インターネットの関連書籍のタイトルを見ると「革命」「衝撃」「進化」「・・・を変える」「次世代」といった言葉が目に飛び込んでくるが、はたして本当だろうか?
 
 「イケている人をますますイケている人にし、イケてない人との格差を広げるのがインターネット」と、ニュースサイト編集者で『ウェブを炎上させるイタい人たち』『ウェブはバカと暇人のもの』の著者・中川淳一郎氏は指摘する。
 
 2009年、グーグルがテレビCMを開始した。テーマは「さがそう。」。これは、グーグル検索をすることにより、どんどん知りたい情報が手に入り、それが自分の夢につながることを表現したもので、グーグルの検索画面だけで構成されている。

 「おとなになったら」編の場合、「特急のうんてんしゅになるには」と検索窓に入力し、そこから「特急カシオペア」と入力する。そこから「カシオペア座」の検索結果が出て、カシオペア座の画像が登場。「うわーっ」と子どもが感嘆する声が出て、続いて「うちゅうひこうし」と入力すると「宇宙飛行士」「宇宙飛行士 給料」「宇宙飛行士 募集」「宇宙飛行士 若田」「宇宙飛行士 虫歯」「宇宙飛行士 秋山」「宇宙飛行士 試験」「宇宙飛行士はこうして生まれた」といった検索候補が登場。
 
 そして「宇宙飛行士 虫歯」をクリックしたのだろう。「虫歯があると宇宙飛行士になれないって本当ですか」という質問サイトの検索結果にたどりつき、続いて彼は「むしばにならないおやつ」を検索する。

 これは「検索することによって、知的好奇心が広がり、夢の実現に近付いていく」ことを意味している。だがこれは、同じ嗜好を持つ人に、同じ検索結果を与えるだけだと中川氏。「検索候補」にしても、「多くの人が興味を持っていることはコレ」を提示しているので、検索者自身のオリジナリティはそこにない。自分で考えることなく、集合愚がもたらした「より最大公約数的な検索結果」をクリックして、何かを学んだ気になっているのだ。これはちょっと、危険ではないだろうか?

 ネットに書かれている情報は時に数千万人が一気に知ることになる。それらは知識として押さえておいても良いが、それだけを知っていても他者との差別化はできない。だからこそ、たいていは売れても数万部程度にしかならぬ「書籍」を読むべきだし、色々な人とリアルな世界で交流すべきだと言う。その方が知の差別化ができるからだ。

 あまりグーグルやネット教信者の提案することを真に受けないように、とも話す。なぜならインターネットよりもリアルな生活の方がすごいし、自分の大事な人から得られる情報、専門家から得られる情報の方が貴重だからだ。

 つまり、ネットは誰にでも平等だが、才能には平等ではないのである。才能のある人は、ネットをうまく利用するが、ネットだけに頼ることはしない。だから、「イケている人をますますイケている人にし、イケてない人との格差を広げる」。

 ネット社会はすでに成熟し、私たちはネットを十分使いこなすだけの能力は手に入れている。あとはこれをうまく利用し、その能力を過信し過ぎず、頼りすぎないことが、ネットとの正しい付き合い方なのかもしれない。


『ウェブを炎上させるイタい人たち』
 著者:中川 淳一郎
 出版社:宝島社
 価格:700円
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