内田梨瑚被告(本人のTikTokより)

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 2024年4月、北海道旭川市にある神居大橋の欄干から当時17歳の女子高生を川に落下させ、死亡させるという事件が発生した。この事件で殺人罪などに問われた内田梨瑚被告(23)の裁判裁判が旭川地裁で開かれており、今日6月8日、検察は論告求刑を行う。3日に開かれた公判では遺族の供述調書が読み上げられ、その中には「犯人を同じ目に遭わせてやりたいですが、私にはできません」、「犯人には極刑を望みます」との悲痛な訴えが含まれていた。あまりにも残虐な犯行の一部始終が捜査や裁判で明らかになっており、世論も極刑を求める声が目立つ。

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 これに内田被告は捜査の取り調べで「女子高生は自ら川に落ちた。自殺した」と供述。裁判でも「殺意はなかった」、「女子高生は落下しかけたが自力で欄干に戻り、自分たちが立ち去った後に悲鳴と衝撃音が聞こえた」などと主張しており、殺人罪に関しては検察側と全面的に争っている。

内田梨瑚被告(本人のTikTokより)

 一方、内田被告の共犯者である小西優花受刑者(20)は「内田被告が押したことで女子高生は落下した」と主張しており、重要な証言として注目されている。

 小西受刑者に対しては3月7日に懲役23年の判決が下り、小西受刑者も検察も控訴しなかったため刑が確定した。

 ちなみに小西受刑者は犯行当時19歳だったが、改正少年法の「特定少年」に基づき、20歳以上の成人とほぼ同じ司法手続きで裁判が行われた。担当記者が言う。

「小西受刑者は自身の裁判で『内田被告が女子高生の身体を押し、橋から落下させて殺した』と明らかにしました。そのため3月5日、検察側は論告求刑で小西受刑者の供述を『自己の責任を軽くしようとしており、信用性に乏しい』と批判したのです。一方、内田被告の裁判で検察側は『女子高生を監禁して暴行を加え、全ての服を脱がせた。そして殺意をもって橋の欄干に座らせ、「落ちろ」、「死ねや」などの暴言を浴びせた。その結果、女子高生は橋から転落しており、殺人罪が成立する』と主張、『誰が川に落としたのか』という疑問に真正面から回答することは避けたのです」

実は“余裕”の検察

 5月27日には小西受刑者が内田被告の裁判に証人として出廷。内田被告の弁護側による「橋の上に女子高生を残し、携帯電話と4000円を置いて立ち去った」との主張を「最初から最後まで全部嘘」と厳しく批判した。そして「橋の欄干の外側に立たせ、梨瑚さんが肩甲骨を両手のひらで押し、目の前から一瞬で消えた」と改めて証言した。

「これが重要な証言であることは間違いありません。とはいえ、小西受刑者の裁判で検察側が『信用性に乏しい』と批判したのも事実です。真相解明のためには『誰が女子高生を落としたのか』の謎が解かれる必要があるはずですが、小西受刑者の裁判では『小西受刑者と内田被告が女子高生の身体を押す場面もあった』との事実は認定された一方、『最後に誰が押して落下したのか』の謎は解明されないまま懲役23年の判決が下りました。こんな曖昧な状態で内田被告の裁判が続いて大丈夫なのかと疑問に感じることもあります」(同・担当記者)

 ところが、元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏は「検察側は基本的に、ある種の余裕を持って裁判に臨んでいるはずです」と指摘する。

小西証言の信憑性

「警察や検察といった捜査機関には『引っ張り込みの危険』という戒めの言葉があります。共犯者がいる場合、被疑者は自分の罪を軽くしようと虚偽の供述を行い、相手に罪をなすりつけようとすることが多いので注意が必要だという意味です。ところが小西受刑者の場合、懲役23年の刑が確定しているので引っ張り込みの危険はありません。私が内田被告の弁護士であれば、小西受刑者の証言は【1】もともと内田被告に恨みなど負の感情を持っており、とにかく重い刑を望んでいる可能性がある、【2】自身の裁判で『内田被告が落とした』と主張したことで、引っ込みがつかなくなっているのではないか、といった懸念を指摘するでしょう。ただし裁判所の視点から考えると、小西受刑者は罪を認めて控訴せず、すでに刑が確定しています。そのため彼女の証言は信憑性が高いと判断するはずです」(同・若狭弁護士)

 それだけ小西証言は重く、決定的というわけだ。しかも内田被告は自身の裁判で「私に殺意はなかったが、小西受刑者には殺意があった」などと証言した。こうなると、むしろ検察と争っている内田被告にこそ引っ張り込みの危険を疑う必要が生じる。

 ならば、なぜ検察側は小西受刑者の証言に基づき「内田被告が女子高生を転落させた」と主張しなかったのだろうか?

内田被告の“問題発言”

 若狭弁護士は「内田被告が女子高生を橋から落としたか否か、確かに小西証言は非常に重要です。しかしながら、証言以外には証拠が存在しない点を検察側は憂慮したのでしょう」と指摘する。

「もし弁護側と『内田被告が女子高生を落とした』という点で全面的に争うと、『内田被告が橋から落としていない可能性も否定はできない』と減刑される懸念があります。そのため検察側はまず『内田被告は殺意をもって被害者を橋の欄干に立たせました。これで殺人罪は成立します』と主張し、加えて『小西証言には重要な内容が含まれています。ぜひ判決の参考にしてください』と法廷で証言させたと考えられます」(同・若狭弁護士)

 検察の主張は曖昧どころか、減刑の可能性を封じ込める“二段構え”の立証ということなのかもしれない。

 さらに内田被告は法廷での“問題発言”が散見され、ネット上で炎上することが多い。炎上だけなら裁判に影響は出ないだろうが、裁判員や裁判官が「反省の色が見られない」と判断する可能性はないのだろうか?

 例えば内田被告は暴行を加えた女子高生が「死にたい」と繰り返したことを「『死ぬ』と言うのがウザいと思った」と言い放っている。

謝罪はパフォーマンス?

 他にも服を脱がせ、橋の欄干に座らせた理由を「死ぬ気がないのに『死にたい』と言うのをやめさせたかった」と説明した。だが内田被告たちは女子高生に「落ちろ」、「死ねや」などの暴言を100回以上も繰り返していたことが裁判で明らかになっている。

 若狭弁護士は「私は内田被告が遺族側代理人の質問に対し、『もし被害者が誰かを連れてきたりしていれば、話がまとまったりしたと思います』と答えたことに注目しています」と言う。

「6月4日の公判での発言です。この日、内田被告は午前中に『被害者を傷つけ苦しませ、これからの人生を奪ってしまい申し訳ございません』と涙ながらに謝罪しました。ところが午後になると『話がまとまったりしたと思います』と、まるで被害者に落ち度があるかのような発言をしたのです。午前中の謝罪だけなら『本当に反省しているようだ』と裁判員や裁判官が受け止めたかもしれません。ところが午後の発言で『ひょっとすると、あの謝罪や涙は減刑目的のパフォーマンスだったのではないか』と裁判員や裁判官が疑っても仕方ないように思います」

死刑求刑に立ちはだかる“壁”

 殺人罪の法定刑は「死刑、無期拘禁刑、または5年以上の有期拘禁刑」と刑法に定められている。死刑を求める世論が目立つのは冒頭で触れた通りだ。

「日本の司法では永山基準などを元に『被害者が3人以上で死刑判決』という量刑相場が形成されました。とはいえ、被害者が1人でも死刑の判決が下った判例は存在します。そして今回の事件は、一般的な殺人事件とは比較にならないほど凶悪な犯行であることは言うまでもありません。中でも被害者は全ての服を脱がされ、冷たい川の中に落とされ、ご遺体は1カ月もの間、冷たい水の中に放置されました。こんなことが許されていいはずがないでしょう」(同・若狭弁護士)

 もし本当に内田被告が「自殺した」と思ったのなら、警察に通報することもできたはずだ。しかし内田被告は沈黙を続けた。どう考えても発覚を恐れたと疑わざるを得ない。実際、小西受刑者は内田被告に「警察に何を聞かれても黙秘しろ」と口止めされたと証言している。

「ご遺族は内田被告からの手紙の受け取りを拒否したとのことですが、被害者の無念を考えれば当然でしょう。判決文に『鬼畜の所業』という表現が使われることがあります。今回の事件の凶悪性や悪質性は人間のやったこととは思えないほどです。確かに死刑が求刑されてもおかしくはありません。ただし、ここで壁となるのが小西証言以外に『内田被告が女子高生を橋から落とした』という決定的な証拠が存在しないことです。これでは、やはり検察は死刑ではなく無期拘禁刑を求刑するのではないかと考えます」(同・若狭弁護士)

デイリー新潮編集部