学生の窓口編集部

写真拡大

春になると見かける機会が増える「昆虫」。昆虫は白黒しか見えないなんて話を聞いたことがあるでしょうが、カラーで見えているムシが多いのは知っていますか?

多くの昆虫はヒトには見えない紫外線をとらえることができ、ハエはこれに加えて青や緑、チョウはさらに赤も見えることが分かりました。ただし紫が見えるのはメスだけ、オスは「明るさ」の範囲が広いなど、種や性別によって目の構造が変わるフクザツな生き物だったのです。

■本当は黒いモンシロチョウ?

ものの色は反射する光で決まり、これを受け止める目の構造によって見える色が決まります。ヒトの場合、赤(R)、緑(G)、青(B)の光を識別できることから三原色と表現され、これらの組み合わせですべての色を作り出すことができます。パソコンやテレビでRGBという単語が使われるのもこのためで、

 ・黄色 = 赤 + 緑

 ・水色 = 赤 + 緑

 ・白(透明) = 赤、緑、青(すべて)

これに強弱も加わり、さまざまな色合いを出すことができるのです。

昆虫は何色が見えるのでしょうか? 何色が見える? と聞くわけにもいかず、目の構造を調べるしかありませんが、最近の研究では多くの色が見えていることがわかり、

 ・ハエ … 紫外線、緑、青

 ・チョウ … 紫外線、赤、暗い赤、黄緑、青

を受け止める細胞があることがわかりました。ハエは赤が見えなくてもしかたがありませんが、チョウの色覚はヒトが見える3原色に近い、と表現できますので、においだけを頼りに花を探す的な話は蝶を見くびり過ぎといえます。

逆に、ヒトは紫外線をみることができませんので、昆虫の見る世界はもっと多彩といえます。たとえば紫外線だけを通すレンズを使うと、

 ・つつじの花 … 中央付近に黒い点が現れる

 ・菜の花 … 中心部分が黒くなる

 ・モンシロチョウ … オスの羽は、ほぼ真っ黒

と、黒く写る部分は紫外線を吸収しているためで、昆虫はこれらを識別して生活しているのです。

■視力0.02で空を飛ぶ

昆虫の目はオス/メスで違うこともわかりました。目の構造が違うため、見える色、明るさの範囲が違っていたのです。

たとえばモンシロチョウは紫が見えるのはメスだけ、モンキチョウのオスは1種類の赤しか見えないのに対しメスは3種類あることから、メスのほうがよりカラフルな映像を楽しめる構造になっています。

オスの目にも優れている点もあり、チョウの目は小さな個眼(こがん)が集まった複眼(ふくがん)ですが、均一の個眼を持つメスに対してオスには大小の個眼があるため、表面がデコボコになっています。これは「明るさ」の幅を広げるために、わざと不揃いになったと考えられています。

アゲハチョウは6種類の色受容細胞を持っているため、さらに多くの色が識別できますが、視力は弱く、人間の検査にあわせると0.02程度しかない、というデータもあります。個眼が密集した複眼がアダとなり、見えるのはぼんやりとした世界のみ……。かなり近づかないと「もの」の形がはっきりとわからないようです。

複眼ならではの視野の広さ、紫外線を含む4原色が見えると聞くとうらやましい気がしましたが、視力0.02で出歩くには「慣れ」が必要ですね、電柱にぶつからないよう注意してほしいものです。

■まとめ

 ・モンシロチョウは、紫外線を含めて6色を認識できる

 ・メスは見える色が多く、オスは明るさの範囲が広いなど、性別によって差がある

 ・アゲハチョウの視力は人間の0.02相当

(関口 寿/ガリレオワークス)