高市首相の“食料品消費税1%”は本当に家計を救うのか…専門家が疑問視する「月6,151円」と円安リスク

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2027年4月から2年間限定で1%に引き下げる案が、政府・与党内で検討されている。2026年2月の衆院選では「消費税ゼロ」を事実上の公約として掲げていたが、レジシステムの改修で時間がかかるためにスピード重視で1%案が急浮上した。しかし、消費税減税を前提に議論が進んでいるようにも見え、時流と合わないチグハグな印象も受ける。

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消費者は物価高に慣れた状況下での消費税減税

政府は消費税減税を給付付き税額控除を導入するまでのつなぎとし、中所得者や低所得者への物価高対策と位置づけている。

日本は2022年ごろから急速な物価高に見舞われた。特に2024年から2025年にかけてはコメ高騰も加わって食料品価格の上昇が家計に大きく響いた。2025年の消費者物価上昇率は生鮮食品を除いて3.1%であり、前年の2.5%から加速している。

コメ類の上昇率は67.5%にも上っていた。高市首相が食料品の消費税ゼロが悲願であると発言したのは2025年6月だ。

しかし、足元ではコメの価格が落ち着きを取り戻している。POS分析のマーチャンダイジング・オンによると、2026年6月3日のコメ5キロの店頭販売価格の平均は3766円だ。2025年7月には5000円を超えることもあった。

2025年に物価高の主要因になっていたコメは、今では在庫の過剰感が漂っており、新米が流通すれば価格は今後さらに下がる可能性もあるわけだ。

食料品の値上げは2026年も続いているが、消費者の受け止め方が変化していることも特徴である。

チラシ情報サービスなどを提供するくふうカンパニーによると、食品や日用品などの普段の買い物について、74.2%が「値上げに慣れてしまった感覚がある」と回答した。

消費者は、物価高が続く中で値上げを生活の一部として受け止めざるを得ない状況にあるのだ。4割近くは10円~20円程度の値上げには驚かなくなったとも回答している。

日本人は長らく続いたデフレで、かつては物価高に対する拒絶反応が異常なほど強かった。2022年6月に当時の日銀総裁だった黒田東彦氏が物価高に対する家計の許容度が高まっていると発言し、大問題になった。物価高騰に苦しむ家庭を軽視するものだと受け止められたのだ。

しかし、インフレは悪であると切り捨てられないことも事実だ。物価上昇が続いて企業の収益力が高まり、賃金として還元されて消費が旺盛になるという好循環を生み出すからである。

ここで重要なのが、インフレ経済に人々が適応するかどうかだ。くふうカンパニーの調査からはその兆しが見えているが、消費税を引き下げることでその感覚に水を差すことにもなりかねない。

また、8%から1%に引き下げることによる効果も限定的だ。家計調査の2025年の平均結果によると、2人以上の世帯の食料の月平均額は9万4895円で、消費税は7029円となる。

1%だと879円で、差額は6150円だ。コメ5㎏の価格が2025年より1000円以上下がっている今、国を挙げて減税に走ることには疑問の余地がある。

財政悪化懸念の高まりで円安が進行すれば物価高に拍車も

消費税の引き下げは円安を招きやすいという別の問題もある。1%への引き下げで4兆円程度の財源が失われる。高市首相は赤字国債には頼らないとし、補助金や政策減税の見直しなどで賄う方針だが、具体的な道筋については明示されていない。

歳入減によって財政悪化への懸念が高まる。拡張財政路線は円安に拍車がかかりやすいのだ。日本銀行は6月15日、16日の金融政策決定会合で政策金利を1%に引き上げる追加利上げを検討中だ。

木原稔官房長官は6月4日の記者会見で、「適切な金融政策運営を行なうことを期待する」と述べ、直接的な言及は避けたものの利上げへの理解を示したと受け止められた。

しかし、6月4日時点でドル円は159円から160円前後で推移しており、利上げ観測がある中でも円安水準にある。

仮に日銀が政策金利を1%にしたとしても、0.25ポイントの引き上げだ。FRBやECBなどと比べると利上げペースは遅く、よほどのサプライズがない限りは円高へと大きく振れる可能性は低いだろう。

つまり、物価高の要因の一つとなっている円安は解消されないのだ。

また、食料品限定での引き下げは外食産業にとって打撃が大きい。相対的に外食価格が割高になるからだ。ただでさえ、消費者の節約志向の高まりで飲食店の利用は控えられている。一部の業界が置き去りにされる懸念があるのだ。

そもそも、政府が消費税を8%から1%に引き下げるからといって、2027年4月から一律で販売価格が下がるとは考えにくい。食料品がスーパーの店頭に並ぶまでには、生産者や問屋、配送業者など様々な事業者が関わっているからだ。

2027年4月の統一地方選挙も狙いの一つ?

消費税減税の議論は導入ありきで進められ、「物価高対策」という大義名分で国民の支持を取りつけているような印象がある。

そして、導入のタイミングで行なわれるのが「統一地方選挙」だ。高市政権は依然として高い支持率を維持しているが、国民に対して目覚ましい成果を出しているとは言い難い。ガソリンの暫定税率廃止は迅速に進んだものの、イラン攻撃によって原油が高騰。暫定税率廃止の影響が相殺されてしまった。

国民に伝わりやすい形で、現政権を支持したメリットを示す必要があるわけだ。いっぽうで、「責任ある積極財政」で掲げている財政規律を維持する姿勢が求められてもいるはずだ。

取材・文/不破聡