【半田 滋】唖然…沖縄で「コロナ大感染」恐れていた最悪の事態が起きてしまった それでも沖縄県は何もできない…

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ついに大規模感染が起きた…

恐れていた事態が、ついに現実になった。

沖縄の米軍基地で新型コロナのクラスターが複数発生し、感染者は今月に入って12日までに63人にのぼった。

しかも米軍は、感染者が米兵なのかその家族なのか属性を明らかにせず、行動履歴の開示も拒んでいる。これでは基地を抱える沖縄県は感染症対策の手の打ちようがない。

普天間基地(宜野湾市)で7月8日に5人の新型コロナの感染者が判明、9日にはキャンプ・ハンセン(金武町)で複数の感染者が出たが、11日なって数字が跳ね上がり、一気に60人を越えた。

〔PHOTO〕gettyimages

一方、沖縄県内では8日に69日ぶりに県内で2人の感染がわかり、9日に1人増えて合計3人の感染が確認されているが、沖縄県民の人口約145万人のうちの3人に対し、在沖縄米軍は2万5843人(2011年6月現在、沖縄県調べ)のうちの63人となり、異常なほど高い感染率を示している。

沖縄の中には、日本と米国という2つの国があるのに等しい。米国は基地を提供している側の日本に対し、基本的な情報さえ提供しない。これで信頼関係など築けるはずがない。

米国では感染者が300万人を越え、8日には6万人の新規感染者を記録した。日本政府は米国からの上陸拒否を続け、水際対策を徹底しようとしている。

しかし、米軍だけは例外なのだ。

数百人でバーベキュー

日米地位協定第9条2項には「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される」とあり、米兵は入国に関わる一切の手続きを免除されている。当然ながら検疫もない。日本政府の水際対策は「ただし、米兵を除く」という一文が加わったザルというほかない。

米国は9月に会計年度が切り替わる。これに合わせて米軍では7月、8月に世界規模での人事異動があり、在日米軍専用施設の7割が集中する沖縄には大勢の米兵や軍属が押し寄せている。

基地が所在する他の自治体も例外ではない。11日には神奈川県の米海軍厚木基地(大和市、綾瀬市)が「基地内で複数のコロナ感染者が出た」と発表した。だが、沖縄の米軍同様、感染者の属性、行動履歴は発表していない。

米軍は出国前に14日間の行動制限(隔離措置)を行い、日本に入国した後も同じく14日間の行動制限をしているという。こうしたコロナ対策が確実に実行されているならば、なぜ基地内で感染者が急増しているのか。

米国の独立記念日にあたる7月4日、沖縄県の各部隊は記念行事を縮小する方針を示していたが、実際にはバーベキュー・パーティーなどが開かれ、基地の外に繰り出す米兵たちが目撃されている。

沖縄タイムスによると、同日、うるま市の肝高公園で管理者の県から許可を得ないまま元米兵の男性が主催するバーベキューやアルコールを提供するイベントが開かれ、米国人や地元の人ら数百人が参加した。

東京の在日米軍司令部が健康保護のための警戒レベルをC(重大)からB(中程度)引き下げたのに合わせて、沖縄の在日米海兵隊は6月17日から米兵の外出を緩和していた。このタイミングで独立記念日を迎えたのだ。

最高レベルの感染防止対策?

米軍はクラスターの発生に伴い、10日になって普天間基地とキャンプ・ハンセンのロックダウン(閉鎖)を実施し、さらに1日後の11日午後になって、ようやく感染の急拡大を沖縄県に通報した。

慌てた玉城デニー沖縄県知事は、在沖縄米軍トップのステーシー・クラーディー四軍調整官(海兵隊中将)と約30分にわたり、電話で会談した。

玉城氏は「米国から沖縄への移動禁止」「基地内の感染防止対策を最高レベルに引き上げ、違反者の米国への送還」などを求めたのに対し、クラーディー氏は「私の権限における最高レベルの感染防止対策を取っている。米国から沖縄への移動禁止は私の権限では答えられない」と答えたという。

〔PHOTO〕gettyimages

電話会談後、玉城氏は「米軍の感染対策に強い疑念を抱かざるを得ない」と強い口調で米軍を批判した。

沖縄県は米軍の要請にもとづき、提供された感染者数の公表を控えてきたが、クラーディー氏が「私に権限はないが、県が公表しても報告を続けたい」と答えたため、県が感染者数の公表に踏み切った。これにより、11日だけで45人が感染し、7月に入って60人を越えたことが明らかになった。

米軍が情報を出し渋るのは、米国防総省が3月30日、「新型コロナ・データの公表基準」を発出し、「運用上の安全への懸念から、(感染者の所属する)個別の部隊、基地、司令部での集計は公表しない」との方針を示しているためだ。

一方、日米両政府の間には2013年1月の日米合同委員会で取り交わした「在日米軍と日本国の衛生当局間における情報交換について」(2015年9月修正)があり、「人の感染症」について「確認した場合は、可能な限り早期に通報する」ことになっている。

米軍は政府間の取り決めよりも米国防総省の通達を優先させていると考えるほかない。とはいえ、ある程度の情報を沖縄県側に伝えているのをみると、新型コロナの重大性との間で揺れているのだろう。

米軍がホテルを借り上げた理由

基地内の感染爆発を受けて、米軍は北谷町の外資系ホテルを1棟借り上げ、海外からの人事異動者の隔離施設として利用を始めた。収容人数や使用期間は分かっていないが、同ホテルのホームページには、客室160室とあり、2つの屋外プールを備えている。

琉球新報によると、北谷町の野国昌春町長は「人事異動期間を延ばして人数を分散するなど、異動者を基地内で隔離できる方法を考えてほしい」と苦情を述べた。町は外務省沖縄事務所のほか、在沖縄米国総領事館などに対して抗議文を郵送したという。

町長の怒りはもっともだ。基地の中ではどのように感染が広がっているのか皆目わからないのに、今度はフェエンスを越えて町内の施設を使って米兵を隔離するというのだ。

基地内で十分な感染症対策が取られていれば、クラスターの発生など起きるはずがない。実効性が疑わしいにもかかわらず、そうした対応を基地の外に広げる米軍の判断を、住民の命を守る立場の町長が受け入れられるはずがない。

米軍はホテルを借り上げた理由を「基地内の施設では収容しきれないため」としている。すると、次には感染者が増え、基地内の医療施設で収容しきれなくなった場合、基地外の病院の利用を可能性が出てくる。

コロナ禍まで沖縄に押しつけるのか

沖縄県は米軍関係者から住民に感染が広がるおそれがあるとして、中部地域のPCR検査体制を強化するほか、感染した軽症者や無症状者の療養施設を確保する準備を始めた。また沖縄県議会は10日、感染防止対策の徹底と米軍に情報開示を求める意見書と決議を満場一致で採択した。

沖縄で起きている米軍の問題は、もはや沖縄県に任せるレベルを越えている。日米両政府が前面に出るべき局面を迎えたといえる。現にクラーディー四軍調整官も「米国から沖縄への移動禁止は私の権限では答えられない」と述べているではないか。

キャンプ・ハンセンでの訓練の様子〔PHOTO〕gettyimages

日米両政府で提供し合うべきなのは情報だけにとどまらない。米軍の異動を一時的に停止させ、基地内で発生したクラスターを日米双方の協力によって解消する必要があるのは言うまでもない。

基地を沖縄に押しつける日本政府が、米軍基地のコロナ禍まで沖縄に押しつけていいはずがない。