[石野純也の「スマホとお金」]ワイモバイルはahamo 40GBを追わない――単身向け「超おトク割」の安さと1年限定の注意点
ワイモバイルは、7月に単独契約でも受けられる超!おトク割を開始した。ahamoも40GB化を実施し、中容量プランの競争は激化している
ワイモバイルの料金プランは、どちらかといえば伝統的な携帯電話の料金プランに近く、基本料と割引によって構成されています。
料金を抑えるには、光回線などの固定回線とのセット割やクレジットカードでの割引が適用されている必要があります。同じ事業者で固めて契約するだけで料金が抑えられる一方、一人暮らしで家に固定回線を引かないユーザーには割高になっていました。
市場全体を見渡すと、競合のahamoやUQ mobileの「コミコミプランバリュー」は、割引を前提としない素の料金で勝負しています。
これに対し、ワイモバイルも単身世帯向けの割引を7月に開始しました。「超!おトク割」がそれです。一方、ahamoやUQも料金やデータ容量を改定しており、競争は激化しています。ここではその中身を見ていきましょう。
固定 or 家族が必須だった割引条件を変えた超!おトク割
ワイモバイルの現行料金プランである「シンプル3」は、基本料と割引によって構成されており、料金はデータ容量に基づいたS、M、Lの3種類が存在します。
データ容量はSプランが5GB、Mプランが30GB、Lプランが35GBで、小容量から中容量に相当します。基本料はSが3278円、Mが4378円、Lが5478円です。
この金額だけだとどうしても割高感はありますが、ワイモバイルの場合、ここに割引が適用され、Sは858円、Mは1958円、Lは3058円まで料金が下がります。
割引は3種類で、適用されるのはうち2種類。光回線やSoftBank Airとのセット割である「おうち割 光セット(A)」と「家族割引サービス」「PayPayカード割」の3つで、光セットと家族割引はどちらか一方の適用になります。
ワイモバイルの現行料金プランとなるシンプル3。基本料は他社のサブブランドと比べて割高だが、割引でグッと料金が下がる仕組みだ
たとえばMプランの場合、基本料が4378円なのに対し、おうち割 光セット(A)で1650円、PayPayカード割のゴールドカード特典で770円の割引を受けられます。
この2つを適用すると、上記のように料金は1958円まで下がります。一方で、家族割引サービスだと割引額が1100円に下がり、料金は2508円になります。また、家族割引サービスは“2回線目から”という条件には注意が必要。1回線目の料金は下がりません。
シンプル3 Mの料金。割引の適用状況によって、毎月の金額が変わる
7月に登場した超!おトク割は、家族割引サービスと同額の割引を、1回線目から受けられるサービス。ただし、対象となっているのはMプランとLプランだけ。おうち割 光セット(A)や家族割引サービスと重ねて適用させることもできません。M、Lプランを対象にした、単身契約者向けの割引といえるでしょう。
超!おトク割だけを適用した際のMプランの料金は3278円、Lプランは4378円になります。また、年会費が無料のPayPayカードを作り、それで料金を支払うとPayPayカード割の対象になり、ここから330円の割引が受けられます。
これでMプランは2948円、Lプランは4048円まで料金が下がります。年会費1万1000円のPayPayカードゴールドだと割引額がさらに440円増え、Mプランは2508円、Lプランは3608円になります。
シンプル3 M、Lに超!おトク割とPayPayカード割を適用した料金。家族割引サービス適用時と同額になる
割引は1年で終了、継続利用なら光回線などのセットを検討
光回線とのセット割や家族割引などの適用がなくても安い料金プランに、ahamoやUQ mobileのコミコミプランバリューがあります。
超!おトク割が導入されたことで、ワイモバイルの料金体系もこれに一歩近づいた格好です。ただし、近づいたのはあくまで一歩。それは、この割引が1年限定だからです。
正確にいえば、当該料金プランへの加入月~13カ月目の間。14カ月目以降は割引が切れてしまい、通常の料金に戻ります。
1年かけて、家族を説得してワイモバイルを契約してもらえば、2回線目からは同額で使い続けることができるものの、ライフスタイルによっては難しいこともあるでしょう。このような場合には、料金が高くなってしまうのが超!おトク割のデメリットです。
14カ月目に割引が切れ、料金が割高になってしまう。同額以下で使いたければ、それまでの間に、光回線を引くか、家族に契約してもらう必要が出てくる
割引が切れたあと、料金の安いSプランに戻す手はありますが、ワイモバイルの料金プランはSとMのデータ容量差が大きいため、30GBや35GBに慣れてしまうと、使い方に合わなくなる可能性があります。
ある意味、お試しのような割引ですが、どちらかといえば、1年という期限は固定回線や家族割引を受けるための準備期間と捉えておいたほうがよさそうです。
一方で、1年間に限ると、なかなか魅力的な料金プランに仕上がっているのも事実です。たとえば、データ容量や料金体系の近いUQ mobileのコミコミプランバリューと比較すると、同プランは3828円なのに対し、ワイモバイルのシンプル3 Lは通常のPayPayカード割で4048円になり、料金では肉薄しています。また、PayPayカードゴールドであれば、料金は3608円になり、コミコミプランバリューを逆転します。
PayPayカードがあれば、1回線でUQ mobileのコミコミプランバリューに匹敵する金額になる
ただし、UQ mobileも1年間限定の「UQコミコミおトク割」を6月に導入しており、これを適用した際の料金は1年間3168円になります。こちらは、au PAYゴールドカードで、割引の期間制限がなくなるという変則的な料金プラン。新規契約かつゴールドカード持ちであれば、安さではUQ mobileに軍配が上がります。
UQ mobileも、UQコミコミおトク割を導入しており、これを適用すると超!おトク割適用時のワイモバイルよりさらに安くなる。この割引も1年限定。お互いにユーザー獲得をするための施策といえる
なお、どちらの割引も、新たに料金プランに加入することが条件になっています。そのため、ワイモバイルの割引未適用のユーザーはUQ mobileに魅力を感じる一方、UQ mobileの既存ユーザーはワイモバイルが安く見えるはず。その意味では、どちらも他社のサブブランドユーザーを狙い撃ちにした割引といえそうです。
ahamoも40GB化で対抗、過熱するサブブランドの中容量プラン競争
35GBに10分間の音声通話定額がつき、単身での契約でもゴールドカードさえあれば3608円になる料金プランは、ある程度、ahamo対抗にもなりえます。
ahamoは割引なしで2970円と一段安くシンプルですが、データ容量は30GB。準音声通話定額も、1回あたり5分と短いためです。より好条件なぶん、(1年間)ちょっとだけ高いワイモバイルという図式が成り立っていたといえるかもしれません。
もっとも、8月からは、ドコモがキャンペーンでデータ容量を増量しており、よりahamoのお得感が際立つことになりました。ahamoのデータ容量増量は10GB。既存契約者にも自動で適用され、合計したデータ容量は40GBになります。
音声通話の条件は変わっていませんが、ワイモバイルのシンプル3 Lよりシンプルで、かつデータ容量も5GB多くなるというわけです。
ahamoも、キャンペーンという形で8月からデータ容量を10GB増量している
このahamoの“40GB化”がなかなか強烈で、料金を据え置きにしているため、他社の同様のプランが割高に見えてしまいます。
ここでの主題にしているワイモバイルの場合、シンプル3 Lに最も割引額の多くなるおうち割 光セット(A)をつけ、PayPayカードをゴールドにしても、料金は3058円。ahamoより条件が多く、しかも高くて容量も少ない形になってしまいます。
同様に、UQ mobileもau PAYゴールドカードで割引を永続化させた場合でも、料金は3168円までしか下がらないため、40GBで2970円のahamoと比較すると、高いうえに容量が少なくなってしまいます。このように見ると、ahamoの10GB増量がいかに他社の“サブブランドキラー”であるかがわかるはずです。
3社で割引をフル適用した場合の金額。ahamoがもっとも安く、容量も多い
とはいえ、ahamoのデータ容量増量もあくまでキャンペーン。終了期限は定めていないものの、終わりがないわけではありません。
40GBが正式な料金になる可能性がある一方で、容量を上げたから値上げするという方向性もあり、このままの立ち位置を維持できるかどうかは未知数といえます。
ソフトバンクの宮川潤一社長はahamoの40GB化に対し、「いろいろ考えたが、現時点では追いかけるつもりはない」としており、すぐには対抗しない方針を示しています。
ソフトバンクの宮川社長は、ahamoに対抗するつもりはないと話した
一方で、宮川社長が「中容量帯の部分はバトル(競争)が激しい」とコメントしていたとおり、各社があの手この手で割引をしかけています。ワイモバイルの超!おトク割も、このままの形では終わらないかもしれません。
