カリフォルニア大バークレー校、水泳コーチのテリー・マッキーバー氏【写真:Getty Images】

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ロンドン五輪でヘッドコーチを務めたマッキーバー氏

 米大学の水泳選手たちが、有名コーチの長年に渡るいじめ行為を主張した。米カリフォルニア州地元紙「オレンジカウンティ・レジスター」は、「カリフォルニア大バークレー校の水泳選手たちが、コーチのテリー・マッキーバーからいじめと言葉の暴力を長年受けてきたと主張」との見出しで記事を公開。米国の女性ヘッドコーチとしてロンドン五輪でも数多くのメダル獲得に貢献したマッキーバー氏について伝えている。

 記事で紹介されている選手の主張によると、カリフォルニア大で指導しているマッキーバー氏は、当時1年生だったダニエレ・カーターが患っていたてんかんについて、病が嘘であると非難。練習ではほぼ毎日、カーターを他の部員の前で怒鳴りつけていたという。

「怠慢だ」「価値がない」「時間の無駄」などと罵られていた当時のカーターの状態について、同紙は「食べることも、眠ることもできなくなった。授業にも集中できなかった。時にはストレスから疲れ果て、睡眠も足りず、授業中に居眠りした。ほぼ毎日パニック状態に陥った。ベッドから起き上がれない日もあった。カーターと彼女の両親によると、全てが発作に繋がったという」と伝えている。

 2019年秋のある晩、カーターはベットで自殺を考えたとされているが、直前で恐くなり、チームメートに助けを求めたという。記事では「南カリフォルニア・ニュースグループ(SCNG)の調査によると、カーターは2018年以降にマッキーバーのいじめと彼らが表現する原因によって自殺を考えた6人のスイマーの一人だという」と、カーターのほかにも自殺を考えたスイマーが存在すると報じている。

「毎年1〜3人をターゲットに虐待」と19人のスイマーが認める

 記事によると、NCAAで6度の優勝経験を持つシンディー・トランも、マッキーバー氏のいじめ疑惑が原因で、2014年に命を絶つ寸前まで追い詰められたことを語っているという。

 60歳のマッキーバー氏は、40年近くに渡り水泳界で活躍した先駆者として知られる。大学スポーツ界屈指の強豪を作り上げ、オリンピアンやNCAA王者も輩出した実績を持つ。記事でも「彼女は競泳界で最も成功した女性コーチとして知られている。マッキーバーは米国五輪チーム史上唯一の女性ヘッドコーチで、13個のメダルをロンドン五輪で獲得した」と経歴を紹介されている。

「オレンジカウンティ・レジスター」は、SCNGのインタビューでカリフォルニア大の19人の現役と元選手、6人の親、1人の元男子選手がマッキーバー氏の日常的ないじめや暴力、脅迫について証言したことを伝え、「負傷中や慢性疾患や摂食障害の最中でも練習や試合に出場するよう圧力をかけ、何人かの女子選手には医学的根拠があるにもかかわらず、コンディションについて嘘をついていると非難した」といじめの内容も記している。

 マッキーバー氏の言動については少なくとも2014年から運動部と大学職員に何度も報告されていたが、それでも改善がなかったとの主張も記事では紹介されており、さらに「19人のスイマーが認めたことによると、マッキーバーは毎年、1、2、3人のスイマーをターゲットにし、日常的に言葉と感情的に虐待した」とも記されている。

 SCNGはカリフォルニア大を通じ、マッキーバー氏にインタビューまたはコメントを求めたが、返答期限を過ぎてから3日後、マッキーバー氏は「このレポートについてコメントしない」と同大の広報を通じて返答したという。

(THE ANSWER編集部)