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旭川市女子高生殺害事件の内田梨瑚氏(23)や、江別市大学生集団暴行死の川村葉音氏など、北海道で20代女性に長期の実刑判決が相次いでいる。

刑が確定すると「女子刑務所」に収容されることになるが、塀の中ではどんな生活が待っているのか。

内田氏らの収容先となる可能性がある「札幌刑務支所」で服役した元受刑者の女性が、その実態を語った。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●収容先は「札幌刑務支所」の可能性も

旭川市の事件では、内田氏(23)に懲役27年、共犯の小西優花氏(21)に懲役23年が、江別市の事件では、先に裁判が始まった川村氏(21)に懲役30年が、それぞれ言い渡された。

その影響もあってか、SNS上では、刑確定後に彼女たちが収容される「女子刑務所」に関する投稿が目立つ。

弁護士ドットコムニュースが6月23日に配信した女子刑務所の記事<女子刑務所は「快適すぎる」「ホテルみたい」SNSで拡散…元受刑者「トイレにも自由に行けず地獄だった」>にも、多くの反響が寄せられた。

北海道で実刑判決を受けた女性受刑者の多くが収容されるのが、札幌市内にある「札幌刑務支所」だ。隣接地には、男性受刑者を収容する札幌刑務所がある。

数年前に札幌刑務支所を出所した女性のAさんは、塀の中での生活をこう振り返った。

「結論から言うと、札幌刑務支所の受刑環境は決して悪くありません。特に金銭的に困窮し、食うのに困るほどの人や、身寄りのない高齢者にとっては安泰な環境です」

●「鍵なし部屋」は例外、「トイレも廊下から見える」

ネット上では「女子刑務所は個室で、鍵もない」といった情報が広まっているが、Aさんはこれを否定する。

刑務所では、生活態度などに応じて「優遇区分」が設けられており、処遇にも違いがある。

「優遇区分3〜5類の受刑者は、単独室(個室)でも共同室でも外から施錠されます。自分で部屋を出入りすることはできません。トイレも居室内にありますが、単独室には衝立があり、共同室は一応個室ですが、中に人が入っていることが廊下から見える構造になっています」

Aさんによると、鍵のない部屋で生活できるのは、優遇区分1〜2類の受刑者に限られるという。

●「はんめ」で共犯者との接触を回避する仕組み

旭川市や江別市の事件はいずれも複数の加害者が関与している。共犯者同士が同じ部屋で生活することはあるのだろうか。

Aさんは、受刑者の間で使われる「はんめ(反目)」という言葉を挙げ、こう説明する。

「収監後の面接で、『関わりたくない人』『同じ工場になりたくない人』を聞かれるので、もしいれば申し出ることになっています。共犯者の有無を含めて関係性を調査したうえで配置先が決まりますが、トラブル防止のため、申し出ればほぼ通ります」

小西氏はすでに刑が確定しているが、今後、内田氏が同じ刑務所に収容された場合も、こうした仕組みによって接触が回避される可能性が高いという。

●テレビで人気なのは「警察24時」

テレビ視聴も、ネット上ではたびたび話題になる。

Aさんによると、札幌刑務支所では平日の午後6時から午後9時まで地上波テレビを視聴できる。

「単独室なら自由ですが、共同室では部屋のメンバーで相談して決めることが多いです。ただ、累犯(服役が2回以上の受刑者)の受刑者がいる部屋では、昔からの慣習で一番手が決定権を握るケースもあるようです」

人気番組についてはこう話す。

「グルメ番組や歌番組、『警察24時』が人気です。特に『警察24時』の薬物事件の場面では、経験者から生々しい解説を聞けるので、臨場感が増し、好評です。

大みそかだけは深夜0時過ぎまでテレビ視聴ができます。私がいた当時は、『ガキの使い』を観てから『紅白歌合戦』『ゆく年くる年』の順で観ていました」

●アロエクリームが支給、散髪は2択

スキンケア用品として、アロエクリームが支給されるほか、指定の洗顔フォームやフェイスクリームを私費で購入できるという。

「私は洗顔フォームを泡立てて、泡ホイップ洗顔を楽しんでいました」

髪は、肩につく長さになると黒いヘアゴムで束ねる必要がある。散髪は「既定カット」と呼ばれるショートカットか、「何センチ切るか」を申告する方法の実質2択だったという。

●「娑婆より快適だった」と感じた理由

Aさんは収監される前、刑務所を「自由を奪われ、辛く、厳しい環境」だと思っていたという。しかし、実際は違った。

「2年ちょっと中で過ごしましたが、特に辛く厳しいことはありませんでした。令和の今から見ると昭和に逆戻りの生活で、たしかに不便や不自由はありましたが、雨風をしのげて、3食食べられて、風呂にも入れて、洗濯もしてもらえる。

女子特有の仲良しグループができて、運動時間は集まって談笑するので、学校と同じです」

特に印象に残っているのが、2018年9月に北海道で起きた大地震の時の経験だという。

「停電や断水が起きて、世間は大混乱でしたが、刑務所は頑丈なので倒壊もけがの心配もありません。停電も断水もなく、食事も問題なく提供されました。テレビは観られませんでしたが、何の苦労もないので、娑婆より快適でした。

正直、犯罪被害者が知ったら怒ると思います。人様に害悪をもたらし、本来は罰を受けているはずの人間が塀の中で笑っている。最低限度の生活を保証されて税金で生きているのは、おかしいと思います」

●「反省」は仮釈放のための「パフォーマンス」

Aさんは、刑務所での「反省」の実態についても率直に語る。

刑務所は、二度と戻りたくないと思わせるような場所であるべきだ」。ネット上にはそんな意見も散見されるが、Aさんによると、現実はそう単純ではないようだ。

「世論の意見はもっともだと思います。刑務所がぬるいから再犯して戻る、という考えはあっていると思います。ですが、劣悪な環境にすれば犯罪が減るかと言えば、多少の減少はあっても激減には至らないでしょう。懲りない人は戻ってくるし、自ら希望して戻る人もいるので、刑務所は世間の常識が通用する場所ではないのです」

刑務所や受刑者についての記事に対しては、よく「反省していない」「反省しろ」といったコメントが付く。

だが、今の日本の刑務所は、「反省」できる環境になっているのか。そもそも、「反省」とはなんだろうか。

この質問に対して、Aさんは「無理です。できませんし、しません」と言って切り捨てた。

「もちろん犯情にもよると思いますが、本気で自分の事件を振り返り、真摯に受け止めて後悔、反省し、再犯しないと誓って実行できる人は、100人中1〜3人という印象です。

受刑者にとっては、仮釈放をもらって一日も早く出所することが最重要事項なので、仮釈放獲得のために模範囚キャンペーンを実施します。

後悔や反省は、あくまでも仮釈放を獲得するために必要なパフォーマンスなのです。一方で、最初から満期で出所するつもりの人は『懲罰上等』のスタンスです。

出所がスタートではなくゴールと考えているから、出所後に些細なしくじりで再犯し、結果的に刑務所に出戻ってくるという構図が、再犯者率の高さを示していると思います。

これらの実態からも、世論が求める反省を刑務所で実現することは無理だと思います」

●まるで「全寮制の工場」のような生活

矯正教育についても、Aさんは課題を感じている。

薬物や窃盗事件の受刑者の中には、虐待やDVなどのトラウマを抱える人も少なくないが、一人ひとりに応じた教育は十分ではないという。

「クレプトマニアの受刑者も、刑務所では塀の中で隔離されているので、物理的に物を窃取できないだけで、再犯防止には結びつきません。殺人や強盗、傷害などの強行犯や詐欺などの知能犯に特化した教育はありません。

私も何も教育を受けることなく終わりました。平日は洋裁工場で働き、休日は部屋で一人で自由に過ごす。まるで全寮制の自動車工場の従業員のような生活でした。

満期が近くなってから初めて簡単な説明会に参加しましたが、私に必要な情報は何一つありませんでした」

●「快適か地獄か」に正解はない

塀の中で出会った受刑者の中には、出所するときに「出たくない」とごねる人や、刑務所に戻るために出所後すぐにあめ玉1個を万引きして3カ月で帰ってくる人が実在したという。

ネット上で「女子刑務所はホテルみたいで快適だ」といった見方が渦巻いていることについて、Aさんは否定も肯定もしない。

「仕事もせず、好き勝手に生きてきた人にとっては、刑務所は自由を奪われ、規則正しい生活を強いられるので、『地獄』と感じるでしょう。しかし、身寄りのない高齢者や生活に困窮していた人にとって、快適と感じることもあるかもしれません。

女子刑務所が快適なのか、地獄なのかの捉え方は、その人が何を重視して生きているかによって分かれると思います。快適か地獄かの正解はありません」