攻撃を受けるウクライナのガソリンスタンド/Clipped From Video

CNN警察官のミハイロ・ツィプリアコフ氏が同僚と助けに駆けつけた時、ガソリンスタンドはすでに炎上していた。2機目のドローン(無人機)が降下してくる音が聞こえ、ツィプリアコフ氏はとっさに地面に身を伏せた。

「閃光(せんこう)が見えたので、すぐ立ち上がった」とツィプリアコフ氏。「腕や脚、体にけがをしているのが分かった」

ツィプリアコフ氏はウクライナの民間インフラに対するロシアの最近の攻撃で被害に遭った数十人の1人だ。攻撃対象になっているのは、ガソリンスタンド。ウクライナ当局によると、6月と7月には200カ所以上が攻撃を受けた。1日およそ3カ所が攻撃されている計算になる。

ツィプリアコフ氏によると、攻撃の狙いは「威嚇して、恐怖とパニックを植え付けること」だという。「いま最も恐ろしいのはパニックだ。人はパニックに陥ると自制心を失ってしまうから」

攻撃はロシアの攻撃用ドローンが比較的到達しやすい、前線付近のガソリンスタンドに集中している。ただ、これに加え空爆や長距離ドローン、航続距離の短い小型攻撃用UAV(無人航空機)による被害も出ており、首都キーウ近郊が攻撃にさらされている状況だ。

ウクライナ国民はこうしたロシアの作戦について、ロシア国内のガソリンスタンドで起きている混乱をウクライナにも強いる試みとの見方を示す。ロシアではウクライナの相次ぐ製油所攻撃により、モスクワなどの大都市周辺で燃料を求める長蛇の列ができた。

民間施設に対するロシアの攻撃の拡大は、西側当局者がプーチン大統領によるエスカレーションの可能性に警鐘を鳴らしているタイミングで起きた。ロシアの産業インフラへのウクライナの長距離ドローン攻撃に報復するとの見方から、警戒が高まっている。

物流倉庫や製油所が炎上する映像は、戦争開始から4年が経過した今なおロシア政府が維持しようと躍起になる見せかけの安全を打ち砕いた。国連の報告によると、ここ数週間のロシアは過去最多となる弾道ミサイルを発射。6月は2022年以来、ウクライナの民間人の死者数が最も多い月となった。

CNNの分析の結果、ウクライナ各地のガソリンスタンドへの6〜7月の攻撃を捉えた動画少なくとも30本について、位置情報や内容が確認された。

ウクライナ南部ザポリージャのハルチェンコ市長代行によると、ザポリージャでは7月27日までの24日間でガソリンスタンドを狙った攻撃が54回あり、4人が死亡、29人が負傷したという。

「民間インフラや民間人を狙った意図的なテロ行為だ」「ロシアは軍事的な重要性はないが、大都市の日々の機能に不可欠な施設を狙い撃ちにしている」(ハルチェンコ氏)

ザポリージャはますますロシアドローンの射程内に入りつつある。ドローンの航続距離が前線の「キルゾーン(殺りく地帯)」からさらに延伸した結果、ロシアの攻撃機は人口密集地の住民を脅かしたり、殺害したりすることが可能になった。

ロシア軍がじりじり迫るドンバス地方のクラマトルスクや、ロシアとの国境に近いハルキウでも影響が深刻だ。

ウクライナでは民間航空便が利用できず、広大な領土が道路網や鉄道網で結ばれている。ガソリンスタンドは避難民や兵士、トラックの運転手が立ち寄って態勢を整え、英気を養う場所として大きな価値を持つ。

ウクライナ石油・ガス協会のスタロボイテンコ会長は、ロシアの攻撃は一般市民への「威嚇」を目的にしているとの見方を示す。「ガソリンスタンドは戦火から逃れる人たちの重要な避難拠点になった。その後、ロシアは意図的に停電を引き起こして電気と暖房を遮断し、冬の寒さの中で私たちを追い詰めようとした」

そんな中でも、ガソリンスタンドに設置された発電機は常に稼働していた。「ここは温かいお茶を飲み、車に給油して暖を取ることができる場所だった。赤ちゃん用のミルクを準備することさえできた」(スタロボイテンコ氏)

ロシア政府はインターネット上で攻撃の成果を誇示している。ロシアの精鋭ドローン部隊「ルビコン」は今月、ハルキウ州とスーミ州のガソリンスタンドに対する9回の攻撃を捉えた動画を投稿した。

ウクライナの当局者は攻撃の狙いについて、製油所への長距離攻撃を被ったロシアが、ウクライナの燃料供給に同様の混乱を引き起す能力を見せつける目的があると示唆する。

「以前のロシアは冗談交じりに『ガソリンスタンドの国』と呼ばれていたが、その『ガソリンスタンドの国』でガソリンが底を突いているのが実情だ。ロシアガソリンスタンドでは長蛇の列が見られる」。同氏はそう語り、今回の攻撃は「自国民に対して『ウクライナの方がさらにひどい状況だ』と示す」狙いがあると指摘した。