戸惑う親へ LGBTQの子持つ家族の声まとめた資料公開

LGBTQなど性的マイノリティーの子どもがいる家族の団体が、「保護者たちの言葉と行動の記録」と題した資料を作成した。後悔している言動や学校との関わり、励みになった言葉など、保護者や当事者から寄せられた声を収めている。「子どもの性のあり方を受け止めきれずにいる親御さんが、一歩を踏み出すきっかけになれば」。県内に住む保護者の一人はそう話す。
まとめたのはNPO法人「ASTA」(名古屋市)と、国内3地域で活動しているNPO法人「LGBTの家族と友人をつなぐ会」。両団体は2021年から、性的マイノリティーの子を持つ保護者のオンライン交流会「みんなで保護者会」を共催。「保護者にもロールモデルが必要」との思いから、昨年秋に資料づくりを企画した。
「みんなで保護者会」の参加者をはじめ、全国の関係団体や個人にアンケートへの協力を依頼。12月からことし2月にかけて、30〜70代の保護者約50人と100人近い当事者の声が集まった。保護者とともに、出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーや同性愛者ら、多様なセクシュアリティーの人たちの言葉が載っている。
「保護者は試行錯誤を重ね、数え切れないほどの失敗と向き合ってきた」と、「つなぐ会」東京理事の三輪美和子さん=70代、県内=は言う。カミングアウトを受けた家族の率直な気持ちはあまり共有されてこなかったとし、「自分たちの体験が戸惑い悩む保護者の助けになれば」と語る。
男女のみを想定した性別二元論や異性愛が前提の価値観、多様な性に対する無理解…。差別や偏見が根強い社会で苦悩と葛藤を深める当事者や家族の現実が、資料から浮かび上がる。
「保護者が後悔・反省している言葉と行動」の項目では、「いじめにあうことを心配し、子どもが望む髪型や服装をさせなかった」「子どもを異性愛者だと決めつけ『彼氏(彼女)いる?』と聞いていた」「手術や戸籍変更まで考えるほど思い詰めていたのに、『そんな馬鹿なこと』と否定してしまった」などの言葉が並ぶ。
一方、「『死にたい』と発した子どもに、迷わず『絶対に守る』と応えた」「『差別は社会の問題であり、あなたの責任ではない』と伝えた」といった好事例も。
「性のあり方を否定せず、まずは本人の話を聞いてほしい」「親からの拒絶が一番子どもの心を苦しめる」「目の前の生徒が性的マイノリティかもしれないという想像力を常に持っていてください」─。
「本人から保護者や先生へ伝えたいこと」として挙げられた当事者の訴えも切実だ。
「自分は性同一性障害。これからは男として生きていく」。三輪さん自身、十数年前に子どもからカミングアウトされた。「21年間女の子として育てていた。自分の心が飛んでいってしまうような衝撃を受けた」と振り返る。手術や改名を望むわが子に夫が思わず反対すると、子が強い口調で言った。「こんな不満足な体で長生きしたって意味はない。太く短く生きていく」
三輪さんはわれに返った。「子どもの覚悟がビシッと伝わったんです」。本心ではすぐに受け入れられなかった。それでも「お母さんたちはあなたの味方」だと伝えた。「受け止めなければ命を落とすかもしれない。この手をしっかりつながなければと思ったんです」
「セクシュアリティーはバリエーションが豊かだし、揺らぎもある」。自らの子育てや多くの当事者、保護者の相談に乗ってきた経験から、三輪さんはそう実感している。「でも、どんな時もその子はその子なんです。性的マイノリティーの子どもたちが自分らしく生きられる世の中になるよう、この資料がその一助となれば」
さらに、マジョリティーが理解を深めることが不可欠だと力を込める。「多様な性への理解なしには社会は前に進まない。だからこそ、一人でも多くの人に当事者と保護者の思いを知ってほしい」。変わるべきは社会の側だとした上で、「『あなたはそのままでいい』という肯定的な言葉が、家庭や学校で広がるのを願っています」。
資料はA4サイズ、6ページ。両団体の公式サイトからダウンロードできる。
