記事のポイント

昨今のマーケティング界では、ブランドがカルチャーの一部となり、音楽を活用して親和性を高めることが重要視されている。

TikTokの普及によって広告主は音楽により注目し、オリジナルミュージックやアーティスト提携、懐かしのサウンドなど、さまざまな形態で音楽を活用している。

ただし、ブランドがアーティストと提携する際には、単に音楽の力だけでなく、アーティストの人格やイメージも考慮する必要がある。


マーケティング界においてブランド勢はいま、カルチャー周辺の部外者ではなく、カルチャーの真正な一部になろうと努めている。

そうしたなか、マースリグレー(Mars Wrigley)の5ガム(5 Gum)やゼネラルミルズ(General Mills)といったブランドは、ミュージックマーケティングへの投資がその一助になることを期待している。

「マーケティング的観点から言うと、適切かつ戦略的に大いに活用すれば、音楽はブランドにとって巨大な触媒になる」と、LAのエージェンシーであるマザー(Mother)のストラテジー部門トップ、モーリシオ・バレーダ氏は話す。「重要な親和性を生む、つまり、そのブランドのコアオーディエンスや繋がりを持ちたい集団およびコミュニティとの関係性を築くための、強力な一助になりうる」。

音楽業界を取り込む



2023年10月、5ガムはラッパーのJ.I.D氏を起用し、わずか5人のファンだけが聞ける新曲を発売させた。この奇抜な策がどの程度の効果を生んだのかについては、同キャンペーンの結果がまだまとまめられていないため、定かでない。また、契約に関わる金銭的情報も公開されなかった。ただし、これが2022年、同ブランドによるラッパー、ヤングブラッド氏とのコラボに基づいた展開であることは間違いない。

「そのコラボは55億回のメディアインプレッションを叩き出し、Webトラフィック、ソーシャルエンゲージメント、シェア・オブ・ボイス(SOV)で顕著な伸びを見せた」と、5ガムのブランドマネージャーであるスコット・ポール氏は話す。それ以上の具体的な数字は明かさなかったが、ポール氏いわく、2024年度もこの試みは続けるという。同ブランドのミュージックマーケティング費については、同氏が詳細を明かさなかったため、定かでない。

一方、ゼネラルミルズはオリジナル曲を作成し、リミックスした「モンスター・マッシュ(Monster Mash)」をハロウィーンに先駆けてシリアル商品のカーメラ・クリーパー(Carmella Creeper)の販促に活用した。

また、ラクトースフリーの乳製品メーカーであるラクテイド(Lactaid)はシンガーソングライターのケリス氏と提携し、同氏のオリジナル曲「ミルクシェイク(Milkshake)」のリミックスを販促に利用した。さらに、もっとも冒険的と言えるのが大胆な行動に出たコカ・コーラ(Coca-Cola)であり、同社はオリジナル曲を作成する自社音楽プラットフォーム、コーク・スタジオ(Coke Studios)を設立までした。

TikTokがマーケターに火を付けた



エージェンシー幹部勢によれば、広告主らは混雑を極めるデジタル市場に割って入るための一手として、音楽にますます目を向けており、その利用法にはオリジナルミュージックやアーティストとの提携、懐かしのサウンドの広告への起用など、さまざまな形態があるという。ビデオゲームや映画といった、ほかのエンターテインメント形式と異なり、「音楽はファッションなど、ほかのカルチャー分野への入り口にもなりうる」と、NYのエージェンシーであるBBDOのエグゼクティブ・ディレクター、アレックス・ブッカー氏は指摘する。

「我々の見方では、音楽はカルチャーのいわば色調を決める重要な役割を担うものであり、その主な理由は、音楽は昔も今も音楽だけに留まらない、という事実にある」とブッカー氏はeメールで説明する。「我々が思うに、だからこそブランド勢はこぞって音楽との同化を図っている。ようするに『消費者のみんな、僕/私たちもみんなと同じものが大好きなんだ』と」。

マーケターが音楽界のセレブを活用するのも、独自の曲を制作するのも、目新しいことではない。だがいまや、特定のサウンドを一気にバズらせるTikTokの能力が音楽業界自体を一変させたのであり、同時に、マーケターのサウンドに対する関心にも火を点けたのだと、エージェンシー幹部勢は指摘する。ゲーミング企業も同じくこのトレンドに追従し、ミュージシャンと提携して、オリジナル曲やコンテンツの制作に乗り出している。

音楽のみを利用するのではなく、アーティストの人格も考慮すべき



ブランド勢が2023年度、ミュージックマーケティングにどの程度費やすのかは定かでない。ただし、広告主勢が6〜7桁の大金をペンディングライセンス、パブリケーション、リクリエーションおよびコミッション費として、ブランドおよびエージェンシーと音楽業界における決定権者との関係性を円滑にする音楽関連会社に支払うことは、十分にありうる。

ただし、その際、ブランド勢には適切なアーティストとの提携が必須になる。「ブランド勢は時に、アーティストの力を借りれば、あるいは買えば済む話、そこに乗っかるだけで自分は何もしなくていい、と考えてしまう」と、マザーのバレーダ氏は指摘する。

米黒人経営のマーケティングエージェンシーであるニムバス(NIMBUS)のCEOおよびエグゼクティブクリエイティブディレクターのステイシー・ウェイド氏もバレーダ氏と同じ見方をし、ミュージックマーケティングにおいては、鑑賞/評価と占有は紙一重だと話す。「ブランド側は単に音楽を、そのよさを認めて利用するのではない。その音楽に付随する人格やアーティストを利用することになる点を忘れてはならない」。

インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)によれば、音楽ストリーミングはZ世代にもっとも人気のメディアアクティビティであり、それを踏まえると、マーケティングにおける音楽の活用は今後もトレンドであり続けるだろうと、幹部勢は話す。「このトレンドはこの先も続くことになる。アーティストを現場に連れて来ること、それもこのところ人気を博しており、ひとつのトレンドとして継続されるはずだ」とウェイド氏は指摘する。

[原文:As brands look to become part of culture, music marketing becomes a mainstay]

Kimeko McCoy(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)