4兆円超を投じ、NTTドコモを完全子会社化することを決めたNTT。グループとしてIoT(モノのインターネット化)や5Gへの投資を効率良く進める狙いがあり、その先には6Gの研究開発も見据えているようだ。

・【映像】NTT、携帯電話料金の値下げはどこまで?

 このタイミングでの発表について、NTTドコモの吉澤和弘社長は「リモート型の社会に大きく変わろうとしている。今ここでやらないと」と説明している。

 ITジャーナリストの石川温氏は「もともと今のままでは世界と戦えないと言われていたこともあり、グループ再編はしたかったのだろう。実は4月に発表するという話もあった。そこに菅総理の“携帯料金値下げ発言”があったので、澤田社長としては“渡りに船”ということで、このタイミングで仕掛けたのだと思う。ドコモとしてはあくまでも単独でやっていきたかっただろうが、NTTとしてはドコモの助けやブランドイメージが欲しかったのだろう。世界に目を向ければ、中国は5Gで世界に進出すると言っているし、アメリカはその中国を排除しようとしている。まさに国と国との戦いになる中、日本政府としてもバックアップしたいという思惑もあると思う」と話す。

 その一方「成長戦略が描けない中での、“攻め”というよりは“守り”の決断だ。携帯料金値下げの中での4兆円の回収や、グループの人員削減の問題も出てくると思う。すでにGAFAは通信の分野にも進出してきている。そこに対抗するにはインターネットサービスもなければならないし、通信もしっかりしていなければならない。あるいはクラウドも同様だ。総合力で戦うのは難しい。また、中国メーカーはコスト力が圧倒的に強く、基地局を安く作ることに長けている。そこでNTTを始めとした日本の企業やメーカーが戦うのは難しい。政府やNTTグループは6Gに向けて頑張ると言っているが、通信の世界は“積み重ね”。すでに5Gで2周遅れと言われている日本が巻き返すのは非常に難しいと思う」との見方を示した。

 元経産官僚の宇佐美典也氏は「米中経済戦争の影響によって、5GネットワークにHUAWEI(ファーウェイ)製品を使わないで下さいとか、サイバーセキュリティをもっと確保して下さいといった具合に、通信の世界に政府が入り込むことが増えている。他にも電話網の在り方を変えましょうという議論もある。NTTとしては、もう国とやっていくしかないという、むしろ国策企業になってしまおうかという判断もあったのではないか」との見方を示した。

 さらに売上高や時価総額の規模から見て、KDDI、ソフトバンクにとっては大きな脅威となる。ある大手通信関係者は「高校球児がプロ野球選手と試合するようなもの」「他社では実現できないような料金値下げが脅威。しかし公正な競争という中でそれが許されるのか、公正取引委員会にはちゃんと見て欲しい」と話しているという。

 NTTとドコモの会見を受け、両社は「ドコモの携帯電話料金の値下げ問題とNTTの経営形態の在り方は別の問題と考える。NTTの経営形態の在り方は電気通信市場全体の公正競争の観点から議論されるべき」(KDDI)、「NTTグループ各社の在り方については一定のルールが課せられており、NTT(持ち株)によるドコモの完全子会社化は、電気通信市場における公正競争確保の観点から検証されるべきものと考える」(ソフトバンク)とのコメントを出した。

 石川氏は「グループ会社が分離されていることによってバランスが保たれていた面もある。携帯だけでなく固定も一緒に営業されてしまうとなると、KDDIやソフトバンクにとって相当な脅威だ」とコメント。宇佐美氏は「5Gが普及すれば、通信スピードがWi-Fiと変わらないレベルになる。今はドコモ、au、ソフトバンクという携帯各社間の競争が行われているが、NTTとNTTドコモがくっつけば、5GとWi-Fiの両方をうまく使い分けていく感じになると思うので、いわばNTTの独壇場になってしまうと思う。そうだとしたら、他のところが不利にならないようなルールを作ることが国に求められると思う」と指摘した。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「NTTは1980年代、中曽根内閣の頃に民営化され、分社化されていった。その中曽根元総理の葬儀がという時に再び“国有化”という話が出てきている。ナショナリズムと産業、というテーマが盛り上がっている折でもあり、面白く感じている。ただ、携帯料金を値下げし、ソフトバンクとKDDIに勝ったらそれで終わりかといえば、そうではないと思う。NTTがそれだけのために4兆円を投下するだろうか」として、次のように話した。
 
 「ガラケーの“黄金時代”はiモードがスタートした1999年から2000年代までで、2007年にはiPhoneが出てきた結果、その天下は10年も無かった。その間ドコモが何をやっていたかというと、莫大な利益を使って海外展開しようとしていて失敗した。ソフトバンクも同様だ。つまりスマホ時代にはAppleやGoogleの端末、あるいはTikTokなどのアプリケーションが話題の中心であって、インフラの部分を担う通信は“土管”として、あまり注目されなくなっている。それなりに儲かりはするが、決して大きな成長もしない。これから5Gが出てきて、さらに6Gになれば、もう固定回線の時代は終わりだ。NTT東西も厳しくなっていくだろう。やはりNTTグループの再編は必須だろうし、海外展開しているNTTコミュニケーションズとシステム開発のNTTコムウェアをドコモと合併させるというのも、通信会社からITのサービスを包括的に提供する会社に変身させようという目論見だと思う。かといってどんな戦略でやっていくのかは難しいし、GAFAみたいな会社にはなれないと思う」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)