7月に行なわれたE-1選手権の韓国戦でゴールを決め、相馬(写真右)と喜びを分かち合う佐々木(写真左)。森保ジャパンで経験を重ね、成長した選手のひとりだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 ワールドカップが始まった。

 世界は「ウィズ・コロナ」にベクトルを向け、スタンドには今までのワールドカップと同じように人々が集まり、自由に声を出し、叫び、歌を歌っている。それは2021年の欧州選手権あたりから続いている「サッカーの日常」だ。

 Jリーグはようやく今季途中から、一部エリアで「声出し」が許されるようになった。サンフレッチェ広島が2020年開幕戦以来の「声出し応援」を体験したのは7月6日、日産スタジアムでのこと。まだ完全に以前のような音量に戻ったわけではなかったが試合後、佐々木翔はここ最近では見たことのない上気した表情を見せた。

「(横浜に)負けたことは、本当に悔しい。ただ、この雰囲気は本当に素晴らしかった。Jリーグが帰ってきたと実感しました。正直、感動しましたね。試合前に(サポーターのもとに)行った時は正直、ちょっとウルッときました。それほど、感情的になってしまうような感じでしたね。

 久しぶりに自分のチャントを聞いたんですけど、あれも久しぶりでしたね。チャントを聞くと、さらに気持ちが入る。だからこそ、今日の敗戦は悔しいんです」
 
 プロフェッショナルとしての佐々木の素晴らしさは、こういう言葉がスッと出てくることだ。彼はプロの本質を分かっている。誰のために闘うべきか、そこをしっかりと理解して闘える。だからこそ、彼はキャプテンに相応しい。
 
 もちろん、サッカー選手としての力は高いレベルで持っている。ほぼ負けることのない1対1。177センチという身長とは思えないほど、高さにも強い。「自分はスピードのあるほうではない」とかつて語ったことがあるが、とてもそうは思えない速さ。判断を下す速さが尋常ではないからだ。身体的な能力の高さだけでなくクレバーな守備でゴール前を締める佐々木の存在ほど、頼もしいものはない。

 特にここ最近のシーズンでは、彼の攻撃面での機能性だ。

 特にミヒャエル・スキッベ監督が就任した今季は前線からのプレッシャーとポゼッションのバランスがよく、多くの試合で広島が敵陣に押しこむシーンが増えた。佐々木のポジションも必然的に高くなり、ボールをアタッキングサードまで運ぶ機会も多くなった。

 ストッパーの攻撃参加といえば、広島ではかつて槙野智章(神戸)や森脇良太(愛媛)がいたし、塩谷司もそれが得意な選手だ。だが槙野や森脇はウイングのようにワイドに開いてチャンスをつくったり、塩谷はゴール前まで侵入してポジションをとることがスタイル。いずれも自らゴールを狙うことを好んでいたが、佐々木は違う。むしろ振る舞いはゲームメーカー。足もとにクサビを入れるだけでなくスルーパスを供給したり、コンビネーションの起点となってワンツーや3人目の動きを誘発したり。佐々木のパス能力によって広島の左サイドは活性化され、決定的なシーンを創り出している。
「いやいや、みんな頑張ってくれていますから」と佐々木は笑う。

「以前はシステマチックな部分がありましたが、今のほうが自由度が高いんですよね。チーム全体でひとつのスペースをとろうという志向があるなかで、各々が状況を見ながらプレーをチョイスしている。ボールを持ってる人がいろんな判断を下して選択して、それを見ていた違う選手がまた判断を下す。(そういう連鎖があるからこそ)やっていても面白い」

 相手を押しこんだ状況で決められたことをやるのではなく、選択権はボールを持っている選手にある。もちろん、コンセプトはあるし、やるべきこともあるが、その幅が広い。「なるほど、そこに動いてくれたんだ。だったら自分は」と、常に選択肢を複数持ちながら、自在にアイディアを絡ませていく。サッカーの本質的な楽しさを佐々木は満喫しながら、今季は闘っていた。