「“にんにく6倍ドン引きペペロンチーノ大盛り”には濃さが判別できない寸前までガーリックを投入した」 ドン・キホーテ「情熱価格」の商品名が過剰に“長い”ワケ から続く

 大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」のPB「情熱価格」が、“商品名が長すぎる”と話題になっている。公式サイトで「ふざけた商品名ですが、まじめにつくっています」と語るドン・キホーテだが、その裏には一体どんな戦略が秘められているのだろうか。

【画像】『にんにく入れすぎ 激辛ペペロンチーノ 大盛り』がイチオシの中武さん

 ドン・キホーテのPBサポート部、PBマーケティングチームの責任者である中武正樹氏にインタビュー。後編となる今回は、ユニークな商品名が生み出される過程と、ダメ出しを積極的に受け付けるために同社が設置したサイト「ダメ出しの殿堂」について語っていただいた。(全2回の2回目/前編 を読む)


 

ドン・キホーテとして譲れない部分

――ドン・キホーテ社内で“ニュース”と呼称されている長い商品名は、どのようにして考案されているのでしょうか。

中武 まずはニュース起案会議という会議を開きます。ここではその商品の開発担当者が、“この商品はこういうところが他の類似品と違っていて、こんなメリットがあります”というのをプレゼンして、その商品にどういうニュースが書けるかを挙げていきます。そしていくつかに絞った案を最終決定するために、後日、ニュース決定会議を行うのですが、このとき重要になってくるポイントは、弊社らしい言葉遣いや表現ができているか、という部分です。

 ニュースが決定すると、今度はデザイン部が参加して、デザインをどうするかを検討していくのですが、デザイン案に関しては素人の開発部が忌憚のない意見をする場面も少なくないです(笑)。“美しすぎても弊社らしい遊び心がない”、“これだと伝わらなくない?”など、ドン・キホーテとして譲れない部分ははっきりと意見を出し、時間をかけて検討しています。

――パッケージで遊び心を追求していることも、前編でお伺いした買い物にアミューズメント性を持たせるということの一環なのでしょうか。

中武 そうですね。弊社はCV+D+Aという考え方を持っていて、CVはコンビニエンス、Dはディスカウント、Aはアミューズメントを意味しています。ですので、買い物のアミューズメント性は大切にしていますね。スマホひとつあれば買い物ができてしまう時代だからこそ、わざわざ来ていただいたお客様にはワクワクドキドキしてほしいという気持ちは根底に持っています。

「しいたけの大逆襲」というよくわからないキャッチフレーズ

 CV+D+AのAの部分に関して例を出すと、『しいたけスナック 125g入』のパッケージには、「しいたけの大逆襲」というよくわからないキャッチフレーズがあります(笑)。このように、ニュアンスはなんとなくわかるけど意味はよくわからない、みたいなフレーズでも、あえてパッケージに盛り込むことで面白さを演出していますね。

 またCV+D+AのDの部分、つまり価格に対しても妥協はしていません。これは他社様と比較して1円でも安くするということではなく、お客様がその機能、味や量に対して、ご納得していただけるギリギリの価格設定をするということです。

――ちなみに卸しで仕入れる商品と「情熱価格」で独自に開発された商品では、どちらの利益率が高いのでしょうか。

中武 それは一般的にも高いとされているほうです……(笑)。ですので、今後はファンの方に長く愛していただけるようなクオリティーの高い商品を数多く作り、それがビジネス面でも確かな存在になっていければと思っております。

毎月3000件のダメ出しを受ける

――では同ブランドの商品開発において、重要な役割を担っているというサイト「ダメ出しの殿堂」についてお教えください。

中武 「ダメ出しの殿堂」は、名前の通りダメ出しを募集するための特設サイトです。ブランドリニューアルの際にお客様と一緒に作り上げるブランドにすることを約束したので、コールセンターやお問合せ窓口とは別に、「情熱価格」の商品に対する意見だけを寄せられる場所として作りました。

 いい商品を作ろうとしたとき、お褒めの言葉ばかりでは芯を食った商品開発はできないと思ったんです。なので、あえて“文句中心の感想をお願いします!”とこちら側が窓口を用意すれば、お客様も遠慮なく言ってくださる。「ダメ出しの殿堂」は、お客様の率直なニーズをいただくために用意させていただいたサイトということですね。

――ダメ出しはどれくらい寄せられているのでしょうか。

中武 ありがたいことに毎月3000件以上のお声をいただいています。ダメ出しと言うとネガティブなイメージがありますが、ひとつの会社のブランドや商品になんの見返りもないのに意見を寄せてくれるお客様は、かなり弊社のことを好意的に思ってくれている方々だと考えています。ですから、そうしたファンの方が「こうしてほしい」と言うのであれば、それは形にしないといけないはずなんです。

ダメ出しでリニューアルされた『もっちリラックス枕』

――そんな愛のあるダメ出しでリニューアルされた商品は?

中武 現在までに10商品ほどリニューアルしております。例えば『もっちリラックス枕』です。こちらは「見た目が普通すぎる」「柔らかすぎる」などのお声をいただいたことから、形と色を改良しました。さらに言うとこの枕は、改良の過程でTwitterのアンケート機能を利用して、お客様に色と形を最終決定していただいた商品になります。

 ほかには、冷凍の大盛りパスタ系の商品も「ダメ出しの殿堂」で意見をもらってリニューアルした商品です。こちらは「これじゃ足りない」「大盛りって書いてあるけど他社の大盛りもこれくらい入っている」という意見をいただいたので、ドンと量を増やす運びとなりました。

――リニューアル後の商品は、売り上げもアップしたのでしょうか。

中武 どれも売り上げは好調です。ですが、仮に想定していた売り上げよりも不調な場合、お客様のニーズの取り違えがあったと考え、すぐに改善できる点を探しますし、それをまた「ダメ出しの殿堂」を介してご指摘いただければ、私達はリニューアルを試みます。それを繰り返していけば、いずれお客様が求めている商品が完成するわけです。そういう意味では、現状の売り上げは通過点と考えています。

――ちなみに昨今は世界的に原料の高騰が問題となっており、競合他社で値上げに踏み切っているチェーン店もあるようですが、ドンキが値上げに踏み切る可能性があるのかどうか、ファンも気になっていると思います。

中武 なかなかセンシティブな話ですね……(笑)。実は、既に原料の高騰で発売を断念した商品もあります。原料、物価、為替などが一律に値上がりしているので、企業努力だけではどうにもならず、値上げをせざるを得ない状況というのも、今後はあるかもしれません。しかしそのような場合も、商品を変えずに、価格だけ変えるようなことがないように、お客様にお買い求め頂ける価格に見合った、驚きのニュースある商品をお届けできるようにしたいと考えております。

「情熱価格」の商品に、今後もご期待いただきたい

――最後に「情熱価格」の今後の戦略について教えてください。

中武 やはり「ダメ出しの殿堂」ありきのブランドなので、こちらのサイトの使いやすさや面白さを随時アップデートしていきたいと考えています。当初はリニューアルのタイミングに合わせて短期間で作った、ダメ出しを頂く機能だけに特化したサイトでしたので、少々見にくかったり、使いにくかったりする部分がありました。

 それでも月3000件のダメ出しを頂けていることは有り難い限りです。より多くのお客様に楽しみながらダメ出しをして頂けるよう、サイトの改善を進めています。実は4月1日に一度目のアップデートをしているんです。そうやってこだわって、生み出している「情熱価格」の商品に、今後もご期待いただきたいです。

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 長すぎる商品名の裏側には、ドンキファンを第一に考えた画期的な戦略が存在した。「情熱価格」の商品にダメ出しをしたい方は、ドシドシ意見を出してみてほしい。

「ダメ出しの殿堂」 https://jonetz.com

(文=あかいあおい〈A4studio〉、撮影=平松市聖/文藝春秋)

(A4studio)