ただの口内炎?“舌がん”を疑うべき「3つの初期症状」【歯科医師監修】
舌がんでは、粘膜の奥に硬いしこりを感じたり、えぐれたような潰瘍が形成されたりすることがあります。舌を噛んだ覚えがないのに出血が繰り返される場合も、見逃せないサインのひとつです。初期は痛みが少なく「たいしたことはない」と感じやすいですが、2週間以上続く変化は専門医に相談することをおすすめします。
監修歯科医師:
柴原 孝彦(東京歯科大学名誉教授)
著書は「口腔顎顔面外科学(医歯薬出版)」「標準口腔外科学(医学書院)」「カラーアトラス コンサイス口腔外科学(学建書院)」「口腔がん検診 どうするの、どう診るの(クインテッセンス出版)」「衛生士のための看護学大意(医歯薬出版)」「かかりつけ歯科医からはじめる口腔がん検診step1/2/3(医歯薬出版)」「エナメル上皮腫の診療ガイドライン(学術社)」「薬剤・ビスフォスフォネート関連顎骨壊死MRONJ・BRONJ(クインテッセンス出版)」「知っておきたい舌がん(扶桑社)」「口腔がんについて患者さんに説明するときに使える本(医歯薬出版)」など。
舌がんの初期症状|日常生活での変化に気づく
舌がんの症状は舌そのものの見た目だけでなく、日常生活における機能的な変化として現れることもあります。このセクションでは、話すこと・食べること・飲み込むことに関連した症状の変化について解説します。こうした機能的なサインは、見落とされやすいために注意が必要です。
しゃべりにくさや味覚の変化に気づいたら
舌は発音や咀嚼(食べ物を噛み砕くこと)、嚥下(飲み込み)に深く関わる器官です。そのため、舌に異常が生じると、話しにくさや発音のもつれといった症状が現れることがあります。「最近、言葉が出にくい」「舌がうまく動かない感じがする」といった変化は、単なる疲労や加齢によるものだと見過ごされることも少なくありません。
味覚の変化も初期症状の一つとして挙げられることがあります。舌の粘膜や味蕾(みらい)と呼ばれる味を感じる器官が影響を受けることで、食事の味が感じにくくなったり、苦味や金属的な味が続いたりすることがあります。ただし、味覚の変化は亜鉛不足や薬の副作用など、ほかの原因によっても生じるため、単独の症状だけで舌がんを疑う必要はありません。他の症状と組み合わせて総合的に判断することが重要です。
これらの変化が数週間以上続く場合や、口腔内に目に見える変化(白斑・赤斑・潰瘍など)が伴う場合には、医療機関での診察を受けることが推奨されます。早期の段階で医師に診てもらうことで、より多くの治療の選択肢が確保できる可能性があります。
口腔内の痛みや顎・首のリンパ節の腫れ
舌がんが進行するにつれて、口腔内の痛みが強くなることがあります。初期の段階では痛みが少ない場合が多いため、痛みが出始めたときにはすでにある程度進行しているケースも見られます。食事中に痛みを感じる、舌に触れると痛い、口を開けるのがつらいといった症状が現れた場合は注意が必要です。
また、顎の下や首のリンパ節が腫れることがあります。リンパ節はがん細胞が転移する経路の一つであり、舌がんが進行するとリンパ節への広がりが生じることがあります。風邪など感染症でもリンパ節は腫れますが、2~3週間たっても腫れが引かない場合や、触れると硬い感触がある場合は、専門の医師への相談を検討することが大切です。
舌がんの症状は多岐にわたり、一つひとつの症状単独では見極めが難しいこともあります。「気になるけれど、がんではないだろう」と自己判断してしまいがちな症状も、早めに医療機関で確認を取ることが早期発見の鍵となります。特に、複数の症状が重なっている場合は、口腔外科や耳鼻咽喉科の受診を優先させてください。
まとめ
舌がんは早期発見ができれば、治療の選択肢を広く持てる可能性がある疾患です。初期症状として現れる白斑・赤斑・しこり・潰瘍などの変化を見逃さないこと、そして喫煙・過度な飲酒・口腔内の不衛生といったリスク因子を減らす取り組みを継続することが、予防と早期発見の両面で重要です。禁煙や節酒は、決して容易ではないかもしれませんが、医療機関のサポートを活用しながら一歩ずつ取り組むことができます。今の生活を見直し、気になる症状がある場合は口腔外科や耳鼻咽喉科への受診を早めに検討してみてください。
参考文献
国立がん研究センター「口腔がんの検査・診断について」
厚生労働省「がん対策情報」
日本口腔外科学会「悪性腫瘍|口腔外科相談室」

