専門家も「相場は危険水域に入った」と警告…AIバブル「破裂のタイミング」が見えてきた

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強気相場は陶酔の中で消えていく

日経平均株価がついに一時7万円の大台に乗った。暴落した数日後に、過去最高値を更新する状況に困惑する投資家も多いはずだ。

いったい、日本の株式市場に何が起きているのか。第一ライフ資産運用経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏が解説する。

「今の株式相場を牽引しているのが、生成AIブームに端を発する半導体関連銘柄の歴史的な株価上昇です。半導体検査装置や半導体メモリーなどの企業に象徴される半導体及びAIデータセンター関連の値がさ株が、日経平均株価を強烈に押し上げています。

総合商社や重工業などの重厚長大産業の株価が下落傾向にある中でも、半導体やAI関連銘柄への資金流入が全体を支えており、日経平均そのものが一種の『AIインデックス』としての性質を帯びていると分析できます」

米国とイラン間の戦闘終結の暫定合意で、ホルムズ海峡が開放される日も近いとの見方から原油価格が下落し、世界的に株価が上昇。マーケットは多幸感に溢れている。

ただし、目先の株式市場には注意が必要だと、識者は口を揃える。マーケットアナリストで、ケイ・アセット代表の平野憲一氏がこう話す。

「株の相場には大きく4つの段階があります。1つ目は『金融相場』で、金融緩和で株価が上がる局面です。これはアベノミクス以降、日銀が利上げするまでが当てはまります。次が『業績相場』で、企業の業績が改善することで株価が上がります。企業業績がよく、株価も上がり、投資家も儲かる。みんなハッピーになる相場です。果実で言えば、熟しているときが一番おいしい。しかし、その果実は木から落ちる直前でもあります」

現在の日本株はこの段階にあると、平野氏は指摘する。日銀は6月の金融政策決定会合で、政策金利を1%に上げた。今後も半年に1回のペースで利上げを行うとの見方も根強い。となると、次に相場に訪れるのは、どういった局面だろうか。

「3番目は、景気の過熱を抑えるために金融引き締めが行われ、金利上昇が株価の重荷になっていく『逆金融相場』です。そして、景気が後退し、企業業績が悪化して株価が大きく下がる『逆業績相場』を迎えます。そして再び、金融緩和が行われる『金融相場』になるというサイクルで、相場の循環を捉えることができます。

現在は業績相場に入って3年目と考えられます。次の逆金融相場が近づいている可能性もある。調整局面に入るのは今年かもしれませんし、来年かもしれません。正確な時期はわかりませんが、近づいていることは確かです」

しかし、株式市場には楽観的な雰囲気が漂う。大和証券は顧客向けのレポートで、'40年に日経平均株価が20万円、'45年に30万円になると予想した。19年後のこととはいえ、現状の4倍超とは大胆な予測である。

このような言説が流布するようなときこそ注意が必要だと警告するのが、エコノミストでテラ・ネクサスCEOの田代秀敏氏だ。

「米国の伝説的な投資家に、ジョン・テンプルトンという人物がいます。彼はこう言った。『強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく』と。いまの相場はすでに『楽観』の中で成熟しているように見えます。やがて『陶酔』に近づいていけば、そこで強気相場は消えていくのです」

バブルはいつだって同じ結末を辿る

さらに田代氏は、AIが牽引する現在の相場に注意を喚起する。

「AI半導体バブルについても、私は非常に警戒しています。この問題の核心は、電力です。AIで膨大な情報を処理するには巨大なデータセンターが必要で、それを動かすには莫大な電力が必要とされます。米国ではAIのために大量のデータセンターを作ろうとしていますが、発電能力や送電網が十分に追いついていない。

電力インフラがAI活用の制約になり始めているのです。さらに、データセンターの建設に対して、地元住民の反対運動が起きているのも見逃せません。こうした状況を考えれば、AIの普及は投資家が期待しているほどは進まない可能性があります。

普段は株式とまったく関係のない人が、一攫千金を夢見て株式投資の話をし始めたら、それは『陶酔』の段階の入り口です。今回だけはバブルではない、ということはありえません。バブルはいつだって同じ結末を辿るのです」

歴史的に見ても急ピッチで上昇してきた日経平均株価が調整局面を迎えるとすれば、まずは夏から秋にかけてがポイントになりそうだ。経済評論家の鈴木貴博氏が言う。

「イーロン・マスク氏が設立し、宇宙やAI事業を手がけるスペースXがナスダックに新規上場しましたが、ナスダックは7月にも主要な株式指数に同社を組み込む可能性があります。そうなると、この指数に連動するインデックスファンドは、スペースXの株式を購入しなければいけません。そのためには、他の株を売って資産を振り分ける必要がある。場合によっては、指数入りをきっかけに、市場全体が下がるかもしれません。

さらに10月、11月には巨大AI企業のオープンAIやアンソロピックの新規上場が続く可能性もあります。ここでAIバブルが本格化し、下手するとそれが弾ける危険性が出てくるかもしれません。米国株が崩れると、日本株も影響を免れえません。そういう意味でも相場は危険水域に入ってきたと思います」

そして11月には米国で中間選挙があり、これも相場の波乱要因となる。国際金融評論家で、RPテック代表の倉都康行氏がこう指摘する。

「このままでは、トランプ大統領の共和党は、下院のみならず上院でも苦戦する可能性があります。仮に上下院で民主党が過半数を握るような展開になれば、トランプ政権は早い段階でレームダック化するかもしれません。そうなるとトランプ氏の政策で株価上昇の恩恵を受ける『トランプ・トレード』に賭けてきた投資家の期待は萎むでしょう。

トランプ氏の予測不能な言動によって市場が振り回される場面が減るという意味ではプラスの面もあります。しかし、トランプ政権は産業支援や補助金政策、減税など株式市場にとって追い風となる施策も行ってきました。こうした政策が続けられず、相場の勢いが弱まるような展開もあり得ると思います」

ところが、ややこしいことに、AIバブルが一旦破裂したら、そこが株の買い場になるというのだ。その背景には日本が抱える構造的な問題がある。円安とインフレだ。

「高市早苗政権は、これだけ財政が悪化しているにもかかわらず、積極財政を進めようとしています。電気・ガス代の支援とガソリン補助金の継続などのために3兆円の補正予算を積み、さらに食料品の消費税を下げることを検討している。財政拡張が続けば、市場は日本の財政に猜疑心を抱き、円安が進みます。

円安が進めば、輸入インフレが起きます。海外から入ってくる食料やエネルギー、原材料の価格が上がるからです。一方で株価インフレも引き起こします。外国人投資家から見れば、円安によって日本株が安く買えます。その結果、日経平均株価は上がる。つまり円安は、庶民の生活を苦しめる輸入インフレと、見かけ上の株価上昇を並行して起こすのです」(前出・田代氏)

【後編を読む】AIバブル「一旦破裂」そして買い場がやってくる…そのとき選ぶべき「具体的な銘柄」

「週刊現代」2026年7月6日号より

【後編を読む】AIバブル「一旦破裂」そして買い場がやってくる…そのとき選ぶべき「具体的な銘柄」