オンロードユースに特化したスポーツグレードたちを試す

 元々は悪路走破性に特化したクルマだったSUVが、いまや世のなかのスタンダードになってきた。セダンやクーペといった低重心のクルマと比べてオンロードの走りでは物理的に不利となるが、実際の使用シーンのほとんどはオンロードである。

 近年はタイヤ性能やシャシーの仕上がりが向上し、オンロードでもそれなりの走りを見せてくれるのは間違いない。しかし、それでもどこか物足りないのも事実である。

 そこを打破してくれそうなのが、各社が用意しているスポーツ性を打ち出したモデルたちだ。エアロパーツの装着によりプレミアム性が高まることはもちろん、よりオンロード指向に仕立て直されたものが多い。走りに対する懸念がどこまで払拭されているか、なかなか興味深い。

 そこで、今回は各社が送り出すスポーツモデルを箱根のワインディングに連れ出して徹底的に走り込んでみる。基準車との走りの違いはどこにあるのか? さらにライバル同士を比較した場合、それぞれのスポーツ性にどんな違いがあるのかもじっくり見てみたい。

装備内容とは裏腹に落ち着きある走りを披露

 ニスモとオーテック・スポーツスペックという2グレードを準備しているだけでも驚きだが、じつはタフギアを全面に押し出してアウトドアに振ったROCK CREEKという特別仕様車まで準備しているエクストレイル。ROCK CREEKの走りは標準車と変わらないので今回は省くが、いずれにしても、あらゆる方向にまったく違う世界観を展開するエクストレイルは、買うとなったら選ぶのが楽しいだろう。

 そのなかでも、オンロードでのスポーツ性にもっとも特化したと思えたのはやはりニスモだ。基準車に対してフロントを6%、リヤを22%引き上げたスプリングレートに加え、KYB製のスウイングバルブ付きショックアブソーバーに改めているところがポイント。

 これは極微低速作動域(ピストン速度2mm/s以下)の減衰力を独立してコントロールできるもので、ダンパーの動き出しから減衰力を発生することで早めに動きを吸収。一方でメインバルブが受け持つハイスピード領域の減衰力を高める必要が減り、しなやかさを得られるという。

 結果として、乗り味は”ニスモ”という名前から想像するものとは違う、落ち着きある振る舞いだ。タウンスピードでもバタつくことはなく、その走りはフラット。タイトで硬質なセミバケットシートに座っているにも関わらずだ。

 ワインディングでは無駄な動きが減り、落ち着きあるコーナーリングを展開。基準車に対してフロントをやや引き締め、リヤは逆に緩めた設定というショックのおかげもあって、対角ロールは減り、ハイスピードコーナリングでも落ち着いていたのが印象的だ。

オンロードで使うならこの2モデルがオススメ

 オーテックはその足まわりを基本としながら、タイヤをプライマシー4(ニスモはアリア用パイロットスポーツEV)に変更。リヤにYAMAHAのパフォーマンスダンパーをオゴっている。

 走ればタウンスピードにおけるしなやかさはさらに向上した印象で、フロアの微振動も収まり大人な雰囲気に仕上がっている。エアロによる印象の違い通りのイメージだ。ワインディングでは切り返しのシーンなどでニスモに対してやや応答が遅れるようなところがあるが、それでも基準車よりシャキッとしていて扱いやすい。

 そもそも、エクストレイルは3気筒エンジンながらも雑味なくスムースに吹き上がる可変圧縮ター
ボエンジンのe-POWERや、4つのタイヤのグリップをうまく引き出して走るe-4ORCEという四駆システムが見どころの1台。それを存分にオンロードで引き出しやすくなったところが、この2台の立ち位置のように感じる。悪路重視なら基準車も悪くはないが、オンロードで使うならニスモかオーテックがおすすめと言えるだろう。

スポーティモデルは走り好き以外にもオススメ

マイナーチェンジでパワーも安定感も大満足

 マイナーチェンジを繰り返し、初期型にあった質感の粗さを削ぎ落としてきたカローラクロス。その仕上がりはタウンスピードにおけるしなやかさに特化しており、結果としてワインディングではやや物足りない方向性になった。

 そこで登場してきたのがGR SPORTだ。足まわりは車高を10mmダウン。ベースに対してフロントは12%、リヤは16%バネレートをアップした。また、リバウンドスプリング付きショックを装着してロアアームブッシュを高硬度化。リヤバンパーリインフォースも追加。それだけで飽き足らず、2リッターハイブリッドと6速シーケンシャルシフトマチックまでオゴっている。

 箱根の急勾配でも動力性能に不満はなく、トルクフルでグイグイと登っていくし、パドルを弾けばシフトダウンもなかなかダイレクト。コーナーでは無駄な動きがなく狙ったラインをトレース。足まわりは無駄な動きが減り、挙動はどこまでも安定しているが乗り味はハード過ぎない。低重心化がワインディングでの安心感にかなり繋がっている。また、パワステをチューニングし直しており、切り始めから切り込み応答まで、骨太な反力を得られるところも嬉しいところだ。

 こうなるとコーナーではペースが上がり身体が振られそうなものだが、程よくサポート性が引き上げられたセミバケットシートによって身体がブレないところも絶妙な仕上がり。GR SPORTの方程式通りに仕立てられたことがうかがえる仕上がりだ。

シャシー性能は向上したがパワトレも改良してほしかった

 マイナーチェンジで追加されたRSは、4WDが設定されたことがポイントだと感じる。もともと存在していた標準の4WDモデルでは、シャシーの動きの大きさが気になっていた。そこがどう変化しているのかが見どころだ。

 サスペンションではベースに対して15mmダウンのスプリングを採用。ただしバネレートはアップせず、バンプラバーを短くしてストロークを確保している。ショックアブソーバーも特性を見直し、やや引き締められた。タイヤは標準車の場合、FFかブリヂストン・アレンザ、4WDがミシュラン・プライマシー4だったが、RSでは全車プライマシー4に変更。これらに合わせてパワステ特性も見直している。

 乗ってみれば手応えが豊かになったステアリングと、落ち着きある振る舞いを感じる足まわりが心地いい。乗り味はフラットで、しなやかな身のこなしも感じられ、かなり大人な仕上がりのように思える。荒れた路面にも上手く追従し、コーナリングでも見事に入力を吸収。対角に動き過ぎる印象がなくなったところが好感触だ。

 短くなったバンプラバーはやや硬質になっているのだが、普通の走りではそうそうタッチすることもないから許せる範囲内だろう。シートのホールド性や滑りにくさも高まり、ワインディングでもドライビングに没頭できた。

 残念だったのは動力性能にメスが入れられなかったことだ。箱根の登り区間ではバッテリー残量が底をつくと一気に遅くなる。発電量の向上を期待したい。

変更箇所が多いものの要改善ポイントもあり

 ヤリスクロスのGR SPORTは変更箇所が多岐に渡る。10mmダウンのサスに始まり、タイヤをスポーツタイヤのファルケンFK510 SUVに変更。これに合わせてブッシュ、ボディ補強も実施。また、モーターの過渡特性を最適化してアクセルレスポンスも向上。ドライブシャフトのねじり剛性もアップさせ、ダイレクトさを追求したという。

 走ればピッチやロールが基準車に対して見事に収められた感覚があり、ブレーキやアクセルで動き過ぎないサジ加減が絶妙だ。コーナーリング時のボディとの一体感もかなり高まっているが、一方で乗り心地は突き上げも少なく、家族からも不満が出なさそうなところはさすがだ。

 パワーモードに入れて走ってみたが、ブレーキを踏んだときのスロットルレスポンス遅れがやはり気になる。トルクが立ち上がってからの俊敏さはあるものの、少し惜しいという感覚が否めない。

 振動も大きく、それがフロアやステアリングに伝わってきてしまうのはスポーツモデルだから仕方ないのかもしれない。

精悍な見た目と上質な乗り味で万人にオススメできる仕上がり

 今回はおもに走りの面にスポットを当ててリポートしたが、写真を見ればわかるように、各社がベースモデルとは一味違うエアロパーツやタイヤ&ホイールを装着し、ローダウンも施されてプレミアム性が向上している。またインテリアも作り込まれ、見た目で楽しめるところもスポーティモデルの魅力だ。

 その上で、各車がベースモデルとは確実に違う走りの質感を持っていた。クルマを購入する際に乗り比べをするのはなかなか難しいだろうが、オンロード重視で使うのであれば間違いなくスポーティモデルがオススメだと断言したい。

 スポーティモデルというと目を三角にして走る人向けで万人には関係ないと思う人もいるかもしれないが、それは間違いだ。スポーティモデルでも快適性を損なうようなものはなく、一般ユースで不満の出ない乗り心地は、どれも担保した上で販売されている。むしろ上質さ際立つものが多いから、ぜひショッピングリストに入れてみてはいかがだろうか?

※本記事は雑誌「CARトップ2026年2月号」の記事を再構成して掲載しています