に女を裏切らない」…最高視聴率34.2%、フジ月9『やまとなでしこ』ヒロイン”桜子”が令和では「正論」に見えるワケ

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大ヒット「恋愛ドラマ」を令和から見ると…

トレンディドラマの代名詞であるフジテレビ月曜21時のドラマ放送枠(通称「月9」)は、『東京ラブストーリー』や『ロングバケーション』など数々の名作を生み出し、視聴者を魅了してきた。

2000年に松嶋菜々子主演で放送された『やまとなでしこ』もそのひとつだ。お金を最重視する客室乗務員と貧乏だが愚直な魚屋店主の恋愛ドラマは大きな話題となった。

世帯全話平均視聴率(26.4%)および、世帯最高平均視聴率(34.2%)を記録したが、これは2000年以降のフジテレビ系ドラマとしても歴代2位の大ヒットだ(ちなみに、1位は同じく月9枠で木村拓哉主演の『HERO』なので、「恋愛ドラマ」というカテゴリーでみると『やまとなでしこ』は1位だ。)

そんな大ヒット作を、今の視点で見つめなおすとどう見えるのかー。

放送から四半世紀以上経った今なおリアリティを感じる描写もあれば、大きな価値観の変容を感じざるをえない描写も見受けられる。具体的にどんな描写があったのかー。まずはあらすじを確認しよう。

主人公である神野桜子(松嶋菜々子)は、客室乗務員として働きながら、お金持ちとの結婚を目標に、合コンに勤しむ。その熱量は、大病院の御曹司・東十条司(東幹久)を射止めてもなお、さらなるお金持ちを狙って合コン通いを続けるほどであり、「合コンの女王」とも呼ばれている。

そんななか、中原欧介(堤真一)と出会う。最初は金持ちの医者と偽ることで桜子も興味津々に付き合い始めるものの、やがて経営の厳しい魚屋の店主であることが発覚する。

お金のない欧介とお金を重視する桜子。

2人の関係性はこれで終わるかと思いきや、桜子の亡き母の教えである「お金では買えない、たった1つのもの」を探したいと思う気持ちもあり、時間をかけてお互いの仲を深めていくことになる。

「幸せはお金で買える」価値観はより切実なテーマに

本作の大きなテーマは結婚相手に経済力を求めるか否かという選択だ。一方は大病院の御曹司である東十条、かたや経営の危うい魚屋を個人で営む欧介。

そもそも桜子はなぜここまでお金にこだわるのか?それは彼女が幼少期に貧しい生活を経験したことがコンプレックスになっていることに由来する。

「やっぱり人を幸せにしてくれるのは、お金よねー。憧れなんていうのはおまけ」「どんな誠実な男よりも信じられるのはお金。お金は絶対に女を裏切らない。」といった考えは過激すぎる気もするが、彼女の生い立ちを考慮すると分からなくもない。

桜子:恋っていうのはね、人間ごときにするものじゃなくて、お金にするもんなの。お金は女を裏切らないの。

(中略)

同僚:貧乏なハンサム男と100歳のお金持ちどっち取ります?

桜子:100歳

徹底した”経済力至上主義”の姿勢はファンタジーにも映るが、無視できない一面でもあることも事実だ。

実際、『やまとなでしこ』が放送された2000年はバブル崩壊の影響で若者が新卒正社員として安定した職を得ることが難しい「就職氷河期」と呼ばれる時代であり、作中でも「倒産しないだけマシだと思わないと」「ボーナスも出ないなんてショックだよ」と嘆くサラリーマンが登場していた。

このような経済状況を振り返ると、桜子の”経済力至主義”は贅沢をしたいという私利私欲なものではなく、安心を手に入れたいという切実な願いのようにも見えてこないだろうか。

「安心」を手に入れたいという欲望はどの時代でも普遍的なものだ。桜子が視聴者を魅了した2000年と比べて共働き世帯が増えたり、生活コストが重くのしかかったりしている令和の状況をみると、避けては通れないテーマになっていることは明白だ。桜子の「幸せはお金で買える」発言は現代の方が共感されやすい価値観なのではないだろうか。

「拝金主義」「金の亡者」として認識されていた桜子の特殊な一面は、今や一般化しつつある。四半世紀前の外れ値的価値観が、時代を超えて一般的になるという逆転現象は、非常に興味深い。

「お金か愛か」という二者択一が成立しない時代

桜子の価値観は現代でも共感できる一方で、見方によっては幻想にも見えてしまう。なぜだろうかー。それは、当時は「経済力を選ぶか」「愛を選ぶか」といった選択の余地があったからだ。つまり“お金”と“愛”は別々の価値が置かれていたのだ。

低賃金や物価上昇の負のスパイラルが進行したいまでは、「お金か愛か」という二者択一はもはや成立しないように思える。現代は「愛を選ぶうえでもお金が必要な時代」だからだ。

『やまとなでしこ』でも経済状況を窺わせる描写がないこともない。

先述の不景気を嘆くサラリーマンの描写に加え、欧介が奨学金をもらって留学した経験があること、店の経営が危ういことなど苦境が描かれている。しかし、それ以上に深掘りしない。

「お金で苦しいことがあっても、愛があれば何でも乗り越えられる」というのは本作が伝えたいメッセージでもあり、当時の社会の空気感でもあったのだろう。お金の面は何とかなるという前提で、「裕福な生活を求めるか」「裕福ではないけれど本当の愛を求めるのか」という究極の選択がこの作品では成立していて、見どころになっている。

ほかにも、玉の輿に乗ることが結婚の理想として描かれている点も現代とは異なる。

国立社会保障・人口問題研究所が実施している出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)によると、近年は結婚相手の条件として男性は女性の経済力を重視または考慮する傾向が見られ、女性は男性の家事・育児の能力や姿勢を重視する傾向にあるという。

かつて家庭の主流であった「男性が稼いで、女性は専業主婦として家事をする」モデルは崩壊しており、それゆえ「玉の輿」という概念までもが過去の遺物となっている。

これらの点が、現代の視点ではファンタジーとして色濃く映る。

では、現代の結婚観とはどのようなものか。この問いを考えるとき、今年発売された凪良ゆうの小説『多類婚姻譚』を思い出さずにはいられない。本屋大賞の受賞歴もある作家の最新作を補助線に、結婚観の現在地を確認しよう。

後編記事『「金持ちとしか結婚しない」松嶋菜々子・桜子は今なら大炎上必至か…平成の名作フジドラマ『やまとなでしこ』を令和に放送したら起きそうなこと』に続く。

【つづきを読む】「金持ちとしか結婚しない」松嶋菜々子・桜子は今なら大炎上必至か…平成の名作フジドラマ『やまとなでしこ』を令和に放送したら起きそうなこと