リオ五輪代表が、予期せぬ事態に襲われた。久保裕也の合流が危ぶまれているのだ。所属するヤングボーイズのFWにケガ人が続出しているため、クラブ側が久保の五輪出場を拒否してきたのである。

 ヨーロッパのクラブでプレーする久保と南野拓実の招集に、サッカー協会は細心の注意を払ってきた。五輪予選以外は基本的に招集せず、招集してもクラブのリクエストに沿うように対応してきた。すべては「ここぞ」という局面での協力を取り付けるためだっただけに、サッカー協会側が困惑するのは当然だろう。

 グループリーグで対戦するスウェーデンも、同じような事態に見舞われている。所属クラブのFWがケガをしたために、一度はメンバー入りした選手がリオ行きを断念することになった。

 技術委員会の霜田正浩ナショナルチームダイレクター(ND)が、ブラジルから急きょ渡欧した。霜田NDはヤングボーイズの姿勢を軟化させ、現地時間7月30日のリーグ戦後に話し合いを持つ、という条件を引き出した。

 いずれにしても、気になるのはコンディションだ。

 ヤングボーイズが久保の出場を認めたとしても、チームへの合流はギリギリになる。時差調整と暑熱対策に、不安を抱えることとなる。

 久保を欠いて戦うことになった場合も、できるだけ早く新たな選手を合流させなければならない。たとえば、バックアップメンバーに選ばれている鈴木武蔵が7月30日のJ1リーグに出場し、翌31日に日本を発つと、現地到着は8月1日だ。時差解消は1日1時間と言われているので、グループリーグの3試合は時差が完全に抜けきらないことになる。時差解消をスピードアップさせる手立てはあるとしても、新たにチームに加わる選手のコンディションは気になるところだ。暑熱対策もできていない。

 一番冷静なのは、手倉森誠監督かもしれない。

 48歳の指揮官は、「うまくいかないことを、あらかじめ予測しておく」ことを常とする。久保が招集できないことを想定していたわけではないだろうが、第一報を受け取ってからプランBを練っているはずだ。

 そもそも、逆境をバネにするタイプである。そして、どんな種類の困難でも、プラスに転じるマネジメントを心がけている。

 今回の事態を一番冷静に受け止め、一番闘志を燃やしているのは、手倉森監督に違いない。