「ゲーム好き」が武器になる!法定雇用率2.7%時代、障害者賃金平均「月額2万4000円」の常識を打ち破る職場の挑戦

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障害者の全国平均工賃月額2万4000円を12万円に

2026年7月1日、民間企業による障害者の法定雇用率が、これまでの2.5%から2.7%に引き上げられます。現在も、法定雇用率未達成の企業は6万社以上。さらに数値だけを満たすグレーな「障害者雇用代行ビジネス」が国会でも問題視されています。しかも、障害福祉サービスにおいて働く障害者の全国平均工賃(就労継続支援B型の報酬)は、わずか月額2万4000円にとどまっています。

今こそ強く求められているのは、「障害者“で”稼ぐ」のではなく、「障害者“と”稼ぐ」障害者雇用の新しいビジネスモデル。そんななか「障害者雇用の当たり前」を打ち破る挑戦を続けているのが、ePARA(イーパラ)という会社の代表を務める加藤大貴さん。全盲や筋ジストロフィーによる障害のあるePARAの社員の賃金は月額およそ12万円だといいます。

障害のある方々もやりがいを持って仕事をし、その仕事に見合った対価を得るにはどうすればいいのか? 加藤さんがその突破口として見出したのは、なんとeスポーツーーゲームでした。

なぜゲームが就労の入口に? 著書『超福祉 障害者と稼ぐ eスポーツ×福祉で未来を変える』の刊行を記念して、その理由を語っていただきました。

加藤大貴(かとう・だいき)

株式会社ePARA代表。ロースクール卒業後、東京地裁で事務官・書記官として8年間働いた経験から、福祉法人職員として障害者や高齢者を支援することを決意。ここでさらに就労課題の大きさを痛感し、2019年、 eスポーツを活用した障害者就労支援イベント「ePARA」を開催。翌年に法人化し、現在は20 名の障害者を雇用。これまでにのべ1000人以上の障害者に対して就労支援を行う。「超越ハピネス」「NHKスペシャル」「バリバラ」「ハートネットTV」(NHK)、「Seeder〜笑顔のタネをまく人〜」(TBS)などメディア出演多数。各地で講演も行う。経済産業省資源エネルギー庁の補助金事業として採択され、日本とサウジアラビア間で障害者活躍支援を実施中。著書に『超福祉 障害者と稼ぐ eスポーツ×福祉で未来を変える』。

車いすのイベントプロデューサーや全盲のナレーターも

ePARAのミッションは、働く能力があり、かつ働きたいと願う障害者が就労しやすい環境をきちんと整えることです。さらに、彼らが自身の価値に見合った正当な報酬を受け取れるような仕組みづくりをすること。簡単に言うと、ePARAは、障害者の就労支援をする会社です。

「障害者が、自身の価値に見合った正当な報酬を受け取れる仕事」というと、どういうものをあなたはイメージするでしょうか? パッとイメージできない人が多いかもしれないですね。

では答えましょう。たとえばうちの会社には、プロの声優・ナレーターとしてNetflixの音声ガイドやゲームアプリのキャラクターボイスを務める全盲のメンバーがいます。あるいは、進行性の難病と闘いながらゲームイベントのプロデューサーを務める車いすの社員もいます。彼は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーという進行性の難病を抱えていますが、地元・岩手県からリモート勤務し、eスポーツイベントのプロデューサーとして活躍しているのです。他の障害者の就労をサポートする業務に取り組む全盲の社員も。ーーもしかすると、いわゆる「障害者らしい」仕事ではないかもしれません。

そう、私がやっているのはけっして慈善事業ではないのです。障害のある方々をただ「支援する対象」とするのではなく、それぞれの得意なことを活かして社会に価値を提供する「ビジネスパートナー」として迎える。そして、彼らがやりがいをもって「稼ぐ」ことができるようなフィールドを拡大していく。それが、ePARAの目指していることです。

うちの会社が、障害のある方々の「社会に提供できる価値」を発掘するための武器にしているのは、何を隠そう「eスポーツ」。eスポーツとは何か、一応説明すると、コンピュータやゲーム機を使った対戦をスポーツとして捉えるアクティビティです。国体(国民スポーツ大会)やアジア競技大会にも採用されており、ワールドカップも毎年開催されています。

ePARAの社員の多くは、eスポーツプレイヤー、つまり「ゲーム好き」なのです。

「ゲーム好き」を入口に、強みを発掘する

なぜ、eスポーツに目をつけたのか。それは、私自身がかなりのゲーム好きだったから、ということもあるけれど、eスポーツが「稼げるスポーツ」だから

eスポーツの世界を見渡すと、賞金総額が数十億円規模に上る巨大な大会も珍しくありません。かなりスケールダウンするものの、国内でも賞金総額1億円を超える大会が開催されています。腕を磨いてプロゲーマーになれば、これらの大会賞金、チーム給与、スポンサー収入が得られます。過去には日本でも、1つの大会で優勝して1億円以上の賞金を手にした選手がいるし、2019年に行われた「フォートナイト」の世界大会では、16歳の少年が優勝して300万ドル(2026年5月現在の為替換算では約4億7000万円)を獲得して大きな話題となりました。

そして、稼げるのは一部のトップ選手に限りません。これだけ巨大な市場になれば、その周辺にはゲーム実況配信、イベントの企画・運営、動画編集、ゲームトレーナーなど、多様なビジネスが生まれるもの。この「広がり」の中にこそ、障害者が強みを生かして稼ぐための無限のチャンスが眠っているのです。

障害者も対等にビジネスの最前線で戦える

また、「eスポーツができる」ということ自体、仕事をするうえで欠かせない数々のスキルを持っていることを意味します

デジタルデバイスの操作能力。ルールを理解し戦略を立てる知的能力。ネット環境への適応性。他者とのコミュニケーション能力。ーーこれらはeスポーツを切り口に手にすることができるスキル。これらのスキルを生かせば、障害者も対等にビジネスの最前線で戦えるのです。

そこで現在ePARAでは、2つの柱で収益を上げています。

1つ目は、バリアフリーeスポーツ事業。行政や民間企業からの要望と予算に合わせ、バリアフリーeスポーツ大会の企画・運営を柔軟に行います。

2つ目は、ウェブ関連・コンテンツ制作業務 。ウェブやゲームのアクセシビリティ改修や、記事執筆・動画制作などのコンテンツ制作を受託しています。コンテンツ制作のテーマは、健康、食、ゲームなど多岐にわたり、いわゆる「障害者向け」ではない一般領域の仕事も多くあるのです。

では具体的にはどんな仕事内容があるのか。ひとりの全盲の社員を例に、後編「声優・ナレーター・ITエンジニアと「五足のわらじ」。全盲の視覚障害者が初めて出会った「対等な世界」」で詳しくお伝えしていきます。

【後編】声優・ナレーター・ITエンジニアと「五足のわらじ」。全盲の視覚障害者が初めて出合った「対等な世界」