日本フィギュア史上初となる、ペアでの五輪金メダルを手にした三浦璃来・木原龍一組。今回は、木原選手がペアに転向して最初のパートナーだった高橋成美さんに当時の秘蔵エピソードを伺いました。

元パートナーが振り返る、龍一選手の変化

――日本のペアを支えてきた木原龍一選手の歩みについて。今の“りくりゅう”があるのも最初のパートナーである成美さんがいたことも大きかったと思いますが、木原選手のこれまでについてはいかがですか?

【写真】高橋成美さん

高橋:そう言ってもらえるのはすごく恐縮なんですけど、本当に長い間がんばってきたと思うんですよね。

龍一くんはすごく努力型、積み上げ型だと私は思っていて、見てすぐに実践できるタイプではないんですよ。だけど、本当に自分が納得するまで基礎の段階から何回も何回も繰り返して積み上げていくタイプ。気がついたら基礎がだれよりもブレないものになっているというのは、北京五輪のあたりから開花したと思います。

開花したあとはものすごい成長で今回の金メダルまで走っていったと思うんですけど、大体の選手は基礎が不安定なまま新しいものに挑戦していくから、できたりできなかったりするんです。

スケートの進歩って、3歩進んで2歩下がる、みたいな感じで進んでいくと思うんです。でも、龍一くんの場合は、0.1ずつ進んでいくけど絶対に後退しない。そういうのを続けていって、今の確実な土台、リフトでのフットワークやデススパイラルのピボット姿勢の安定感、スローもすごくコンスタントに投げるんです。

どんなときに投げても同じように投げられる。ペアの女子にとってはものすごく心強いものがある。だから璃来ちゃんも上で思う存分表現ができるし、スロージャンプも自分が相手に合わせてアジャストするのではなく、とにかく自分のアジャストをしていけば相手は常に同じことをやってくれる。それは女性にとってもすごく進化をする機会でもあるんです。そういう龍一くんの成長の仕方がすごくペアに向いていたんじゃないかなと思います。

――それは性格的なものもあるのでしょうか。

高橋:性格的なものだと思います。シングルの頃から、みんながトリプルアクセルをやっている中で結構長い間ダブルアクセルで固くいくという感じでやっていて。トリプルアクセルもできるんですけど、試合で入れない判断をしたりするタイプのスケーターだったんです。その代わり、ミスが少なくてしっかりまとめるタイプ。だから本人も、私自身も気づけていなかったけれど、じつはいちばんペアに向いている人材だったんじゃないかなと思いました。

体格の変化もすごいですよね。龍一くんがあんなになるなんて、当時は思わなかったです。一緒に組んだ時は口癖のように「太りたくない」って言っていたんですよ。太るのは絶対嫌だって。食べるのが得意なスケーターではなかったけれど、今はものすごく食べるじゃないですか。このペアのためにすべてを捧げようと、自分の芯にあるものさえも変える覚悟をもっているのがすごく成長だなと感じました。

大技を成功させたときは鳥肌が立つほどうれしい

――この五輪で魅力が広まったペアを普及するにはなにが必要でしょうか。

高橋:やはり環境です。やりたいと思ったときにできる場所が必要です。あとは機会ですね。やりたくてもだれに言ったらいいかわからないと思うので、こちら側から興味がある人を集める機会が必要かなと思います。

――最後に、成美さんからペアに興味がある方々にメッセージを。

高橋:リンクは広くて、1人で立ったときは不安を感じていましたが、ペアになって2人でリンクに立つとすごく力が出るようになりました。

緊張する場面でも一緒に練習してきた仲間と滑るのはワクワクするし、大技を成功させたときには鳥肌が立つほどうれしい。なによりお客さんを「うわー! なにが起こったの?」とサプライズさせられることがすごく楽しくて。それは2人だからできることだから、そういう楽しみがペアにはあるよと教えてあげたいです。