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強調される『スカイラインの開発期間短期化』

日産自動車(以下、日産)が横浜のグローバル本社で7月30日、『開発期間短期化の取り組み』についてメディア向け説明会を開いた。

【画像】日産が『開発期間短期化の取り組み』について説明会開催 次期スカイラインのティザー画像と現行『400Rリミテッド』と併せて 全17枚

そう聞いて「スカイラインのことか?」と思った人がいるかもしれない。2025年5月に経営再建計画『Re:Nissan』を公開した際、イヴァン・エスピノーサ社長は「スカイライン復活」を明言し、その後に「スカイラインの開発期間短期化」という表現を使うようになったからだ。


今年4月公開の長期ビジョンで、『次期スカイライン』のティザー画像を世界初公開。    日産自動車

筆者も度々、エスピノーサ社長がスカイラインの開発期間短期化が日産の事業再生に不可欠な要素であることを主張する場に居合わせてきた。

特に昨年10月末から開催されたジャパンモビリティショー2025では、新型『エルグランド』や新型『リーフ』に加えて、日産はあえてスカイラインの重要性を強調したのが印象的だった。

そんな次期スカイラインについて、直近では今年4月に公開した長期ビジョンの中でティザー画像を世界初公開している。

このように、日産の意図は『スカイラインが始まり』という主旨で開発期間短期化に触れてきたのだと思うのだが、スカイラインは開発の真っ只中にあるため、メディアとしては開発期間短期化の全体像がつかめないという印象もあった。

実際、メディアから日産に対して『開発期間短期化とはどういうことをやっているのか、具体的に説明して欲しい』という問い合わせがあったという。そこで今回の説明会はオンラインではなく、メディア関係者が日産グローバル本社で日産と直接意見交換することになったというわけだ。

社内用語『PCS-T』で意識統一図る

では、説明会の模様を順を追って見ていこう。

登壇した日産の第一製品開発本部執行職である山口一之氏は、『開発期間を短縮することの意義』から話を始め、大きく5つのポイントを挙げた。


「スカイラインの開発期間短期化」という表現を使用するイヴァン・エスピノーサ社長。    日産自動車

1つ目は『(モデル)ライフサイクルの長期化による競争力の低下』。経営上の課題であり、エルグランドを筆頭に状況は変化しているものの、さらなる改善が必要との認識だ。

2つ目は『市場環境の急激な変化』。代表例は、米トランプ政権によるEV関連施策の変更だ。

3つ目は『長いリードタイムによる事業リスクの増大』。市場変化が早いため、市場に出た時点では商品が市場要求にハマらないこともある。

4つ目は『コスト構造の課題』。ADAS、自動運転、電動化など部品と開発の費用が増加傾向にある。

そして5つ目が『業界構造の変化』。筆頭は中国メーカーによる新しい開発体制を挙げた。

これらの要素によって、開発期間短期化は日産にとって急務だという意識を、日産経営層と従業員層で意識統一するため、新たな活動を2024年から始めた。

社内用語は、『PCS-T』(プロダクト・クリエーション・システム・トランスフォーメーション)だ。

DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)のように、日産のものづくりを抜本的に変えるという、日産の意思表示である。PCS-Tの目的は『早く、安く、良いクルマを開発する』ことだ。

開発期間を約20ヵ月短縮して30ヵ月を実現へ

具体的に、PCS-Tとは何か? プロセスとして『デジタルフェーズ』と『フィジカルフェーズ』がある。

デジタルフェーズは、1:顧客視点に立った車両企画、目標値設定。2:デザイン決定の前倒しとプロセスのシンプル化。3:プロジェクト責任者の明確化となる。


現行スカイラインの特別限定車『400Rリミテッド』。これが最終モデルとなる?    日産自動車

順に見ていくと、1は市場調査は十分に行った上で、日産の強さを強調する『尖った商品』を狙うためにリソースを集中する。

2では、ファミリー(商品群)デザインでのルールを適用して、方針決定を早めて効率的な開発を進める。

そして3では、これまでのPD(プログラム・ダイレクター)、CPS(商品企画責任者)、CVE(開発責任者)による三権分立制を改め、PDがCPSを兼ねることで収益性など商品企画の骨格を作り、それを実現されるためにCVEと協議するようにプロジェクトの意思決定システムを簡素化する。

一方、フィジカルフェーズでは、AI(人工知能)やDXを活用した車両実験の効率化を進める。例えば、VR(バーチャル・リアリティ)を活用した操作性の評価や、実験とデジタルモデルによるデジタルツイン、また耐久試験などの現場ではドライバーレスの自動化を促進する。

以上によって、開発期間を約20ヵ月短縮する。このうち、デジタルフェーズが3分の2、フィジカルフェーズが3分の1で効果があるとの想定だ。

日産が進めるPCS-T。その第一弾であるパイロットプログラムが次期スカイラインとなる。2024年を基点とすれば、量産車の登場は今年後半から来年頭あたりが予想される。