ボルトの気さくな性格は丁寧な取材対応にも表れていた。ジャマイカ人記者たちも「だから彼はみんなに愛される」と語る

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まさか“人類最速の男”にこんな結末が待っていようとは――。

今大会後の現役引退を表明していたウサイン・ボルトジャマイカ・30歳)。個人種目で唯一エントリーしていた100mで3位に終わると、4×100mリレー決勝では左太もも裏を痛めてまさかの途中棄権。

2008年北京五輪で100m、200mを世界記録で制して以降、大舞台では無敵を誇ってきたが、華々しい競技人生は最後に暗転した。予期せぬ最終章となったが、その栄光が色褪(あ)せることはない。

ボルトを長年取材する母国ジャマイカの『ジャマイカ・オブザーバー』紙のハワード・ウォーカー記者はこう語る。

ジャマイカ陸上界では歴史のある国だけど、ボルトの功績は群を抜いている。国民的英雄だよ。かつてレゲエ歌手のボブ・マーリーがジャマイカ史上最高の、最も人気のあるジャマイカ人だとされていたが、私が思うにボルトは彼を超えた。そうなったのはトラック上での走りだけが要因ではない。彼の人柄によるところも大きい」

ボルトはその圧倒的な強さだけでなく、陽気なキャラクターでもその名を世界中に知らしめた。気さくな性格はメディアとのやりとりにも表れていたようで、同じくジャマイカの『ザ・グリーナー』紙のアンドレ・ローヴ記者はこう話す。

「ボルトは今や世界的なアイコンで、例えばバスケットのレブロン・ジェームズやサッカーのクリスティアーノ・ロナウドやメッシと同レベルのスターだ。それなのに、今でも取材しやすい選手のひとりなんだ」

前出のウォーカー記者もこう続ける。

「昨年のリオデジャネイロ五輪の100mで勝った後も、そのまま2、3時間も取材に対応していたのを覚えているよ。大抵のアスリートが『帰りたい』と思う状況でも、取材エリアにとどまって全員に応えていた。本当に素晴らしい人物で、だからこそみんなに愛されているんだ」

★『週刊プレイボーイ36号』(8月21日発売)「ワイド特集 織田裕二さんが伝えなかった世界陸上のイイ話」では、大会前から常に話題になっていた「サッカー転向」説について、ボルト本人の直撃取材に成功。そちらもお読みください! 

(取材・文・撮影/栗原正夫)