新型コロナウイルスのパンデミック初期には検査実施の手本と評価されたポルノ業界が、サル痘を対象とした新たな衛生安全ガイドラインを発表した。撮影現場で安全な労働環境を維持するためのアドバイスを提供するとともに、ポルノ俳優にはできるだけ早急にワクチンを接種するよう呼びかけている。

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「この業界では、検査や衛生安全対策は日常茶飯事です。接触が広範囲におよぶコミュニティでもあります」と言うのは、ポルノ業界団体「表現の自由連合」のマイク・スタビール広報主任だ。「ですから今回も我々のコミュニティの間では、世間一般で認識されている以上に、早急な対応を要するものでした」

全米で展開するPASSプログラム(ポルノ作品出演検査サービス)でエグゼクティヴディレクターを務めるイアン・オブライエン氏は、同組織が認識している限りポルノ制作がらみでの感染はないとの声明を発表したが、PASSでは病気の感染拡大防止を目的としたガイドラインを公表している。「ポルノ制作と関連したサル痘感染の報告は受けていませんが、我々のコミュニティは長年ずっと自分たちの健康や公衆衛生を重要視してきています」とオブライエン氏。同組織は5月にも、最初のサル痘ウイルス警報を発令している。

一般的な会社員がワクチン接種状況を社内システムにアップロードしたり、最新の感染状況に関するアンケートを職場で実施するずっと前から、ポルノ業界ではすでに同様の対策を講じて労働者の安全と健康を確保していた。2011年以降、PASSは検査機関と提携してHIVを含む7種の性感染症の検査を行い、検査結果にもとづいて1回につき2週間の勤務許可を出すことにしている。パンデミック当初は、職場の安全性確保の検査を行った先駆けとしてマスコミでも賞賛された。同じように、PASSは2020年6月までに、ソーシャルディスタンスや保護具使用の手順をまとめた30ページにわたる新型コロナウイルス対策ガイドラインを発表した。

現在、同組織が取り組んでいるのがサル痘だ。サル痘は体液、皮膚接触、呼気飛沫を介して伝染するウイルスで、風邪に似た症状や、時には発疹を引き起こす。現在46州で3500件以上の感染が報告されており、全世界の感染件数も急増している。アメリカでは6月からワクチン接種が始まったが、供給量は限られている。

PASSプログラムがセックスワーカーたちを救う

PASSの勧告には、撮影現場に入る前にサル痘に特化した検診の実施、検温、リンパ腺の腫れや原因不明の吹き出物または発疹といった症状の問診などが含まれている。サル痘に感染した場合、感染者は発疹や病変が完全に回復するまで自宅待機ること、という接触追跡や隔離に関する指示もある。また職場の清掃・消毒、手洗い習慣の徹底といった指示もガイドラインに盛り込まれている。

だが何より、できる限り多くのポルノ業界従事者にワクチンを接種させたいとスタビール氏は言う。「これこそ効果的に感染拡大を阻止できるツールです」と同氏は言い、PASSがずっと求めていたセックスワーカー専用のワクチン診療所がロサンゼルスに開設される予定だと付け加えた。「これまでPASSは、セックスワーカーやポルノ制作で働く人々に門戸を開くよう働きかけを行ってきました」と同氏。「都市によって対策も異なりますし、危険対象者やワクチン対象者の定義も異なるでしょう。ですが私の知る限り、セックスワーカーに特化して人材や予算が割かれたのは今回が初めてだと思います」

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from Rolling Stone US