通勤電車でふと開いた動画アプリから、気づけば長い時間指が止まらなくなっていた経験はないだろうか。実はこの「やめられなさ」自体が、緻密に計算された設計の産物だとしたらどうだろう。
 
実業家のマイキー佐野氏は、動画にて中国発のショートドラマ市場について語っている。欧米では大手動画スタートアップが巨額を投じながら早期に撤退し、日本でも模倣の動きが広がったものの軌道に乗り切れていない。一方で中国だけは、この分野で世界的な独走状態を築いていると佐野氏は話す。佐野氏によれば、その差を生んだのは制作手法そのものの違いにある。海外勢が既存の映像制作の発想をそのまま短尺に圧縮しただけだったのに対し、中国勢はネット小説や出版といった隣接業界が持つ膨大な物語資産を、視聴に最適な長さへと作り替える発想から出発した点が際立つ。市場の伸び方も尋常ではなく、国内の映画興行収入をしのぐ勢いだと佐野氏は語り、映画やゲームとは異なる周辺業界から新興勢力が台頭してきた経緯にも触れている。
 
さらに佐野氏が着目するのは、視聴者が画面をスクロールするまでのごくわずかな時間に、音や映像、文字情報を組み合わせて注意を引きつける科学的な作り込みだ。途中で視聴を止めた読者に対しては、ある種の心理的な負い目を解消させる仕掛けが用意され、物語が最も盛り上がる場面であえて先を伏せることで、次の一歩を後押しする構造になっていると佐野氏は説明する。

また、制作から配信までの速度が飛躍的に高まっている点は、佐野氏が特に力を込めて語る部分だ。加えて、視聴中の映像に登場する物や暮らしと購入体験を結びつける仕組みも取り入れられ始めており、娯楽の枠を超えた広がりを見せている。あまりの中毒性の高さから当局が是正に動く一方、地域振興のため地方が積極的に制作を誘致したり、社員教育の現場に応用したりする動きまで生まれているというから興味深い。
 
日々のスマートフォンとの付き合い方や、消費行動の裏側にある仕組みが気になる人にとって、なぜ人はここまで夢中にさせられるのかという視点が整理される、そんな内容にもなっている。

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現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営