【がん治療サポート】体力・免疫力を高め、つらい副作用をやわらげる漢方薬

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「西洋医学」におけるがん治療は、抗がん剤等による薬物治療、手術、放射線治療の3つが柱となっており、治療法は著しく進歩し、克服する人が冷増えています。しかしながら、治療をきっかけに体力や免疫力が低下し、倦怠感や食養生、冷えなどに悩む人は少なくありません。
こうした薬物治療の副作用、手術や放射線治療による合併症などの心身の苦痛を和らげる手段として漢方薬は有効であり、最近はその効果が科学的に検証され、多くの結果が報告されています。
 「こころ」と「からだ」を整える漢方薬で体力や免疫力をアップさせ、現在かかえる不調を軽減。より一層治療効果を高め、副作用の予防を図りましょう。

体力と免疫力をアップ――気虚・血虚タイプ

【主な症状】疲労倦怠感、体力低下、食欲不振
術後あるいは薬物療法後は体力が衰えるため、胃腸が不調となり食欲がない・むかつき、倦怠感、手足が冷える、めまい、皮膚の乾燥といった様々な症状がおこりやすくなります。体力や免疫力を補うことで、その後の治療効果を高めます。

補中益気湯(ホチュウエキキトウ)
【主な症状】体力低下、倦怠感、食欲不振、免疫力低下、寝汗
【特徴】がん治療により、エネルギー不足(気虚)となることでおこる倦怠感や食欲不振を改善します。免疫機能を増強し、NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化する効果も報告されています。
【成分の効能】黄耆(オウギ)、人参(ニンジン)、白朮(ビャクジュツ)で元気を生み出し、当帰(トウキ)で血を巡らせ、陳皮(チンピ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)で胃の調子を整え、升麻(ショウマ)と柴胡(サイコ)でからだにこもった熱を巡らせながら、からだの下に落ちたエネルギーを上に引き上げる効果を発揮します。

十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
【主な症状】胃腸虚弱、食欲不振、気分の落ち込み、寝汗などの気虚に加え、貧血傾向、皮膚のかさつき、冷えが強い、白血球減少など血虚の症状もみられる
【特徴】胃を元気に建て直しながら、血を補うことで、全身の回復力を底上げします。免疫の司令塔となるマクロファージ(白血球の1種で体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物や、古くなった細胞を食べて処理する免疫細胞)を活性化させる作用が科学的に確認されています。
【成分の効能】胃を活発に働かせる四君子湯(シクンシトウ)と血を補う代表処方の四物湯(シモツトウ)に、気を補う黄耆とからだを温め冷えや痛みを改善する桂皮(ケイヒ)が含まれることで、病後や術後の回復をサポートします。

人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)
【主な症状】体力低下、倦怠感、食欲不振、手足の冷え、貧血傾向、咳・痰などの呼吸器症状、不安感、不眠
【特徴】十全大補湯の加減法で呼吸器症状や不安感や不眠を伴う場合に用います。特に高齢のがん患者に見られる体重減や筋力低下などの心身の衰え(フレイル)に対し、QOLを維持するために活用されています。
【成分の効能】十全大補湯が基本処方となり、心を落ち着かせ不眠を改善する遠志(オンジ)、鎮咳作用と共に元気を維持する効果がある五味子(ゴミシ)が追加されていることで呼吸器症状や不安・不眠に効果があります。

ホルモン治療の諸症状を改善――更年期症状タイプ 

【主な症状】ホルモン治療など伴うのぼせやうつ、イライラ、動悸、冷え
ホルモン療法等によりホルモンの状態はアンバランスになり、不安やうつ、イライラといった精神症状、またホットフラッシュや動悸といった更年期障害のような症状を改善します。自律神経の乱れや冷えにアプローチして症状を改善します。

加味逍遥散(カミショウヨウサン)
【主な症状】精神不安、イライラ、めまい、のぼせ、頭痛、不眠、肩こり、日々、不定愁訴が変わる
【特徴】上にのぼった気を下にさげて全身に巡らせ、不足している血を補い、余分な水分も排出させることでホルモンバランスの不調により起こるさまざまな症状を改善します
【成分の効能】柴胡でストレスや緊張を和らげ、薄荷(ハッカ)で気を巡らせ、芍薬(シャクヤク)、当帰で血を補い、牡丹皮(ボタンピ)で血を巡らせ、白朮で水を巡らせ、山梔子(サンシシ)はこもった熱を冷まします。

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
【主な症状】冷え、動悸、頭痛、むくみ、めまい、貧血、下腹部痛
【特徴】血を補い、体を温めながら水分代謝を整えて、余分な水分を排出することで症状を改善します。
【成分の効能】当帰、芍薬で血を補い、川芎(センキュウ)で血を巡らせ、茯苓(ブクリョウ)、白朮で水を巡らせ、沢瀉(タクシャ)は余分な水を外へ排出します。

抑肝散(ヨクカンサン)
【主な症状】精神不安、神経の高ぶり、興奮・怒りやすい、不眠、むずむず足
【特徴】漢方医学で感情を司ると考える「肝」の高ぶりを抑えることで自律神経のバランスを整え、緊張や興奮を改善します。
【成分の効能】主薬の釣藤鈎(チョウトウコウ)と柴胡で気持ちの高ぶりや緊張をゆるめ、当帰、川芎で血を補うことで全身に栄養を送り届け、白朮、茯苓で胃の働きを活発に整え、気持ちを安定させます。

冷え、むくみ、排尿異常、下痢を改善――裏寒タイプ

【主な症状】全身の冷え、むくみ、排尿異常、腹痛・下痢
今まで冷えを感じたことがなくても、全身の血や水の巡りが低下することにより全身が冷え、胃腸がスムーズに働かないために、水分代謝異常が起こり、下痢・腹痛・吐き気、むくみ、尿が出にくいなどの排尿異常などもみられます。胃や腎を温めて水の巡りを整えて症状を改善します。

真武湯(シンブトウ)
【主な症状】めまい、むくみ、手足の冷え、下痢傾向
【特徴】からだの深部を温めて、からだに余分な水の巡りを整えて症状を改善します。
【成分の効能】茯苓、白朮、生姜(ショウキョウ)でからだに余分な水を排出しながら胃腸の働きを整え、附子(ブシ)で体の深部を温め、芍薬で筋肉の緊張を和らげ痛みを改善し、全体として新陳代謝を高めることで症状を改善します。

人参湯(ニンジントウ)
【主な症状】下痢、腹痛、冷え、食欲不振、吐き気・嘔吐
【特徴】胃腸を温めエネルギーを補うことで身体を芯から温めて、胃腸の機能を回復させ、免疫力を高めます。
【成分の効能】人参、乾姜(カンキョウ)で胃腸を温めることで働きを促進し、白朮で水分代謝を整えて症状を改善します。

牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
【主な症状】腰痛、膝痛、冷え(特に下半身)、しびれ、頻尿、夜間尿などの排尿トラブル
【特徴】からだを温め、エネルギーを補い、水分代謝を整えることで腎の働きをサポートする八味地黄丸(ハチミジオウガン)に痛みやしびれを改善する生薬が追加されています。地黄を含みますので胃腸虚弱な方には注意が必要です。
【成分の効能】八味地黄丸に足腰の血流を改善してしびれや関節痛を和らげる牛膝(ゴシツ)と利尿作用に優れ、排尿トラブルや下肢のむくみを強力に改善する車前子(シャゼンシ)が追加されていることで症状を改善します。

食欲不振、みずおちのつかえ、吐き気を改善――水毒タイプ

【主な症状】食欲不振、みずおちのつかえ・悪心吐き気・嘔吐、口内炎
治療により水分代謝が乱れ、胃腸の機能が正常に働かないためにさまざまな胃腸症状が現れます。水はけを整えて胃の働きを回復させます。

六君子湯(リックンシトウ)
【主な症状】食欲不振、吐き気、胸やけ、悪心
【特徴】胃を活発に働かせ、気を巡らす代表処方である四君子湯に水はけを整える二陳湯が追加されている処方で、胃から分泌される食欲増進ホルモン「グレリン」の血中濃度を上昇させたり、その働きを強めたりする作用を持つことが報告されています。食事が摂れることで体重の減少や骨格筋量の低下を抑える効果が期待できます。
【成分の効能】主薬の人参は胃を温めながら胃腸の機能を高め全身のエネルギーを補います。茯苓や白朮で余分な水を整え、半夏(ハンゲ)、生姜で吐き気を抑え、陳皮は気を補い食欲を益すことで症状を改善します。

半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
【主な症状】みずおちのつかえ・吐き気、下痢・軟便、口内炎
【特徴】胃腸の働きをサポートしながら、胃の炎症や熱を冷まし、様々な胃腸の症状を調えます。口内炎の場合にはぬるま湯に溶かして口腔内にいきわたらせて、クプクプうがいをしたのちに服用すると吸収が高まると言われています。
【成分の効能】半夏で吐き気を抑え、黄芩(オウゴン)と黄連(オウレン)でみずおち周辺の熱をさまし、胃の粘膜を保護します。乾姜は身体を芯から温めて下痢を改善し、人参、大棗、甘草で胃の働きを改善します。

小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ)
【主な症状】吐き気、嘔吐、胃に水がたまりチャプチャプ音がする
【特徴】もともとは「つわり」の治療薬として有名で、胃腸に留まっている水分を排出しながら胃の働きを整え、水分代謝を改善します。
【成分の効能】半夏と生姜で協力して吐き気を抑え、茯苓で余分な水を排出させることで症状を改善します。吐き気が強い時は、ぬるま湯に溶かしたものを冷ましてから少しずつ口に含むと飲みやすく、効果的といわれています。

【心がけたいワンポイントアドバイス】
・腹八分を徹底、
・なるべく旬の食材を摂取
・積極的に摂りたい食材
*腎の働きを高める食材 小豆、黒豆、黒ゴマ、ひじき、海苔、昆布、わかめ
*免疫力高める食材 ニンニク、人参、ブロッコリー、鶏むね肉、赤みの魚、キノコ類
*気を補う食材 牛肉、鶏肉、エビ、ウナギ、山芋、大豆、カボチャ
・入浴時は湯船につかる
・無理のないウォーキングやストレッチを取入れる
・充分な睡眠と休養

次回は「夏バテ・熱中症」についての漢方薬を紹介します。

『更年期の不調に効く自分漢方の見つけ方』斉藤明美 著