体罰や暴力を生み出す原因は「歪んだシステム」にあり

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顧問による体罰が原因で、大阪市立桜宮高校バスケ部のキャプテンが自殺してから1カ月が経過した。橋下徹大阪市長は、同校の体育系学科の入試を中止することを主張し続け、同市教育委員会がそれを認めた。




当然の措置である。同校の体罰は、個々の教師がどうこうという話ではない。生徒や保護者も含めた上での歪んだ「システム」に起因するものだ。教師は、試合に勝つためには体罰は当然だと言う。生徒もそれを受け入れ、保護者も教師の方針を支持する。さらに、教育委員会もそれを黙認する。これが、歪んだシステムの本体だ。




長年にわたって構築され、歪んできたシステムは、上っ面だけいじっても、すぐ元にもどる可能性がある。ならば、一時停止して、システムを作り直すのがよい。よって、橋本市長の主張には、非の打ち所がない。同校の体育系学科を目指していた受験生には気の毒だが、そもそも歪んだシステムの学校に入っても、ろくなことはない。




おそらく、似たような歪んだシステムは、全国の多くの学校で見られるものだと思われる。体罰を正当化してきた教師は、戦々恐々としていることであろう。これを機に、歪んだシステムを持つ学校や部活は、マスコミに騒がれる前に、システムの作り直しに取り組んだ方がよい。そのことが、バスケ部キャプテンの死を無駄なものにしないことにつながる。




ところで、学生の体罰が問題になる中、監督やコーチによる暴力やパワーハラスメントを、トップアスリートが集団で告発するという異常事態が、女子柔道界で発生している。2013年1月30日付の共同通信が「五輪合宿。柔道女子監督らが暴力 選手、JOCに告発」という記事で、その事実を明らかにしている。




「五輪に向けた強化合宿など」で代表監督やコーチによる暴力やパワハラがあったと、「ロンドン五輪の柔道に出場した日本代表を含む国内女子トップ選手15人」が日本オリンピック委員会(JOC)に告発する文書を連盟で提出していた。これは、トップレベルのスポーツにも歪んだシステムが稼働していることを示す事例となろう。




プロかアマチュアか、また体育系か文化系かを問わず、今後はこうした告発が続々となされる可能性がある。誰もが感づいているが、なんとなく容認しているというのは、歪んだシステムの特徴のひとつでもある。だが、歪んだシステムを容認し、放置していたら、暴力やパワハラの犠牲者は増え続ける。




重要なことは、そうした被害の責任は、関係者のみならず、容認した側にもあるということを理解することだと思う。そして、その容認した側には、「世間」も含まれると筆者は考えている。




(谷川 茂)