by Christchurch City Libraries

小説やマンガ、映画などの作品が海外展開する場合、「翻訳されたタイトルが原題と大きく変わっている」というケースがよくあります。フィクションを翻訳することの難しさについて、アメリカのSF作家であるジョン・スコルジー氏がタイトルを例に挙げて語っています。

How Translation Works, Book Title Edition | Whatever

https://whatever.scalzi.com/2025/02/03/how-translation-works-book-title-edition/



フィクション作品の翻訳について、スコルジー氏は自身が2025年3月末に出版予定のSF小説「When the Moon Hits Your Eye」を例に挙げています。「When the Moon Hits Your Eye」は、直訳するなら「月が君の目に当たるとき」、詩的なニュアンスで作品のタイトルっぽく翻訳するなら「月が瞳に映るとき」というような意味になります。



ただし、「When the Moon Hits Your Eye」というタイトルは、ただその言葉の意味だけを表しているフレーズではありません。20世紀末に活躍したアメリカの歌手、コメディアンであるディーン・マーティンの大ヒット曲「That's Amore」には、「When the Moon Hits Your Eye, Like a big pizza pie, that's amore(月が君の目に当たるとき、大きなピザのように、それが恋だ)」というフレーズがあります。英語圏の人にとって、「When the Moon Hits Your Eye」というタイトルはなじみ深い陽気な歌のフレーズだと感じられます。

そのため、「When the Moon Hits Your Eye」のハンガリー語版を作成する際に、ハンガリー語で「月が君の目を打つとき」という意味のタイトルにするのではなく、「Csak a hold az égen(空には月だけ)」というタイトルに変更されました。「Csak a hold az égen」は、有名なハンガリーのロックバンドであるRepublicの最大のヒット曲「Szállj el, kismadár」冒頭の歌詞であり、英語圏の人が「When the Moon Hits Your Eye」というフレーズを聞いたときと同じような効果をハンガリーの読者が感じられるように改題されています。



スコルジー氏は「翻訳者なら誰でも言うように、フィクション作品を翻訳するということは、ある言語から別の言語に単語を一対一で書き写すということではありません。フィクション作品の翻訳で重要なのは、雰囲気を捉えることです。つまり、単なる訳ではうまくいかない場合に、作品の調子と意図が言葉で伝わるようにすることです。ある言語でよく使われるフレーズが別の言語には存在しない、ある国の文化的な言及が他の国ではまったく意味を持たない、などがしばしば起こります。これは、コンピューターによる翻訳が平凡なビジネスメールには適していても、小説ではまったく役に立たない理由です」とフィクションの翻訳の難しさについて語りました。