「犯罪に手を染めているそぶりはなかった」 三菱UFJ銀行元行員・今村由香理容疑者の義父が明かす素顔

世間の信頼も信用もあったものではない。三菱UFJ銀行の女性行員が、東京都内2支店の貸金庫から4年半にわたって現金や貴金属を盗み続けていたのだ。被害は顧客約70人分、時価で総額十数億円に上る。
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銀行ビジネスの根幹を揺るがす問題の発覚は昨年10月末だった。以来、2カ月半。ついに、警視庁が今村由香理容疑者(46)を窃盗容疑で逮捕した。
「貸金庫の契約者から被害届の提出を受け、捜査2課が捜査を行い、 1月14日の逮捕にこぎ着けました」
とは社会部記者。
「発覚翌月に懲戒解雇となった今村は、銀行の聴き取り調査を受けつつ都内の自宅で家族と生活を送っていた。東証スタンダード上場のメーカーに勤める夫と、夫の父親の3人暮らしです。80歳前後の義父はみずほ銀行に勤めた後、都内の不動産管理会社でリタイア。近頃は体調が思わしくないこともあり、今村は自宅を離れられなかったようです」

長らく地道に勤務
今村容疑者は埼玉県出身。都内の私立短大を卒業し、
「1999年4月の入行後は主に、支店で窓口業務にあたる営業課で勤務してきました。長らく地道に勤務したことが評価され、支店で営業課長などを務める傍ら、貸金庫業務もほぼ一人で任されるようになっていたのです」
だがふたを開けてみれば、2020年4月から昨年10月までのあいだに、練馬と玉川の2支店で、銀行への信頼を木っ端みじんに粉砕させる行為に及んでいた。
“窃盗メモ”
今村容疑者は貸金庫の鍵の管理を任され、無断で解錠できる立場にあった。捜査関係者によれば、
「現金を盗んだ貸金庫の顧客が来店する際は別の貸金庫の現金を補填しておく。こうした手口で被害に気付かれないようにしてたんです。貴金属やインゴットなどの品物を盗んだ場合には、売却するのではなく質屋に質入れし、後日、受け出そうともしていた」
犯行に至った背景は、自身の懐事情だ。
「FX取引で出した損失を穴埋めするためです。加えて、現金をFXなどの投資に流用していたとも。彼女は“獲物”の動きを詳細なメモに残し、間違いが起こらぬよう注意を払っていました。それは過去の経験が少なからず影響していると考えられます」
その経験とは、「小規模個人再生」。自己破産せずに借金を大幅に減らすことができる債務整理の方法で、
「住宅ローンを除く借金総額が5000万円を超えない個人債務者が対象。継続的な収入の見込みがあれば、返済計画を立て、借金減額が認められる。彼女はこの小規模個人再生を13年9月から14年1月にかけて手続きし、東京地裁から認可されていました」
つまり容疑者は、貸金庫の窃盗に手を染め始めたとされる20年4月の7年ほど前、借金漬けの状態に陥っていたのである。
「当時の借金もFXで作ったものとみられます。競馬でも、との情報もある。ともあれ、小規模個人再生で彼女は“身軽”になったはずでした。しかしまたFXで失敗し、貸金庫に手を出したわけです。“窃盗メモ”を作って損失穴埋めに奔走しながら通常勤務を続けた。挙げ句、銀行からも告発されるに至った。並みの神経では耐え切れないと思うんですけどね」
「そんなそぶりはなかった」
FX地獄に窃盗工作。今村容疑者はのっぴきならない状況にあったが、
「これまで、そんなそぶりはまったく感じられませんでした」
と、義理の父親が語る。
「なので申し訳ありませんが、息子の妻がやってしまった行為について詳しいことは分からないのです。私にとって彼女は、銀行に勤めている、ごくふつうの嫁でした。それと、二人は離婚などしていません。少なくとも、私はそのような話は聞いていない」
手が後ろに回り、年老いた義父の信用も失うことになった。
「週刊新潮」2025年1月23日号 掲載