フリーパスは次々消え「青春18きっぷ」は改悪…それでもこの夏、お得に使える「乗り放題きっぷ」の選び方
全国で使用できるフリーきっぷは、年々その選択肢が狭まっている。愛用者の多い「青春18きっぷ」は、3日もしくは5日連続利用に変更され、かつ新幹線並行在来線の第三セクター鉄道が増えたことで、利用できない区間が増えてしまった。
JR東日本とJR北海道で発売されている「北海道&東日本パス」(大人11780円)は、青い森鉄道やいわて銀河鉄道、北越急行でも使用でき、北海道新幹線の新青森〜新函館北斗間では特定特急券を買えば北海道新幹線の空席を利用できる。有効期間は連続7日間である。しかし利用期間が限られているし、社会人などで連続7日間の休暇を取ることができる人はそんなに多くないだろう。
広域のフリーきっぷは減ってしまった。このあたりはJR東日本に限らない。しかし、エリア内のフリーきっぷを買って各地を回ることは、まだまだできる。
前編記事『「東日本のんびり旅パス」はなぜ1年で消えてしまったのか…JR東日本がフリーきっぷを減らし続ける「本当の理由」』より続く。
狭いエリアのフリーきっぷが充実したJR東日本
JR東日本が、全エリアにまたがるフリーきっぷを削減している傾向にあるのはたしかだ。しかし各エリアのフリーきっぷは、いまなお残っている。
たとえば「五能線フリーパス」(大人4040円)は、車窓の美しい五能線を2日間利用できるフリーパスである。五能線全線と、五能線と接続する奥羽本線の青森〜弘前間、東能代〜秋田間で使用できる。「リゾートしらかみ」の指定席券と併用して全線を乗る、あるいは途中下車などを駆使して津軽鉄道に寄り道するというのもいいだろう。たとえば秋田〜青森間を「リゾートしらかみ」で往復すると、通常の乗車券で秋田〜青森間の片道乗車券は4620円(別途、指定席券が840円)かかるため、片道だけ乗っても「五能線フリーパス」のほうがお得になる。
「仙台まるごとパス」(2日間・大人2930円)は、仙台〜山寺エリアのJR線と仙台市地下鉄、仙台空港鉄道、阿武隈急行の一部、市内のバスが使用できるものである。たとえば1日目に仙台空港から塩竈・松島を観光して秋保温泉に宿泊、2日目に山寺と仙台市内を周遊して仙台空港に戻るという行程で、通常より大人1人あたり約3000円もお得になる。
「信州ワンデーパス」(大人2830円)は、信州エリアのJR東日本路線と、しなの鉄道長野〜豊野間に乗車できるものだ。小淵沢駅や越後川口駅までの飯山線も利用できるほか、北陸新幹線軽井沢〜長野〜飯山間も利用できるため、回遊性の高いルートをつくることができる。小淵沢を経由しつつ、新幹線も利用して信州をぐるっと回るのがいいだろう。
たとえば小淵沢〜長野間を中央本線・篠ノ井線経由で通常の乗車券で移動すると片道2420円・往復4840円かかるが、信州ワンデーパスなら2830円で同じ区間を往復でき、しかも途中下車も自由になる。
東京や首都圏を巡るお得なきっぷ
東京圏では、23区内の「都区内パス」(大人870円)がいつでも使用できる。東京メトロや都営交通を使用できる「東京フリーきっぷ」(大人1720円)の使い勝手のよさも注目だ。
土休日およびゴールデンウィーク・お盆・年末年始の1日に使用できる「休日おでかけパス」は大人2950円、同等の機能を持った「のんびりホリデーSuicaパス」は大人2850円である。
これは片道1480円以上の区間を往復すれば元が取れる計算で、たとえば東京〜小田原間を往復すると通常の乗車券で3200円かかるためパス代のほうが安い。フリーエリアの中ほどにある駅で単純往復するだけでは元が取れないので、エリアの端まで足を伸ばすか、複数の駅を回る周遊型の使い方が向いている。
JR東日本に関しては、「地域」をターゲットに鉄道の旅をするのが妥当ではないだろうか。
フリーきっぷ「大盤振る舞い」のJR東海
JR東海は、正直なところそもそもの在来線の運行エリアが狭い。しかし、たいていのところはフリーきっぷで乗車できるのが特徴だ。
静岡エリアでは、土休日と12月30日〜1月3日の間で1日利用できる「休日乗り放題きっぷ」(大人2720円)がおすすめだ。東海道本線熱海〜豊橋間と、御殿場線・身延線全線に乗車できる。
名古屋を中心として同様に乗り放題になるのは「青空フリーパス」(大人2620円)。三重県四日市市の河原田(かわらだ)駅から津市の津駅までを結ぶ伊勢鉄道も利用可能だ。利用可能な期間は「休日乗り放題きっぷ」と同じ。この2つを併用して東海地方の旅を楽しむのもいいだろう。
そして、JR東海のフリーきっぷといえば「JR東海&17私鉄 乗り鉄☆たびきっぷ」(大人9200円)である。これは土休日を利用開始日とする連続2日間利用でき、JR東海全線、同社と接続する私鉄や第三セクター17事業者に乗り放題というものである。
特急券を別に買えば熱海〜米原間の「ひかり」「こだま」も利用できる。新幹線を上手に使えば、JR東海エリアの乗りつぶしが可能であり、さまざまな私鉄をめぐることができる。
ここでモデルケースを示してみよう。
1日目、三島まで新幹線でやってきて、修善寺まで伊豆箱根鉄道を往復。吉原に移動し、岳南鉄道に乗車。清水に行き、新清水から新静岡まで静岡鉄道。静岡でふたたびJR東海に乗り、浜松に行き遠州鉄道を往復。ここで泊まる。
2日目は新幹線で米原まで移動。近江鉄道を一巡りし、東海道本線で大垣へ。桑名までは養老鉄道で移動。桑名から名古屋経由で浜松まで在来線に乗り、浜松からは東海道新幹線で熱海まで戻る。
どの路線もそれなりに本数があるので、JR東海の広範囲なエリアと私鉄を簡単に楽しむことができる。
JR西日本はフリーパスでの都市間移動が便利
関西では鉄道業界全体でMaaSなどに取り組み、JR西日本でもICOCAやQRコードきっぷを使用したフリーパスに力を入れている。最近注目されているのは「JR西日本QR2dayパス」(大人4000円)だ。「KANSAI MaaS」アプリ内でのみ購入できる。
東は長浜から南は和歌山、西は姫路までを自由に周遊できるため、京都・奈良・大阪・神戸の観光に便利であり、それぞれの地域を楽しみつつ、その間にJR西日本の新快速といった速達性の高い列車を使用するのに向いている。
大阪〜姫路間(新快速で約1時間)の往復は正規運賃で2920円かかるため、往復するだけでパス代4000円の7割以上の元が取れる計算だ。大阪〜長浜間の往復なら3960円で、ほぼ1往復だけでパス代に達する。2日間有効なので、翌日に京都や奈良へ足を伸ばせば確実にお得になる。とくに、新快速が充実している京阪神間の移動を軸にしたプランが、最も検討しやすいだろう。
また「tabiwa by WESTER」を利用したパスが、JR西日本の各エリアにある。複数日有効のものもあるので、各地を周遊するのにはいいだろう。
これはJRではないが、ぜひ触れておきたいのが近鉄の「週末フリーパス」(大人5000円)だ。土日を含む連続3日間、近鉄全線が乗り降り自由になるきっぷで、大阪・京都・奈良・三重・愛知の2府3県にまたがる広いエリアをカバーしている。
大阪難波〜近鉄名古屋間の乗車券は往復5720円かかるため、この1往復だけでパス代を上回る計算だ。さらに京都・奈良・伊勢志摩・吉野など近畿の主要観光地がほぼすべてカバーされており、特急券を別途購入すれば特急にも乗車できる。ただし前売り限定で、当日購入はできない点には注意が必要だ。
なお、チケットレス前提のフリーきっぷが増えていることは、ご理解いただきたい。チケットレス化は、自動改札機のメンテナンスフリーを意識したものである。
ここで挙げた以外にも、各JRにはさまざまなフリーパスがある。その多くは「地域」をターゲットにしたものであり、1日もしくは2日といった短期間のものが多い。この種の地域限定フリーパスを使用して、各エリアを深掘りする鉄道旅をしてはいかがだろうか。
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