《逮捕状請求》「焼却炉は証拠の“宝庫”のはず」旭山動物園・遺体遺棄事件発覚から1週間…夫の供述があっても逮捕まで時間がかかったワケを元刑事が指摘
北海道・旭川市内に住む女性の行方が3月末から分からなくなっている事件。4月23日、夫である30代男性が警察による任意の事情聴取に応じ、「旭山動物園の焼却炉に妻の遺体を遺棄した」「遺体を数時間にわたって燃やした」と話したほか、殺害をほのめかす供述をしているが、いまだ遺体は発見されていない。
【写真を見る】供述があった旭山動物園の焼却炉、“遺体なき殺人”の捜査が難航したワケとは
しかし、事態は4月30日に進展。男性について、警察が死体損壊の容疑で逮捕状を請求したことが明らかになった。大大手紙社会部記者が解説する。
「任意で事情を聞かれていた男性は、旭山動物園の男性職員で妻と2人暮らしでした。女性は、3月30日に生きていることを確認されてから行方が分からなくなっており、4月23日に女性の関係者から安否確認を求める通報が警察に入っていました。
同日、警察は男性に任意聴取、翌24日には動物園内の現場検証を開始しました。25日にかけてはトラックやワゴン車など車3台を押収、26日からは男性の自宅を家宅捜索していましたが、決定的な証拠は見つかっておらず、男性の逮捕には至っていませんでした」(大手紙社会部記者)
捜査関係者によると、男性は妻が行方不明になる前「残らないよう燃やし尽くしてやる」などと脅すような言動をしていたことが明らかになっている。
また、旭山動物園は警察捜査に全面的に協力するため、4月29日に予定していた夏季開園日の延期を決定していた。任意聴取で、男性が遺体を遺棄したとされる供述をしていたにもかかわらず、1週間が経って、ようやく逮捕状請求に至ったのはなぜか。元警視庁捜査一課刑事の佐藤誠氏が解説する。
「ご遺体が発見されていないことが、逮捕に結びつけることができなかった最大の理由でしょう。自宅や焼却炉の中から、血痕や所持品、あるいは歯の1本でも出れば、その時点で逮捕に踏み切れるはず。しかし、足踏みを強いられていたということは、現状、女性の痕跡がまったく見つかっていなかったということでしょう」(佐藤氏)
「焼却炉は本来、証拠の"宝庫"」
佐藤氏は、遺体が別の場所に遺棄された可能性を指摘する。
「男性は『焼却炉で焼いた』と供述していますが、遺体を跡形もなく燃やすことは難しい。特に人骨はよっぽどの火力がないと完全に燃え切らない。警察からしてみれば、本来、焼却炉は何らかの証拠が見つかる"宝庫"のはずなんです。
供述に具体性があるので、焼却炉を使ったことは事実かと思いますが、遺体すべてを燃やしたかと言われると疑問符がつく。一部は別の場所に埋めるなどして遺棄した可能性も視野に入れて、警察は動いていたのではないでしょうか」(同前)
旭山動物園の焼却炉は、動物の死骸に付着しているウィルスや細菌を死滅させるため、高火力で焼却しているという。"遺体なき殺人"の場合は、逮捕までに相当な日数がかかるケースも多いという。
「2016年、埼玉県川口市でも"遺体なき殺人"が発生しています。この事件では、犯人が経営していた冷凍マグロの卸売会社に運んで解体し、魚のアラと一緒に焼却したとされています。捜査が開始したのは2018年12月で、発生から約5年後の2021年10月にようやく容疑者の男女7人が逮捕。最終的に懲役20年の判決が出ています。
遺体なき殺人でも合理的な立証さえできれば立件ができますが、裏を返せば証拠を積み上げることができなければ、逮捕までいきつかないケースもあります。今、警察は1つ1つの証拠をかき集めて『合理的に考えて、死亡以外あり得ない』という裏付けを慎重に進めてたということでしょう」(同前)
全国的な観光スポットで起きた事件は、ようやく動き始めた。
