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横浜市の山中竹春市長のパワハラ疑惑で、弁護士らによる第三者調査委員会が7月30日、市長の言動を「重大なパワハラ」と認定する調査報告書を横浜市に提出し、市が公表しました。

報告書は、市長の言動を7項目に整理し、その7項目すべてについてパワハラに当たると認定しています。

具体的には、2023年6月に市長室で、報告に来た人事部長を怒鳴って書類を投げつけたこと、市長公舎で国際会議につき「誘致できなければ切腹だぞ」と発言したこと、幹部職員らを「ポンコツ」「人間のクズ」などと呼んだことなどです。

報告書は、市長が不適切な言動を日常的・継続的に行っていたとして「極めて深刻」だと指摘しています。

報道(共同通信、8月3日付など)によると、山中市長は報告書について重く受け止める一方、辞職せず続投する意欲をみせていますが、市議会では今後、総務委員会を開き、市長に対して質疑する方針のようです。

一般の会社組織であれば、調査によってパワハラの事実が認められた場合には何らかの処分を受けるのが通常です。市長職の場合でも同様に、処分や失職はあり得るのでしょうか?

●暴言は犯罪になるのか

暴言、というとまず考えられるのは侮辱罪(刑法231条)です。

侮辱罪には「公然と」という要件があります。役所の中の発言でも、外に広まる可能性があれば、「公然と」にあたる可能性は一応ありますが、たとえば他に誰もいない部屋で相手に向かって発言しただけだと、この要件を満たさず、侮辱罪は成立しない可能性が高いといえます。

●市長を懲戒処分できる人はいない

一般の市職員なら、パワハラは懲戒処分の対象になります(地方公務員法29条)。

ところが市長は、選挙で選ばれる特別職です。原則として地方公務員法が適用されないため(同法4条2項)、市長に対する懲戒処分は、制度として存在しないことになります。

報告書にも法的な強制力はありません。報告書でパワハラの事実が認定されても、それだけで市長の地位に強制的に影響を及ぼすことはありません。

●辞めさせる方法は2つある

仮にこの報告書で認定されている事実に基づき、市長を辞職させたいのであれば、以下のような手段が考えられます。

まず、不信任決議(地方自治法178条)です。

不信任決議は、議員の3分の2以上が出席し、その4分の3以上が同意すると可決されます(同条3項)。市長は10日以内に議会を解散でき(同条1項後段)、解散しなければ失職します(同条2項)。

また、議会を解散した場合でも、新しい議会で再度不信任(今度は過半数)となった場合にも失職します。

次に、市民が行うリコール(解職請求)です。

これは、有権者の署名を集めて請求し、住民投票で過半数の同意があれば市長は失職します(同法81条、83条)。横浜市の有権者はおよそ310万人(2026年6月1日現在。横浜市公式サイトより)で、リコールに必要な署名はおよそ49万人分です(地方自治法81条)。

リコールは就任から1年間は請求できません(同法84条)。市長の2期目は2025年8月30日に始まったので、8月末までは請求できません。

いずれもハードルは高く、報告書が出たから市長が辞める、という関係にはありません。

●では、報告書に意味はないのか

法的な強制力がないとしても、この報告書は、市長の責任を問う材料としては非常に強い材料だと思います。

そもそも市長の地位は、住民の信任に基づくものです。その信任が失われたかどうかを決めるのは、法的な制裁ではなく、政治の手続きである、というのが基本的な考え方です。

パワハラの訴えは「言った・言わない」で終わることが多いものです。今回は弁護士3人が聞き取りとアンケートで調べ、市長が否定していた言動まで事実と認定しました。市会や有権者が判断するうえで、この報告書は非常に有効といえます。

小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士