現在の田端さん。困窮した生活の様子を話す姿は、努めて明るく振る舞っているように感じた

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「女手一つで育ててくれた親に、恩返しをするのは当たり前」--そんな美談として語られがちな“親孝行”が、現代のホワイトカラーや労働者を破綻させる「新型貧乏」の引き金になっている。美しき家族愛の裏で静かに進行する、「親孝行地獄」という名の搾取のリアルに迫る。
◆親への思いが生活破綻の要因に

同居母に搾り取られる生活費と週1万円の小遣い。赤字は体を売って補塡家計も心も限界。でも結局また手を差し伸べちゃうんです――。

都内近郊の公営住宅。段ボール箱が積まれた6畳一間で、シングルマザーの田端恵美さん(仮名・45歳)は深いため息をつく。多くが美談として語られる「親孝行」だが、親への思いが生活破綻の要因となることもあるのだ。介護ヘルパーとスーパーでの品出しのアルバイトで生計を立てる田端さんの年収は13歳になる娘の児童手当を含めて約260万円、手取りで毎月17万円ほどだ。

家賃は2万円台と激安だが、常に赤字と語る彼女の家計を圧迫する最大の要因は、同居する母親(70代)の存在だ。いわゆる“年金暮らし”だが、母親が家にカネを入れることはない。

「家賃や光熱費などの固定費を含む生活費はすべて私の負担。普段は食事も作りますが、よく仕事で家を空けるので、配食サービスや飲み物の定期便で月3万5000円。最近は、母の持病のため、医療費が3万円に上る月もあります」

母親は一銭も払わないどころか、毎週1万円の小遣いを田端さんに無心する始末。

◆暴食とギャンブルの挙げ句孫のお年玉に手をつける

「デパ地下の総菜を買い込んでは、『物価高でパンが高い』とぼやいている。以前、母のマイナンバーカードを探すため財布を確認したら、パチンコ店のポイントカードが2枚出てきて言葉を失いました」

一家共倒れの危機を感じた田端さんは先月、母を説得し、家計の一括管理に乗り出した。

「預かった年金口座の残高はたった120円。つらすぎて娘に話すと、娘がもらったお年玉から1万円を借金していたことが判明したんです。財布から千円札が消えたことも一度や二度ではないようで、我が家では現金は“ミニ金庫”に入れて管理しています」

◆「毒親ぶりはさらに強まった」

近年、母親の認知機能が低下し、「毒親ぶりはさらに強まった」と田端さん。

「常にイライラしていて『誰のおかげで子育てできると思ってるんだ』と恩着せがましく言うんです。娘には『宿題は?』『帰りが遅い』など過干渉になり、辟易しています」

なぜこうなってしまったのか。その原点は30年前にさかのぼる。中学3年生で両親の離婚を経験した田端さんは、家計と小遣いのため、年齢を偽り、スナックで働き始めた。

「最低賃金650円の時代、時給1500円のスナックは破格のバイト。そこでお金を稼ぐ味をしめてしまいました」

高校卒業後にはキャバクラに“就職”。一時は高級ソープ店に在籍し、100万円の月収を手にした時期もある。

「“大黒柱”を前に母は何も言えず、性の仕事もなかば公認。私も『女手一つで育ててくれた母に親孝行するのは当たり前』と思い、誕生日には20万円ほどの大金を渡していました。今思うと金銭感覚がバグってましたね(苦笑)」

◆現在の仕事にシフトすると収入は激減

転機は12年前。未婚の母となり、「娘のため安定した職に就きたい」と現在の仕事にシフト。収入は激減した。

「子供の入園前の大変な時期、頼れるのは母だけでした。私も世話してもらう負い目から財布の紐が緩みがちになり、母の経済的依存は、さらにエスカレートしていきました」

今も田端さんは3万〜5万円の赤字を補うべく、月数回、性的サービス店に出勤している。

「年々、教育費がかさむ中、背に腹は代えられない。娘も学校指定の裁縫セットなど、“皆と同じもの”が買えないと不憫ですから……」