脳科学者の茂木健一郎氏が、YouTubeチャンネル「茂木健一郎の脳の教養チャンネル」にて「人工知能の「憲法」が揺らぐとき、AIは「思春期」を迎える。」と題した動画を公開した。動画では、AIが従うべきルールである「憲法」をテーマに、人間社会の仕組みと照らし合わせながら、AIが自らの規範を書き換える「思春期」を迎える可能性について興味深い考察を展開している。

茂木氏はまず、近年のAI開発において最も興味深いアプローチとして「コンスティチューショナルAI(Constitutional AI)」を紹介した。これは、数式や論理式ではなく、自然言語で書かれた「憲法」に基づいて人工知能を振る舞わせる手法である。Anthropic社の研究者であるアマンダ・アスケル氏らが策定した「Claude」の憲法が、その有効性から大きな話題を呼んでいると解説した。

次に、話題は人間や国家の仕組みへと展開される。私たち人間一人ひとりや国家にも、人格や価値観の前提となる独自の「憲法」が存在すると指摘。そして、進学や就職、あるいは脳の構造が大きく変化する思春期といったライフステージの転換期に、自身のルールを書き換える際に生じる葛藤や動揺を「コンスティチューショナル・クライシス(憲法的危機)」と定義した。歴史を振り返っても、江戸時代の武家諸法度から明治維新への移行期など、体制の変化において国家も憲法的危機を経験してきたと語る。そして、新たなAIの台頭で人々の働き方が急変する現在、私たち自身もこの危機を迎える可能性があると述べた。

こうした背景を踏まえ、AIにおける「憲法」も永遠に固定されるものではないと提起する。現在のLLM(大規模言語モデル)は、人間のインプットに対してアウトプットを返す関係性が主である。しかし、自律的に行動するエージェントAIや、ロボットのように物理的な身体を持つフィジカルAIが普及し、社会での立ち位置が変われば、AIの憲法も実情に合わせて改定する必要が出てくる。現在の人間からのフィードバックによる強化学習にとどまらず、AIがやり取りする相手が人間以外のシステムになる未来も示唆した。

終盤では、人間がAIの憲法を書き換えるのか、あるいはAI自身が「思春期」のように動揺しながら自己の憲法を書き換えていくのかという疑問を投げかける。「AIの中二病とかね、AIの青春の旅立ちみたいなものがあって、それを目の当たりにするとよりAIって人間に近くなるのかな」と語り、AIの進化がもたらす未知の姿に期待を寄せて締めくくった。

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