「つみたてNISA」を始めるならこの4点に注意。資産運用のプロが語る基本とおすすめ商品
2019年6月に公表された金融庁の報告書に「老後に向けて2000万円の貯蓄が必要だ」という主張が盛り込まれていたことから話題になった「老後2000万円問題」。
結婚や転職など、これからたくさんのライフイベントが待ち受けている僕たちにとっては、将来のお金についてますます不安がつのるこの頃…。
実はそういった人たちを対象に、2018年から「つみたてNISA」という資産運用に関するお得な制度が始まっています。
いくつか注意点もあるので、つみたてNISAを始める前に知っておいたほうがよさそうです。

【福田猛(ふくだ・たけし)】ファイナンシャルスタンダード株式会社代表取締役。同志社大学卒業後、2003年大和証券株式会社入社し、資産コンサルティングに従事。2012年にファイナンシャルスタンダード株式会社を設立。2015年には楽天証券IFAサミットにて独立系フィナンシャルアドバイザー総合1位を受賞。著書に『金融機関が教えてくれない本当に買うべき投資信託』(幻冬舎)、『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)がある
つみたてNISAってどんな制度? お得なポイントを解説
葛上:
そもそも、つみたてNISAってどんな制度なんですか?
福田さん:
まず「NISA(少額投資非課税制度)」というつみたてNISAのベースとなっている制度をものすごくカンタンに説明すると、一定金額の投資に限り、そこから得た利益に税金が一切かからなくなる優遇制度です。
つみたてNISAは、そのNISAの「積立投資」特化バージョン。つまり毎月決まった金額を掛け金とする長期の投資を、税優遇でサポートしてくれる制度なんです。
葛上:
なるほど。もう少しくわしい内容まで教えていただけますか?
福田さん:
つみたてNISAも普通の投資と同じく、運用する商品を選んで、その運用成績に応じて利益が得られます。そして、本来であれば投資で得た利益には、約20%の税金(※)がかかります。
※金融商品の売買で得られた利益にかかる「譲渡益課税」、企業から受け取る「配当金」にかかる「配当課税」のどちらも、税率は20.315%。
福田さん:
しかしつみたてNISAなら、税優遇が受けられる上限金額である年間40万円の枠内で投資すると、得られた利益には税金がかからないんです。
葛上:
おお、2割の税金が引かれないのはだいぶ大きいですね!
初心者からすると、積立投資の効果がいまいち実感できないんですが、仮に25歳から最大限をつみたてNISAで投資した場合、どれくらい儲かるんでしょう?
福田さん:
あくまでシミュレーションではありますが、(年間上限である)40万円分を20年積み立てて、年5%の利回り(投資額に対する利益の割合のこと。運用成績によって変動する)で運用できたとしましょう。
すると、最終的に積み立て総額の800万円が約1.7倍の1350万円ほどになります。普通の投資だと、運用で得た利益550万円の約20%=約110万円が税金として徴収されてしまいますが、それもありません。
メリットを確認!税軽減シミュレーション | 三井住友銀行
https://www.smbc.co.jp/kojin/special/ideco-simulation/tax/
つみたてNISAのシミュレーションはこちらでもできます。
葛上:
それはかなりよさそうですね…!
でも「初心者はこれに気をつけろ!」みたいな“落とし穴”ってないんですか? うまい話には裏があるっていうじゃないですか。
福田さん:
かなりお得な制度なので利用して損はないと思いますが、始めるなら注意したほうがよい点がいくつかあるので解説します。
つみたてNISAの注意点? 短期間でやめないほうがいい
福田さん:
1つ目は、短期間でやめてしまうことです。利益が出はじめても、損失が出はじめても、やめる人が多い。だいたい、個人で積立投資をやっていると2年くらいでやめる人が多いと言われてますね。
葛上:
利益が出てそれを確定させるとか、損が大きくなる前にやめるのであれば、一見合理的に思えますが...?
福田さん:
一括で金融商品を買ってすぐに売り抜ける、投機目的ならそれが合理的です。
しかし積立投資は、数十年単位で続けることでリスクを減らし大きな利益が見込めるもの。それなのに途中でやめてしまったら、“うまみ”はほとんどありません。

葛上:
んー…なんとなくわかる気もするんですが、利益が出そうなタイミングで始めて、ある程度のところで利益を確定させて、って繰り返したほうがよくないですか?
福田さん:
もちろんできるならそれがいいでしょう。でもプロでさえ、相場に入る最適なタイミングを読むのは難しいと言われてるんです。
それなのに素人がもっとうまくできるわけないですよね?
葛上:
それは…そうかもしれません。
福田さん:
野球だったら、大谷翔平さんにバッティングで勝てると思わないですよね。投資も同じはずなのに、少し知識を身につけるとすぐにプロの土俵に立てると思ってしまいがち。
相場を読んで合理的に行動しようとして、結果的には何も得しない、というのは積立投資の初心者がよくハマってしまう落とし穴のひとつですね。

長期の積立投資はなぜ利益を出しやすい?
葛上:
ただ、積立投資を長期で続けると利益を出しやすいという理屈はあるんでしょうか?
福田さん:
はい。端的に言うと、長期的な積立投資は短期の価格変動を味方につけられるので、利益を出す難易度が格段に下がるのが積立投資のメリットです。
葛上:
もう少し詳しくお願いします…!
福田さん:
では、積立投資の基礎を解説しましょう。
まず、投資の運用成績は「価格×量」という公式で決まります。一括で買ってそれを保持しつづけるのであれば、購入時よりも価格が上がらないと利益は出ません。

葛上:
はい。投資はそういうイメージです。
福田さん:
しかし、積立投資は違います。
つみたてNISAの場合は、毎月“決まった金額分”の金融商品を継続して買っていく「ドルコスト平均法」に則ることになり、商品の価格が下がるということは、同じ金額で買える“量”(投資信託の場合は「口数」)が増えることになります。投資額は毎月同じですから、買える“量”が増えることになります。
これが大事なんです!

葛上:
どういうことですか?
福田さん:
“量”は毎月足していくだけなので減りません。価格が下がっていくと“量”はそのうち「大量」になります。一方で“価格”はずっとは下がりません。
投資信託は専門家が間に入って数百・数千銘柄に投資対象を分散しているため、「バブル崩壊」のようなことが起きてもどこかで上昇に転じます。
つまり長期で積み立てを続けていると、“量”が増えている状態で“価格”も上がるタイミングがくるということ。そうなれば“価格”と“量”がプラス同士の掛け算になり大きな利益が見込めるんですよ!

葛上:
なるほど! 積み上げてきた“量”が一気にプラスに働くんですね。
福田さん:
はい。この仕組みのおかげで、初回の購入時から最終的に“価格”が半値になってしまっても利益が出ることは十分に考えられますね。
葛上:
ええっ!? 本当ですか?
福田さん:
たとえば架空の投資信託で、毎月1万円を10年間積み立てたとしましょう。すると始めた当初は1口1万円だったのに、7年後には2000円まで下がり、残りの3年で5000円まで戻りました。
これを集計すると、投資した総額120万円(1万円×10年)が最終的には139万円となり、19万円の利益が出ます。

葛上:
おお、たしかに大きくそれより前に下落したタイミングがあると、最終的に半値まで下がっても利益が出てますね。でも、購入時から“価格”が上がりつづけて、それから大きく下がってしまう山なりのグラフになってしまったら損をするということでしょうか?
福田さん:
そういうパターンになってしまったら、損する恐れがあります。でも数十年単位で続けていれば、何度か大きな山と谷がくるはず。
最終的にどのタイミングで売るかを見定める必要はありますが、長期で投資するなら利益を出すのは決して難しくありませんよ。
つみたてNISAの注意点? 積立金額を低くしすぎると投資のうまみが得られない
福田さん:
日本人ってよくも悪くも安定志向で、積立投資においてもその悪い癖が出やすいんですよね。
葛上:
悪い癖ですか?
福田さん:
たとえば投資に疎い人がつみたてNISAを始めると、損をするリスクを恐れて最低額である100円を毎月積み立てようとするケースがあります。
仮に20年間積み立て、安定志向の運用で利回り(投資額に対する利益の割合のこと。運用成績によって変動する)が3%だったとしましょう。
すると20年後に得られる利益は、なんとたったの約9000円です(笑)。
20年間の投資総額:2万4000円(100円×12ヶ月×20年)
20年間の最終総額:3万2830円
20年間の運用益:8830円
葛上:
それは…あまりやる意味がないですね(笑)。
福田さん:
まあこれは極端な例ですが、下手にリスクを避けようとすることで投資のうまみが消えてしまうという点は、覚えておくべきでしょう。
つみたてNISAの注意点? 「NISA」と「つみたてNISA」の選択は慎重に
福田さん:
冒頭で「NISA」と「つみたてNISA」があると紹介しましたよね。実はこれらは併用できず、どちらかしか利用できないんです。この選択を誤るともったいないですね。
葛上:
それぞれのざっくりとした特徴はわかるんですが、どうやって自分に合ったものを選ぶべきでしょう?
福田さん:
判断基準は3つあります。まず1つは投資に回せる金額。NISAは年間120万円が限度額、つみたてNISAは年間40万円が限度額として決まっています。
なので年間の投資額を40万円以下に抑えるなら、つみたてNISAでもデメリットはありませんが、それ以上を投資したいとなるとNISAを選んだほうがいいかもしれません。
葛上:
NISAのほうが投資に積極的な人に向いてそうですね。2つ目の判断基準はなんでしょう?
福田さん:
それぞれ非課税の期間が違うので、どれくらいのスパンで投資したいか、が判断基準になります。
まずNISAは年間120万円まで投資できて、それから5年間で生まれた利益が非課税になります。

出典 http://www.fsa.go.jp
(画像は金融庁「NISA特設ウェブサイト」から引用)
福田さん:
一方で、つみたてNISAは毎年の投資枠が年間40万円に減る代わり、非課税の期間が最長20年に延長されます。
なので数年の期間で投資をしたいのであればNISAを、数十年の期間でコツコツ投資をしたいならつみたてNISAを選ぶべきですね。

出典 http://www.fsa.go.jp
(画像は金融庁「NISA特設ウェブサイト」から引用)
福田さん:
最後に、NISAとつみたてNISAは扱っている金融商品(株や投資信託など)も違います。
まずNISAは株や投資信託(専門家に資金を預けて、代わりに運用してもらう金融商品)など、比較的いろんな種類の金融商品が対象です。
一方でつみたてNISAは、初心者向けかつ長期の投資に向いてる投資信託のみを金融庁が厳選しています。なのでバリエーションは少ないものの、シンプルでわかりやすい。
葛上:
つまり経験者や幅広い金融商品から運用するものを選びたい人はNISA、初心者はつみたてNISAを選ぶとよさそうですね。
福田さん:
そうですね。特に投資の未経験者は、つみたてNISAのほうがおすすめです。
つみたてNISAの注意点? クレジットカード払いにしてお得に投資すべき
福田さん:
最近はネット証券を中心に、クレジットカード払いで積立投資ができるようになってるんですよ。これを活かさない手はありません。
葛上:
それは便利ですね。
福田さん:
便利なのもそうですが、投資をしてクレジットカードのポイントが貯まるんですよ!
お得じゃないですか!?
葛上:
おお、それはいいですね!
福田さん:
ネット証券大手の楽天証券なら、月に5万円までカード決済できます。(※)
つみたてNISAの限度額である年間40万円を楽天カード払いで投資していれば、ポイント還元率は1%なので、実質4000円が何もせず手に入ることになります。
これを利用しないのはもったいないですよ。
※2019年7月現在、クレジットカードによりポイントが発生する代表的な証券会社は楽天証券とマネックス証券。マネックス証券はマネックスセゾンカードを持っているだけで、購入した投資信託の販売手数料の4.5%がポイント還元される。
つみたてNISAでおすすめの金融機関・金融商品は?
葛上:
つみたてNISAをやるにあたって、どの金融機関に口座をつくるか選ばないといけないんですよね。それぞれけっこう差があるものなんでしょうか?
福田さん:
基本的な違いは商品のラインナップだけです。金融機関をざっくり分けると2タイプあって、その1つは対面型銀行・証券会社です。これは扱っている金融商品が少ない。
もう1つはネット証券で、こちらのほうが金融商品が豊富です。金融機関による手数料の差はないので、商品ラインナップに優れているネット証券を選ぶのが基本です。
葛上:
ではネット証券のなかでも、特におすすめはありますか?
福田さん:
楽天証券とSBI証券は扱っている金融商品が多くて人気です。この2つはあまり差がないので、馴染みのあるほうを選ぶといいでしょう。
先ほど紹介したクレジットカードによるポイント還元のメリットも狙うなら、楽天証券がおすすめですね。
金融商品のおすすめは? どうやって選べばいい?
葛上:
金融機関を選んだら、買う金融商品も選ばなきゃいけないんですよね。おすすめはありますか?
福田さん:
初心者は投資信託のうち「国際株式のインデックスファンド」を選ぶのが鉄則です。
葛上:
…もう少し詳しく教えていただけますか?
福田さん:
まず「インデックスファンド」というのは、株式相場の状況を表す「株価指数」に価格を連動させる投資信託なんですよ。日本が対象なら指数は主に「東証株価指数(TOPIX)」と同じように値動きするようになっています。
これはあらかじめその株価指数を構成している代表企業の株を均等に買えばいいだけなので、購入を自動化できます。それにより運用コストを抑えられるので、手数料が低いんです。
葛上:
なるほど。別のタイプもあるんですか?
福田さん:
別の投資信託として「アクティブファンド」があります。これはプロが投資対象を選ぶことで市場の平均以上の利益を目指す投資信託。
ただしプロが介入するので人的コストがかかり、インデックスファンドと比べて手数料は高いです。
葛上:
具体的にはどれくらい手数料が変わってくるんでしょう。
福田さん:
インデックスファンドは手数料が無料のものも多く、高くても投資金額の0.5%ぐらいで収まります。
一方で、アクティブファンドの手数料は1.5%ほどになります。つまりだいたい3倍以上は違います。

福田さん:
コストを払ってまで成果を求めるならアクティブファンドもいいんですけど、初心者がそこまでやる必要はありません。
だからインデックスファンドを選ぶのが鉄則。それでも十分に成果は出ます。
葛上:
なるほど。先ほど「国際株式のインデックスファンドがいい」とおっしゃっていましたが、それはなぜですか?
福田さん:
国際株式というのは、投資信託内の投資対象が世界中の株式に分散しているものを指します。一方で「国内株式」は投資対象が国内の株式に限定されている投資信託のこと。
葛上:
投資対象が違うと、何が変わるんですか?
福田さん:
ざっくりいうと、投資対象の幅が広いほうが地域間の偏りを避けて、世界経済全体の成長を享受できます。
国際株式のインデックスファンドは世界の経済状況に合わせて運用が自動化されているためコストが安く、損するリスクも低い投資信託なんです。
葛上:
おお、そう聞くとかなりよさそうですね!
福田さん:
この選び方さえ間違えなければ、つみたてNISAを利用するのはかなりおすすめです。
もう働くほど給料がガンガン増える時代じゃないので、若いうちからお金にも“働いてもらう”意識を持ったほうがいい。
自分が働いて稼いだお金の余剰を、つみたてNISAなどでほぼ自動で運用し、必要なときに備える。これこそが「人生100年時代」の鉄則ですよ。
かなり初心者向けでリスクが少ないことがわかった、つみたてNISA。これを機にぜひ検討してみてください。
実はつみたてNISAと似た制度である「iDeCo(イデコ)」についても、福田さんに解説していただいています。
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〈取材・文・撮影=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉
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