まるで遺跡？ 金融危機で廃墟と化したスペイン各地のゴーストタウンの現在
1/15スペインのブニエルにあるこの広大な住宅開発地は、建設会社が倒産を宣言した2008年夏に放棄された。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
2/15スペインのブニエルにあるこの開発地では住宅1400戸が建設予定だったが、倒産前に建設中だったのは312戸だった。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
3/15写真家のマルケル・レドンドは、放棄された住宅開発地をドローンを使って撮影した。スペインのブニエルにあるこの場所もそのひとつ。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
4/15スペインのコスタブランカにあるこの地中海風の別荘は、スペインの不動産バブルがはじけた2008年に放棄された住宅開発地のひとつだ。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
5/15スペインのプルピにある「ゴールデン・サン・ビーチ・アンド・ゴルフ・リゾート」は2010年に放棄された。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
6/15スペインのブニエルにある開発地「シウダード・ハルディン・ソト・レアル」は2008年に放棄された。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
7/15スペインのプルピにある「ゴールデン・サン・ビーチ・アンド・ゴルフ・リゾート」は、海の眺望と、庭園やプール、2つのゴルフコースを売りにしていた。2010年以来まったく手が入れられていない。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
8/15スペインのテルシアにある開発地「ラ・テルシア・レアル」は、スペインの昔の村から発想を得たものだ。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
9/15「ラ・テルシア・レアル」は、裕福な外国人向けのゲート付き住宅地となるはずだったが、そのゲートが開かれることはなかった。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
10/15スペインのヴィジャマヨール・デ・カラトラヴァにあるこの開発地には、655戸の家と、乗馬スクール、ゴルフコース、ホテル、スパが建設される予定だった。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
11/15スペインのアラゴンにあるこの住宅開発地は、完成すれば、それまで人口3,000人だった町に、新たに9,000人が増えるはずだった。開発業者の倒産により2009年に放棄された。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
12/15スペインのヴィジャマヨール・デ・カラトラヴァにあるこの開発地は、スペインの住宅バブルがはじけた2008年に、開発業者によって放棄された。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
13/15スペインのモハカルにある「プラヤ・マセナス・ビーチ・アンド・ゴルフ・リゾート」には1,395戸の住宅が建設される予定だった。開発業者が撤退した2008年には、一部の住宅の建設が始まったばかりだった。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
14/15スペインのフォルトゥナにある「フォルトゥナ・ヒル・ゴルフ・リゾート」には、11,212人分の住宅が建設されたが、完成しなかった。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 
15/15スペインの「フォルトゥナ・ヒル・ゴルフ・リゾート」は、完成すればフォルトゥナの人口がほぼ2倍になるはずだった。PHOTOGRAPH BY MARKEL REDONDO 2008年に起きた世界金融危機で、最も大きな影響を受けた国のひとつがスペインである。数十年にわたる住宅建設ブームがほとんど一夜にして終わり、開発業者が次々と倒産。首都マドリードの郊外から地中海沿岸まで、未完の住宅建設プロジェクトが国中にあふれかえった。
それから10年後、スペインの経済と住宅市場は回復したものの、こうした開発地のゴーストタウンは手つかずのままだ。売却するにはあまりに採算が合わず、解体するには費用がかかりすぎる。国全体で、およそ340万戸の住宅が空き家の状態になっている。
その多くは現在、大手銀行が所有している。元の開発業者が債務不履行に陥ったときに差し押さえたのだ。
バスク在住の写真家マルケル・レドンド（Instagram:@markelredondo）は、住宅ブームが終わった直後の2010年に、こうした住宅開発地を初めて撮影した。これらの写真は『砂の城（Sand Castles）』という題名のシリーズ作品して発表されている。
その彼が最近、金融危機から10年後を記念して同じ場所を再訪し、『砂の城2（Sand Castles II）』を撮影した。ほとんどの開発地は柵で囲われているだけだ。価値のある物品は、銅線から連絡道路のマンホールまで、あらゆるものがずっと以前に盗み出されている。「注意して運転しないといけません。あちこちに穴があるので」とレドンドは語る。
今回の新シリーズでは、未完成の開発地を捉えるためにドローンが使用された。それらの衝撃的な空中写真はまるで、はるか以前に滅亡した文明の遺跡のように見えるときもある。
再びやってきた住宅ブームという矛盾
開発地の多くは街から少し離れた場所にあるため、その存在はほとんど忘れ去られている。無計画な不動産投機の結果を自国の人々に思い出させることも、レドンドの目的のひとつだ。
「スペインが犯した間違いは、人々の心にほとんど残っていません」と、レドンドは語る。「誰もがあの危機はもう終わり、経済は回復したかのように話しますが、こうした間違いを振り返ることで忘れないでいてほしいと思ったのです。それに、われわれはこうした場所をどうにかすべきです。環境によくありませんから」
矛盾する話だが、スペインにはいままた住宅建築ブームが到来しており、住宅の販売・購入数が08年以来最高レヴェルに達している。またほかのヨーロッパ諸国と同様に、スペインにも中東やアフリカから難民が流入している。レドンドには、その解決策は明白に思える。
「わたしたちは、（こうした放棄されたプロジェクトで）さまざまなことができます。あらゆる主要都市で、家賃を払えないという理由で多くの人が家から追い出されています。家を必要とする人がたくさんいるのです。こうした開発地をただ放置し崩壊するに任せるのではなく、もっと有用なことに使うべきだと思います」
