《スクープ》茂木敏充・外相が自民党総裁選ですがった有力団体「ちんたい協会」に党員水増し・代理投票疑惑“幽霊党員の票がまとめて茂木氏に流れていた” 専門家は政治資金規正法への抵触を指摘
高市早苗・首相が自民党総裁選と総選挙の中傷動画疑惑で大炎上するなか、ポスト高市の"ワンポイント・リリーフ"として浮上しているのが茂木敏充・外相だ。だが、その茂木氏にも総裁選をめぐるある疑惑が持ち上がった――。
【独自入手】文書には「しっかり茂木先生を支援するように」との文言 「自民党総裁選挙への支援体制について」と題する通達文書
自民党最大のタブー「幽霊党員」問題
事実上の総理を決める自民党総裁選を左右するのが党員投票だ。投票できるのは年4000円の党費を2年以上支払っている党員(約100万人)で総裁選では国会議員票と同じ比重で計算される。高市首相は2024年、2025年の総裁選でいずれも党員票でトップに立ち、2025年に総理・総裁への道を拓いた。
現在、国会で追及されている中傷動画疑惑も党員票に影響を与えたとされるが、総裁選にはそれ以上に根深い問題がある。
自民党最大のタブーと呼ばれる「幽霊党員」問題である。
総裁選のたびに全国で「自民党員になった覚えがないのに投票用紙が送られてきた」という声が上がる怪現象が起きているのだ。党員になったことがなく、党費も支払っていない者がいつの間にか党員に登録され、その票が総理・総裁選びに影響力を持つ。なぜ、そんな問題が起きるのか。本誌はその実態を掴んだ。
自民党が裏金問題に揺れた2024年の総裁選は、当時の岸田文雄・首相が不出馬を表明し、石破茂氏、高市氏、小泉進次郎氏、茂木氏ら過去最多の9人が争う大激戦となった。
総裁選の2か月前の7月5日、当時幹事長で有力な総裁候補の1人だった茂木氏は東京・麻布の高級料理店で自民党最大の職域支部「自民党ちんたい支部連合会」の高橋誠一・会長と会談した。
同支部連合会は不動産管理会社の全国団体・全国賃貸管理ビジネス協会(全管協)や不動産オーナー(家主)の政治団体「全国賃貸住宅経営者協会連合会(ちんたい協会)」とその政治団体(ちんたい政連)などを母体とする職域支部で、党員数は約4万人とされる。全党員の4%にあたり、総裁選で国会議員票(当時は368人)14人分に相当する票を持つ計算になる。高橋氏は全管協の名誉会長、ちんたい政連とちんたい支部連合会の会長を務める業界の大立者として知られる。
「7月5日の高橋氏との会食の日、茂木さんは手をついて、総裁選の支援を頼み込んだ」
会談の内容を知る全管協関係者の証言だ。
自民党で不動産賃貸業界に強い力を持つのは党賃貸住宅議員連盟会長の石破茂・元首相で、ちんたい支部連合会も石破氏を長く支援してきた。
だが、本誌・週刊ポストが入手した内部資料によると、その年の総裁選では告示日の翌日(9月13日)付で自民党ちんたい支部の職域支部長や全管協の支部長・理事宛てに高橋会長名で〈自民党総裁選挙への支援体制について〉と題する部外秘の通達文書が出され、北海道、宮城、山形、栃木、群馬、茨城、山梨、富山、福井、熊本、沖縄の職域支部について、〈茂木敏充候補への団体としてのご支援〉を要請している。
「うちの団体はずっと石破さんを推してきたから、どうして茂木さんなのか不思議だった」(通達が送られてきた支部の幹部)
それだけであれば、総裁候補が党員票集めに奔走するのは当然で、ライバル候補の支持団体を切り崩しにかかるのも総裁選の常と言える。
問題はちんたい支部連合会の党員集めのやり方にあった。
従業員の名義を借りて会社が党費を振り込む
自民党の有力支持基盤である全管協など不動産賃貸業界、ちんたい支部には厳しい党員獲得ノルマがあるという。
本誌・週刊ポストが入手した内部資料〈2025年のちんたい党員目標案について〉によると、〈家賃消費税の非課税堅持等のちんたい重点要望を実現し続ける為に、ちんたい党員の拡大は必要不可欠である〉として、2024年の党員獲得目標は4万2000人で実績は3万9002人。2025年の目標は4万5000人とされ、各都道府県のちんたい支部ごとに2025年の獲得目標と2024年の目標と実績、達成率が一覧表にまとめられている。
全管協の幹部が言う。
「東京や大阪などでの敷金・礼金の商慣行を守り、居住用不動産の消費税非課税を維持するためには自民党への働きかけが必要だなどの理由で、党員集めに力を入れるようになった。
2か月に1度、同じ日の午前と午後にちんたい協会と全管協の理事会が行なわれ、その席で各地区の全管協の理事やちんたい協会の支部長一人ひとりに『何人お願いします』と党員獲得の目標が発表されるわけです。
事実上のノルマと受け止められています。全管協には約2000社が加盟しているが、社員数が多い会員がいる地区には、年間800人とか1000人以上の獲得目標が与えられ、『できません』と言うと個別に呼ばれて再三、達成を求められます」
そこで達成のために行なわれるようになったのが名義借りだという。
「一部の地区の理事や支部長は、目標を達成するために従業員などの名義を借りて党員に登録し、党費も会社で立て替えるようになった。うちの自民党県連では1人4000円の党費のうち2700円が県連に入り、1300円が支部に還付される。その還付金も次の名義借りの党員の党費に充てるわけです。都道府県の支部長は、下の支部にも党員獲得の目標を振るから、同じことが広がっていった」(同前)
そうして「幽霊党員」が組織的に再生産されていったという証言だ。
しかし、名義借りが発覚すると当然、反発もある。九州地区の自民党ちんたい支部の幹部からも証言を得た。
「党員集めで党費の肩代わりによる"水増し"が可能なのは、党員の名前と、党費を振り込んだ者の名前が違っていても問題がないとされているからで、会社が党費を振り込めるわけです。私自身、80人くらいの幽霊党員を作ったことがあるが、総裁選の投票用紙が送られてくるから本人にバレる。それでやっぱりおかしいと思って、それらの党員の離党届を出した。現在は私と妻だけが党員です」
名義借りが発覚して党員登録を抹消することになれば、目標達成のためにまた新たな党員を獲得しなければならない。
前出の全管協幹部は、「ちんたい支部では累計で見るとこれまでに数万人単位で党員の名義借りをしたことになるのではないか」と語った。
自民党の党員は各支部を通じて登録される。
この年の総裁選では、田畑裕明・代議士(富山1区)が、地元テレビ局に「架空の人物を党員として登録し、企業献金で党費を肩代わりした」などと報じられた。後援会企業の従業員に総裁選の投票用紙が送られてきて発覚したが、大半が実在しない人物の名前だったとされる。田畑氏は支部で登録した約700人の党員のうち、約100人が不適切だったと認めて謝罪した。
しかし、本誌の取材で、田畑氏のケースは氷山のほんの一角であり、自民党の支持団体・企業や職域支部で幽霊党員が全国で作られている構図が浮かび上がってきたのだ。
会員企業による「代理投票」まで行なわれた
では、そうした幽霊党員の票は2024年の総裁選でどう流れたのか。
総裁選の投票用紙は支部を通さずに党員の登録住所に直接郵送される。たとえ党員になった覚えがない幽霊党員であっても投票は可能だ。だが、幽霊党員の票が支部幹部によってまとめて投票されたケースもあるとの証言が得られた。
2024年の総裁選でちんたい支部連合会が茂木氏への支援を要請した11道県の支部のある県の幹部がこう語る。
「(名義上だけの党員が)住所の変更や退職したなどで総裁選の投票用紙が宛て先不明で届かずに県連に戻ってくるケースがある。その場合、投票用紙はもう一度、とりまとめて党費を払った会社のほうに送られます。投票期限も迫っていたので、私のほうで上から支援するように指示されていた『茂木氏』にまとめて投票をしました」
名義借りの幽霊党員だけでなく、会員企業による「代理投票」まで行なわれていたのだ。
いくら総裁選は公選法の対象外とはいえ、事実上の総理を決める選挙でこんなやり方が罷り通っているのでは、投票の信頼性が担保できているとはとても言えない。
政治資金や選挙を監視している上脇博之・神戸学院大学教授が指摘する。
「自民党の党員獲得についてここまで大規模な名義貸しと党費の肩代わりが行なわれていたとすると、政治資金収支報告書には党費ではなく会社からの寄附と書くべきで、政治資金規正法上、寄付者の不記載や虚偽記載の疑いが出てきます」
茂木氏とちんたい支部連合会は幽霊党員疑惑をどう受け止めているのか。
それぞれに聞いたが、締め切りまでに回答はなかった。
自民党組織運動本部に聞くと、文書で「わが党は、目標とする120万党員の達成に向け、職域支部においても党勢拡大に取り組んでいるところです。党本部として各級支部に対し、入党意思の確認はもちろんのこと、党則及び内規に基づき適切に手続きを行うことをあらゆる機会を通じて徹底している」と答えた。
幽霊党員の問題は、党勢拡大のためにこれまで名義借りや党費肩代わりを黙認してきた高市首相以下、自民党全体の責任でもある。
※週刊ポスト2026年6月26日・7月3日号
