すぐ治るからと放置はNG? 「脳梗塞」の“前兆”となるあのサイン
起床後に水を飲まない、熱いシャワーで目を覚ます--日常のその習慣、一度見直してみませんか?
睡眠中に失われた水分を補わないまま活動を始めると、血液がドロドロになりやすく、血栓が形成されやすい状態が続く可能性があります。また、42℃以上の熱いお湯は交感神経を急激に刺激し、血圧を大きく上昇させる要因になります。冬場の脱衣所や浴室との温度差が招く「ヒートショック」も、脳血管疾患と無関係ではありません。朝のちょっとした習慣の見直しが、血管の健康を守ることにつながります。
監修医師:
伊藤 たえ(医師)
浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。
脳梗塞と突然死の罠--気づきにくい危険なサイン
このセクションでは、脳梗塞が死につながるメカニズムと、見逃されやすい前兆のサインについて解説します。早期発見・早期対応のために知っておきたい重要な情報です。
脳梗塞が突然死を招くメカニズム
脳梗塞は、発症から治療までの時間が患者さんの予後(その後の経過)を大きく左右する疾患です。脳の細胞は血流が途絶えると非常に短い時間で障害を受け始め、発症から数時間以内に広範囲の脳細胞が機能を失うこともあります。
特に危険なのが、脳幹(呼吸や心拍など生命維持に関わる機能を担う部位)や小脳に発症した脳梗塞です。脳幹に重篤な梗塞が生じると、呼吸機能や心拍の調節に障害が及び、突然死に至るケースもあります。また、広範囲の脳梗塞では脳浮腫(脳がむくんだ状態)が起き、頭蓋骨内の圧力(頭蓋内圧)が上昇して脳ヘルニア(脳が正常な位置から押し出される状態)を引き起こし、生命の危機に直結することがあります。
さらに、心房細動(心臓のリズムが乱れる不整脈)を持つ方は、心臓内に血栓が形成されやすく、その血栓が脳に飛んで脳梗塞を引き起こす「心原性脳塞栓症」のリスクがあります。心原性脳塞栓症は突然意識を失うほど重篤な発症をすることも少なくなく、特に注意が必要です。
見逃してはいけない脳梗塞の前兆--TIAとは
脳梗塞には、本格的な発症の前に「一過性脳虚血発作(TIA:Transient Ischemic Attack)」と呼ばれる前兆が現れることがあります。TIAとは、脳の血流が一時的に途絶えることで症状が現れるものの、数分から数時間以内に症状が消える状態です。
TIAの代表的な症状としては以下が挙げられます。
・片方の腕や脚に突然力が入らなくなる、あるいはしびれを感じる
・言葉がうまく出てこない、または相手の言葉が理解しにくくなる
・突然片方の目が見えにくくなる、あるいは視野の一部が欠ける
・突然激しいめまいが生じたり、歩行が困難になったりする
これらの症状は「すぐに治った」として放置されることが少なくありませんが、TIAを経験した方はその後数日以内に脳梗塞を発症するリスクが高いことが知られています。症状が一時的に消えたとしても、すぐに神経内科や内科、脳神経外科を受診することが大切です。TIAは「脳梗塞の警告サイン」ともいえる重要なサインです。
まとめ
脳梗塞は、日常のさりげない習慣の積み重ねによってリスクが高まる疾患です。朝の起き方から食事・運動・睡眠まで、日々の行動を少し意識するだけで、脳梗塞のリスクを下げることにつながります。TIAのような前兆サインを見逃さず、定期的な検診で自分の体の状態を把握することも大切です。気になる症状がある方や持病をお持ちの方は、神経内科や内科、脳神経外科などを受診し、専門の医師に相談することをおすすめします。自分と大切な方の命を守るために、今日から一歩を踏み出してください。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット「脳血管疾患(脳卒中)」
国立循環器病研究センター「脳卒中」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
日本脳卒中学会「脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2025)」

