「それはどういう意味?」「僕らはチームだ」佐々木朗希と繰り返した“問答” 怪物の再起を託されたド軍コーチの証言する舞台裏

今季は5月に入り、「別人」のように自信を身に着けた投球を披露している佐々木(C)Getty Images
球速と制球が改善された背景
メカニックの向上を追い求め、積み上げてきた努力がようやく実を結ぼうとしている。メジャー2年目の今季開幕当初の3月、4月は、5登板(22.2イニング)で、防御率6.35、WHIP1.81、被打率.301と打ち込まれた佐々木。スライダーとスプリットの制球が定まらず、ストライク欲しさに置きに行った真っすぐを痛打される場面が散見し、投球内容も登板毎に変わるような日々が続いた。
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しかし、ストレングス&コンディショニングコーチを務めるトラビス・スミス氏とのマンツーマンでの指導を受け始めた5月に入ってから状態が安定。ウエイトトレーニングによって体重とカロリー摂取量が共に増加し、肉体改造に成功。バラツキの目立った投球フォームも安定し、球速と制球力が揃って高まりを見せている。
実際、5月以降の佐々木は7登板で防御率3.86ながら、被打率.208、三振率25.9%と上々のスタッツを記録。一時は目も当てられないほどに悪化していた与四球率も6.8%にまで落ち着いてきている。
今では先発ローテーションを当たり前のように回し、まさに「別人」と言っても過言ではないほどの変貌を遂げた。そんな佐々木の飛躍に“投球のスペシャリスト”も目を細める。
現地時間6月17日に“ピッチングニンジャ”の愛称で名を馳せる投球分析家のロブ・フリードマン氏のYouTubeチャンネルに出演したドジャースの「ピッチング・ディレクター」を務めるロブ・ヒル氏は「自分からロウキに具体的に示したのは、投げる時の適応力の部分。その部分の伸びしろは、僕らが思っていた以上に発揮できていると思う」と語った。
メジャー1年目から怪物の成長を見守ってきた。
佐々木が右肩の「インピンジメント症候群」からの再起を目指していた昨夏にヒル氏は、平均93マイル(約147キロ)にまで球速が低下し、防御率も7点台まで悪化した状態の抜本的改善を託された。この時にはフォームの微調整にも携わった。
佐々木に問い続けた「それはどういう意味?」
メジャーの壁にぶつかり、もがいていた佐々木の覚醒を促したヒル氏は「まずは本人の理想的な状態を探ろうとした。そこで何を感じるか、どう考えるのかを知りたかった」と回想。さらに「本来ならこう動くべきという考え方と本人の理想形が違っていたことが分かったんだ」と証言した。
「SNSが発展した今の時代はさまざまな情報が入ってくる。その影響で投手たちの多くはロウキのように落とし穴にはまることがあるんだ。『こう動かないといけない』とか『こう投げた方がいい』と本人の身体に合っていないのに思い込んでしまうんだ」
そこで多角的なアプローチをほどこしたヒル氏。そこで精神面にもメスを入れ、本人の持っているであろう「良かった時のイメージ」を探り出す中では「核心にたどり着くまではちょっと時間が必要だった」という。
「ロウキが自分から何かを打ち明けてくれることもあるが、時にはこちら側が踏み込まないといけない必要もあった。『もう少し聞かせてくれ。それはどういう意味?』とかね。とにかく『いいかい? 僕らは同じチームだ。一緒に答えを見つけようとしているんだよ』と伝えたんだ。ロウキには『スタッフ全員が君のために動いている。だから話そうよ』って問いかける必要があったんだ」
決して順風満帆に成長できたわけではない。それでも、佐々木が開花の兆しを見せ始めているのは、ポテンシャルを信じ抜いてくれている周囲の我慢強い協力なくしてはあり得ないと言えよう。
まだまだ理想とする完成形には程遠い。しかし、それは成長の余地があるという裏返しでもある。ヒル氏をはじめとする多くの敏腕スタッフに支えられる佐々木が、メジャーリーガーとしてどこまで飛躍するかを興味深く見守りたい。
