高市首相が日本経済の「最大のリスク」になっている…物価高+金利上昇が引き起こす「高市倒産」という人災

■高市政権になって加速する長期金利の上昇
高市早苗氏が自民党総裁選で勝利した2025年10月4日、その日を起点に円安がいっそう進み、やや遅れて日本の長期金利の上昇基調が強まった。
実際に、2025年10月3日のドル円相場の終値は147円15銭、長期金利の終値は1.661%だったものの、2026年6月8日時点でそれぞれ160円14銭、2.717%と大幅に変動している。その結果として、円の価値は8.8%低下し、長期金利は63.6%上昇しているのだ。
円安の進行と長期金利の強い上昇の背景には、高市首相の掲げる「責任ある積極財政」がある。この政策は「国債を増発しても債務残高対GDP比が低下していれば、財政的には何の問題もない」という考え方(経済学における「ドーマー理論」)に基づいている。
しかし私は、当初からこの考え方に疑問を呈してきた。というのも、経済学でいう理論は相関関係を示したものに過ぎず、物理学や化学と同じ意味での理論や法則とはまったく異なり信頼できる代物ではないからだ。
歴史が証明しているように、経済学の理論は金融マーケットでは通用しないことが多々ある。その点では、高市首相のブレーンとなる専門家には、マーケットの本当の怖さを知らない人が多い。ブレーンの1人は「財政危機は絶対に起こらない」と言い切るほどだ。
■市場の本当の怖さを知らない専門家たち
時に暴走するマーケットの前では、経済学の理論や数式は無力だ。代表的な事例として、ノーベル経済学賞受賞者が2人も加わっていた巨大ファンドのLTCMは、1998年にロシアの財政危機をきっかけにあっさりと破綻に追い込まれた。
さらに余談として15年以上前の話になるが、某出版社の連載陣が集まるパーティーで高市首相が強い信頼を置くブレーンの1人と話したことがある。彼は「数学の理論を持っていれば、株式投資は100%儲かるようにできている」と断言していた。
彼の言うことが本当であるならば、彼はすでに世界一のお金持ちになっているだろう。経済や金融の分野で「絶対にうんぬん」「100%うんぬん」といった言葉を使う人たちを信じてはならない。
話を本題に戻すと、現状の円安の進行は、物価のさらなる上昇を招いている。エネルギーや原材料の価格を押し上げ、インフレを加速させているのだ。それと同時に、インフレや人手不足による人件費増が進むなか、企業のコスト負担は急激に膨らんでいる。過度な円安水準の長期化やインフレによる賃上げなど、企業のコスト負担が積み重なれば、そのなかで価格転嫁できない企業の倒産・廃業が増加することは容易に想定される。特に価格転嫁が難しい中小企業・零細企業・個人事業主は、今後も苦境に立たされるだろう。
■金利の大幅な上昇で「倒産ドミノ」が始まる
それに加えて、長期金利の急騰は将来的に、金利負担が大きい企業の経営危機に直結する。借り換えの時期を乗り越えることが困難になるからだ。営業利益で借入金の利払いを十分に賄えない企業、いわゆるゾンビ企業の破綻が増加することは避けて通れない。

帝国データバンクの2026年1月版の分析によれば、2024年度のゾンビ企業数は約21万社と、全体の14.3%を占めている〔出典:帝国データバンク「経済・経営 2026年1月最新版」(2026年1月29日)〕。2022年度の約26.7万社(全体の18.2%)をピークに2年連続で減少しているのは、コロナ(ゼロゼロ)融資返済で倒産・休廃業する企業の増加によって新陳代謝が進んだことが背景にある。
そうは言っても、依然として全企業の約7社に1社が存続を問われる局面にあることには変わりがない。金利の上昇がいっそう進み、かつ長期化すれば、現状では減っているコロナ返済による倒産・休廃業も再び増加に転じる可能性が高い。
「ゾンビ企業の淘汰は経済全体にとって良いことだ」という意見を否定するわけではない。しかし、このまま無責任な積極財政を継続すれば、長期金利は3.0%超えが視野に入り、ゾンビ企業ではない企業にも悪影響が広がっていくのは避けられない。

■物価高対策の失敗を示すデータ
帝国データバンクによれば、2025年の倒産件数は1万261件と12年ぶりに1万件を超えた〔出典:帝国データバンク「倒産集計2025年1月〜12月報」(2026年1月13日)〕。2026年1〜5月の倒産は4307件(前年同期比4.2%増)〔出典:帝国データバンク「倒産集計2026年5月報」(2026年6月8日)〕と高水準で推移し、現状でも2年連続で1万件を超える計算だ。

倒産の原因は「円安、物価高、人手不足、賃上げ、コロナ融資返済、後継者不足」など複合的だが、直近半年では「人手不足、コロナ融資返済、後継者不足」は減少傾向。その一方で増加しているのが、「高市円安」ともいえる「物価高」による倒産だ。2026年4月は物価高倒産が統計開始以来で最多〔出典:帝国データバンク「『物価高倒産』が急増 4月は108件で過去最多 前年比5割増」(2026年5月13日)〕となり、5月以降も高水準で推移する見通しである。
これは、高市政権の物価高対策が失敗している証左だ。近年の日本経済は、「需要超過」「供給不足」の状況にあるからであり、その現状認識から大きく逸脱した積極財政によるバラマキ対策がうまくいく可能性は極めて低い。
本来であれば、供給力を強化する対策に力を入れないといけないのにもかかわらず、インフレの時に需要を刺激する対策を講じても、それは物価高を加速させるだけで逆効果となる。実際に高市自民党総裁の誕生以来、円安と長期金利上昇が続いている。このままでは、「高市倒産」ともいえるかさ上げ分の倒産が増えていくだろう。
■ナフサ価格高騰がさらに輪をかける
また、現時点の倒産件数は、ナフサの価格高騰による悪影響をほとんど織り込んでいない。おそらく今夏以降、この悪影響を受ける中小零細企業の倒産が件数を押し上げ、リーマン・ショック級の1万1000件に迫るシナリオが否定できない情勢だ。
たしかに、ナフサは企業努力によって代替え調達が進み、一時期の著しい不足感は和らいできている。しかし、ナフサの国内価格は5月に昨年末の2倍に達したのをピークに高止まりが続いているため、幅広い分野で多種多様なモノの値上げが進みつつある。
その結果、さらにインフレや円安が進み、物価高倒産が増えるという悪循環に陥る懸念が高まっていく。もちろん、財源確保のめどが立たないバラマキを繰り返す姿勢を改めなければ、円安と長期金利の上昇という悪循環も同時に進行するだろう。
何故このような状況になってしまったのだろうか。それは、今回のイランを巡る地政学リスクにおいて、高市首相の外交姿勢が初動から間違っていたからだ。
■イラン情勢への対応にも失敗している
高市首相は「媚米外交」を優先するあまり、米国のイランへの攻撃が国際法違反だったにもかかわらず、イランだけを批判して同国と真摯に交渉する機会を自ら放棄してしまったのだ。国内経済や国民生活を念頭に置くのであれば、米国に日本の経済的立場を明確に伝え、戦争締結へ向けて平和外交を展開するべきだったと思う。

イランは日本を先進国のなかで公平で対話を重視する国とみなしている。だから、高市首相が米国の攻撃直後にイランへ訪問して外交努力をしていれば、以前のように中東から原油やナフサを輸入できていたかもしれないのだ。
中東の原油は日本経済の生命線であり、このことを理解しているから当時の安倍首相は、第1次トランプ政権の米国とイランの対立が激化していた2019年に、その仲介役としてイランの最高指導者ハメネイ師および当時のロウハニ大統領と直接会談をしたというわけだ。この訪問の成果かどうかはわからないが、とにかく戦争は回避することができた。高市政権のある閣僚が「日本だけが特別扱いで通航を認めてもらえるような抜け駆けはすべきではない」という発言をしていたが、これは国益からみて理解不能な話だ。資源がない日本が取るべき道は、「防衛力を強化する」よりも「外交力をつける」ことではなかろうか。
■「高市倒産」はもはや人災である
サプライチェーンが複雑に絡み合ったグローバル経済において、一国のトップが自らの価値観に基づいて「この国は好き」「この国は嫌い」といった外交をしていたら、結局のところ、その国の経済的な損失は甚大なものとなる。
それは、中国に対する対応でも同じだ。安倍首相が中国との外交方針で「戦略的互恵関係」(両国で政治体制や価値観の違いがあっても、お互いに利益になる分野では協力し、対立は回避していこうという考え方)を採用したのは、至極当たり前のことだ。
要するに、外交に好き嫌いはあってはならない。個人的に嫌いな国だろうが、経済全体をマネジメントするためには、うまく付き合わなければならないのだ。国民生活を犠牲にする外交であってはならないというわけだ。
いずれにしても、このままでは「高市円安」が継続し、物価高による「高市倒産」が増えていくだろう。NHKをはじめテレビは自粛モードで伝えないが、これは経済政策や外交の失敗による「人災」だといえるのではなかろうか。

----------
中原 圭介(なかはら・けいすけ)
経営アドバイザー・経済アナリスト
「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済金融アナリスト。「総合科学研究機構」の特任研究員。「ファイナンシャルアカデミー」の特別講師。「日本個人投資家協会」の理事。大手企業・金融機関・シンクタンクへの助言・提案を行う傍ら、講演会・セミナーなどで経済金融教育の普及に努める。過去の著書連載多数。2025年6月からnoteとXで緩く活動中。
----------
(経営アドバイザー・経済アナリスト 中原 圭介)
