「長寿は負担ではない」と訴える藤田誠衆院議員。ステージ4のがんから生還し政界へ

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 今年2月、埼玉14区から出馬し、初当選を果たした自民党の衆議院議員・藤田誠氏(53)は、東証グロース市場上場企業(INCLUSIVE Holdings株式会社)の創業会長という異色の経歴を持つ。50歳でステージ4のがんを告知され、過酷な抗がん剤治療や自家造血幹細胞移植を経て政治の道へ──。その転身の原点と、掲げるビジョンについて、藤田氏自らがその思いを綴った。

【写真】抗がん剤治療の前、友人らに囲まれバリカンで頭を丸める藤田議員

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 日本は、世界に先駆けて長寿社会を迎えた国です。本来、長く健康に生きられることは、社会の成熟を示す大きな成果です。しかし、私たちは、いつしか長寿を医療費や介護費を増大させる「負担」として語るようになりました。医療費が増え、介護の重圧が増していく。長く生きたいと願う一方で、長生きの先にある未来に不安を感じている──これで良いのでしょうか。

 世界はすでに、長寿を新たな成長の源泉へと捉える転換が始まっています。米国シリコンバレーでは、老化を単なる自然現象ではなく、科学的に介入できる生物学的プロセスとして捉え、AIや計算生物学、細胞の若返り、エピジェネティック・リプログラミングなどを活用して、加齢に伴う病気を予防・治療しようとしているベンチャー企業が勃興してきています。単なる寿命ではなく「健康に生きられる年数(健康寿命)」を延ばすための研究開発を進めているようです。

 一方、中国は高齢者向け市場、いわゆる「銀髪経済(シルバーエコノミー)」の発展を国家戦略として打ち出し、介護、健康管理、福祉機器、住宅改修に加え、スマート介護などデジタル技術を活用した高齢者向けサービスの育成を進める方針を打ち出しています。高齢化を新たな経済成長の原動力へ転換しようとする、国を挙げた明確な意思が示されています。

 ひるがえって、日本はどうでしょうか。数字だけを見れば、私たちは長寿の面では世界の『最先頭』に立っています。2024年10月時点で、総人口に占める65歳以上の割合は29.3%。2位のイタリア(24.6%)に約5ポイントの差をつけた独走状態です。

 本来なら、世界に先駆けて「長寿産業による成長」を実現できる立場にありますが、私たちが長寿に貼ってきたラベルは、常に「負担」でした。「老後の不安」や「世代間格差」といった言葉が新聞の紙面を躍り、本来喜ばしいはずの長寿は「どこか不安で、重くのしかかるもの」という文脈で語られがちです。

 政府はこれまでも、年金、医療、介護を持続可能なものとし、国民の皆さまに「長生きしても大丈夫だ」と安心できる社会を目指してきました。しかし、これからは「大丈夫」で終わらせてはなりません。長寿によって生まれる経験、知識、時間、消費、技術革新を、新たな経済成長の力へと変えていくことです。

 必要なのは、人口構造が根本から大きく変化した社会に適合する、新しい設計図です。働き方も、暮らし方も、お金の使い方も、「長く生きること」を大前提として組み替えていく。その地道な作業こそが、今の日本には必要だと考えています。

◆遺書ではなく「議員立法案」を病室で書いていた

 なぜ、経営者だった私がそう思うに至ったのか。少しだけ、私自身の話をさせてください。

 2023年12月13日、私は医師から「血液のがんです」と告げられました。その年の春、右の顎の下にできていたしこりが、すべてのはじまりでした。医師から説明を聞き終え、付き添ってくれた妻と病院を出ると、冬の澄んだ空に東京タワーが立っていました。私は妻に言いました。「これは大切な第1日目だから、一緒に記念写真を撮ろう」。クリスマスバージョンの東京タワーは何度も見られないのかもしれない、小学生の娘の成人式をみることは叶わないだろう、というなんとも寂しい気持ちに包まれました。

 のちに病名は「マントル細胞リンパ腫」、ステージ4と判明します。ネットで検索すると、5年生存率は3割程度と表示されました。50歳の冬のことでした。年が明けた2024年1月から抗がん剤治療が始まります。入退院を繰り返す日々、自分の造血幹細胞を採取する「自家造血幹細胞移植」の過程では、呼吸をするたびに背骨へ釘を打ち込まれるような激痛が丸一日続いたこともありました。それでも私は、病室にモニターを持ち込み、痛みで漏れる声をタオルで噛み殺しながら、経営する会社の幹部会議にオンラインで出席し続けました。そしてこの部屋で、私は何かに突き動かされるように遺書でも、回顧録でもなく、「議員立法案」を書いていました。

 上場会社を育ててきた人間として私が最も腐心してきたのは、突き詰めれば「自分がいなくても回る仕組み」を創り、磨き続けることです。ならば、自分がこの世から去ったあとも、一番長く、一番遠くまで残る仕組みとは何だろうか。そのとき、ずっと前に、ある政治家が話してくれた言葉が脳裏によみがえったのです。

「法律は、次の世代を、より幸せにすることができるプレゼントだ」

 会社はいつか形を変えるかもしれない。けれど、法律は社会の基盤として残る。無菌室に入る造血幹細胞移植の前に、私は心に決めていました。「治療が成功し、ここを出たら、絶対政治家になる」と。

 その覚悟は、すぐに試されました。退院した2024年秋の衆院選に出馬し、比例名簿に名を連ねたものの議席には届きませんでした。翌2025年夏の参院選では「がんと生きる社会を、共につくる」と掲げ、85ページに及ぶマニフェストを携えて全国を回りましたが、結果は1万票に届かず、自民党の比例候補で最下位でした。

 ゼロから会社を上場させ、50歳を過ぎた元ステージ4のがんサバイバーが、公の場で二度も落選したのです。

 それでも退く気などなく、三度目の挑戦時、公募面接で私はこう言いました。「たとえ落選しても、何度でもやります!」

 そうして今年2月、選挙がはじまる1週間前に公認を賜り、激しい選挙戦を経て、地元・埼玉14区において、議席をお預かりすることになったのです。

◆長寿社会を再設計する「5つの課題」の連鎖

 闘病と選挙戦を通じて私が気づいたのは、「これは決して自分ひとりの話ではない」ということでした。病気になっても働ける社会も、歳を重ねても役割を持てる社会も、親の介護を家族だけに背負わせない社会も、突き詰めればたった一つの問いの上に成り立っています。すなわち、「長く生きる時代を、どう設計し直すか」です。

 その課題は、大きく5つに分けられると考えています。「予防」「高齢者の就労」「病気とともに働くこと」「介護」、そして住まいや交通といった「暮らしのインフラ再設計」です。

 この5つは、互いに強く響き合っています。一つがつまずけば隣もつまずき、一つが良くなれば隣も上向く。その連鎖をより良い向きへと切り替えていくことこそが、長寿社会の設計だと私は考えています。

 例えば、運転免許証返納後、外出の「足」が細っていくと、外に出られない高齢者が増えていきます。家に閉じこもれば心身は弱り、イライラが募り、介護を必要とする状態へと近づいていく。予防が行き届かず、暮らしのインフラが綻ぶと、それは巡り巡って介護の負担をさらに重くしていくことにつながるのです。逆に言えば、ここに可能性があります。一つの課題を良い方向へ動かすことができれば、その推進力は隣へと伝わっていくからです。

 外出するための「足」を取り戻すことができれば、高齢者は再び一人で買い物に行き、病院に通い、誰かに会いに行けます。自らが消費する主体となり、地域での役割も取り戻せる。さらに言えば、予防に力を入れて健康寿命が延びれば、人はより長く元気に働けるようになり、深刻な人手不足も社会の内側から和らいでいきます。高齢者が持病を抱えながらも働き続けられる仕組みが整えば、それが心身の衰えを防ぐ最大の予防となり、重度の要介護状態への移行を遅らせることにつながります。結果として、現役世代の家族が重い介護負担を背負い、離職に追い込まれる事態を未然に防ぐことにもつながると思うのです。

 一つの前進が、次の前進を呼ぶのです。だからこそ、この5つは決して切り離さず、パッケージとして束ねて設計し直さなければなりません。

 そして今の日本にも、その「答えの芽」はあちこちに出現しています。糖尿病の重症化予防に本気で取り組み、新たに人工透析を始める患者を半分以下に減らした地方都市があります。ある大手家電量販チェーンでは、再雇用の年齢上限を撤廃し、意欲さえあれば何歳でも店頭に立ち続けられるようにしています。東京には、離職率ゼロを3年連続で達成している特別養護老人ホームがあります。そこに導入されたテクノロジーは、職員を減らすためではなく、「職員が入居者と人間らしく向き合う時間」を増やすために使われているそうです。電話やアプリで呼べば、AIがその場で乗り合いの経路を計算し、ワゴン車が玄関先まで迎えに来る仕組みを運用している地域もあります。

 今、政治に求められているのは、こうした点在する希望の芽を「一本の国家戦略」へと束ねる設計図を描くことです。先行する素晴らしい事例から学び、誰か一人の献身や頑張りに頼らずとも、どの町でも当たり前に続く「仕組み」へと昇華させる。これが、私が成し遂げたい使命なのです。

 そのために最もレバレッジが効く道具が、法律です。私が大学生の頃、伝記を読んで強く憧れた政治家がいます。小学校しか出ていないのに、議員立法を誰よりも多く作った男──田中角栄元総理です。あの頃は、彼を遠い世界の人だと思っていましたが、今の私は、本気で法律をたくさん創る人になりたいのです。

 最後に、正直に書いておきます。私のがんは、再発率の高いタイプです。私は常に、その可能性とともに生きています。だからこそ、自分の時間が間に合ううちに、長く生きることそのものが「希望」となる社会を設計し直したい。長寿を、負担のままでは終わらせない。その決意が、私のすべての出発点です。