【不眠と治療費用】不眠で病院に行くといくらかかる?初診・検査・治療費の目安をわかりやすく解説

不眠は「寝つけない」「途中で目が覚める」などの症状として、多くの人が経験することが知られています。その一方で、病院を受診した場合にどの程度の費用がかかるのかは十分に理解されていません。費用の見通しが立たないことが、受診や治療をためらう要因になることもあります。しかし、あらかじめ医療費の目安や利用できる制度を把握しておくことで、安心して治療に踏み出すことが可能になります。そこで今回は、不眠で医療機関を受診した場合の初診費用や継続治療費、活用できる公的制度についてわかりやすく解説します。


監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

どこに受診すればいい?診療科と受診先の選び方

眠れない日が続いたとき、最初にどの科を受診すれば良いか迷う方は多くいます。不眠の原因はさまざまで、ストレスや生活習慣によるものから、うつ病(うつびょう)や睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)などの疾患が隠れている場合もあります。そのため、症状の程度や背景に応じて適切な受診先を選ぶことが大切です。
まずはかかりつけ医や近くの内科で相談するのが最もハードルの低い選択肢です。症状が重い場合や専門的な診察が必要と判断された場合には、心療内科(しんりょうないか)や精神科(せいしんか)、睡眠専門クリニックへの紹介状(診療情報提供書)を書いてもらうことができます。心療内科・精神科では、不眠の背景にあるストレス、不安、抑うつ、適応障害、うつ病などを含めて診療します。医療機関によって診療範囲が異なるため、受診前に不眠症状に対応しているか確認するとよいです。
紹介状を書いてもらう際、紹介元の医療機関で『診療情報提供料』(3割負担で750円程度)がかかりますが、紹介先の大病院での選定療養費が免除されるほか、スムーズな引き継ぎが行われるため診察の質が上がります。
なお、紹介状なしに特定機能病院や200床以上の大病院を受診する場合は、別途「選定療養費(せんていりょうようひ)」として7,700円以上(税込)が加算されます。最初の受診はかかりつけ医や中小規模の病院・クリニックから始めることをおすすめします。

受診先特徴3割負担の目安こんな方に向いている

かかりつけ医・内科まず相談できる窓口。必要に応じて専門科への紹介状を書いてもらえる初診:700~1,000円程度とりあえず相談したい方・軽度の不眠の方

心療内科ストレス・心身症に関わる不眠の診察が可能初診:1,000~2,000円程度ストレスや不安が背景にある方

精神科うつ病・双極性障害など精神疾患に関わる不眠に強い初診:1,000~2,000円程度気分の落ち込みなど精神症状を伴う方や、原因が分からない方

睡眠専門クリニック睡眠障害を専門に診る。PSG等の検査が充実初診:2,000~4,000円程度不眠の原因を詳しく調べたい方

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

初診・検査費用の目安

不眠で初めて医療機関を受診した際の費用は、健康保険(けんこうほけん)が適用されます。健康保険とは、病気やけがをしたときに医療費の一部を国や会社が負担してくれる制度です。たとえば医療費が10,000円であれば、一般的な社会人(3割負担)の自己負担は3,000円となります。
費用は受診する医療機関の規模や行われる検査の内容によって大きく異なります。下の表は、初診時にかかることの多い費用の目安を3割負担でまとめたものです。症状が軽い場合は問診と処方のみで済むことも多く、初回の自己負担は3,000円以下に収まるケースも少なくありません。

費用の種類医療費の目安(10割)自己負担(3割)の目安

初診料約2,910円約880円

再診料約750円約230円

処方箋料約680円約200円

血液検査(甲状腺・血算など)3,000~8,000円900~2,400円

精神科専門療法(精神科・心療内科)550~6,000円200~1,800円

睡眠薬・抗不安薬(院外薬局・1か月分)1,000~3,000円300~900円

初回通院合計の目安約7,500~21,000円約2,000~6,500円

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

処方される薬は院外薬局で受け取る「院外処方」が主流です。院外処方の場合、薬局での支払いが別途発生しますが、ジェネリック医薬品(後発医薬品)を選ぶと薬代を3~5割程度抑えられることがあります。ジェネリック医薬品とは、先発品と同じ有効成分で同等の効果が認められた薬で、国が定める審査を通過したものです。

主な検査・診断方法の違い

不眠の原因を特定するための検査は、症状の重さや疑われる疾患によって異なります。すべての患者さんに検査が必要なわけではなく、問診だけで診断がつく軽度の不眠症も多くあります。一方で、睡眠時無呼吸症候群や概日リズム睡眠障害(がいじつリズムすいみんしょうがい)が疑われる場合は、専門的な検査が必要です。
概日リズム睡眠障害とは、体内時計のリズムがずれてしまい、社会生活のスケジュールに合わせた時間帯に眠れなくなる状態のことです。たとえるなら、体の中の時計が数時間ズレたまま動き続けている状態です。

検査方法内容自己負担の目安(3割)主な対象疾患

問診・診察のみ生活習慣・睡眠状況・ストレス背景を詳しく確認なし(診察料のみ)軽度の不眠症・適応障害

血液検査甲状腺機能・貧血など身体疾患を除外する900~2,400円甲状腺疾患・貧血・糖尿病 等

簡易睡眠検査(アクチグラフィー)手首装着型センサーで自宅にいながら睡眠サイクルを計測1,500~3,000円概日リズム睡眠障害・不眠症

PSG(終夜睡眠ポリグラフ)専門施設で脳波・呼吸・体動を同時に一晩かけて記録する精密検査20,000~50,000円(1泊)睡眠時無呼吸症候群・てんかん 等

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

PSG(終夜睡眠ポリグラフ)は最も精度の高い睡眠検査で、脳波・心電図・呼吸状態・体動を同時に一晩記録します。睡眠時無呼吸症候群の診断には保険適用で実施可能ですが、入院が必要なため費用が高めになります。後述する高額療養費制度を活用することで、自己負担の上限が設けられ費用を抑えることができます。

治療の流れと月々の継続費用

不眠の治療は、まず「睡眠衛生指導(すいみんえいせいしどう)」と呼ばれる生活習慣の改善から始まります。就寝・起床時間を一定にすること、寝る前のスマートフォン使用を控えること、カフェインや飲酒を制限することなど、薬を使わずに睡眠環境を整える方法です。軽度の不眠はこれだけで改善するケースも多くあります。
改善が見られない場合には、薬物療法や認知行動療法(にんちこうどうりょうほう)が加わります。認知行動療法(CBT-I)とは、不眠に対する誤ったものの考え方や行動パターンを修正する心理療法で、睡眠薬に頼らずに不眠を根本から改善できる治療法として世界的に推奨されています。週1回程度のセッションを6~8週間継続するのが標準的な流れです。ただし、認知行動療法(CBT-I)は実施している医療機関が限られます。保険適用の有無や費用は医療機関によって異なるため、事前に確認が必要です。
薬物療法で処方される睡眠薬は、近年、依存性が比較的低いとされる「オレキシン受容体拮抗薬(じゅようたいきっこうやく)」(レンボレキサント・スボレキサントなど)や「メラトニン受容体作動薬」への切り替えが進んでいます。以前から使われてきたベンゾジアゼピン系(けい)の睡眠薬は効果が強く依存性リスクがあるため、長期服用は避けることが推奨されています。

治療の段階主な治療内容月々の自己負担目安(3割)

生活指導のみ睡眠衛生指導(就寝時間・光・カフェイン管理など)再診料のみ:約500円~

薬物療法睡眠薬・抗不安薬・メラトニン受容体作動薬の処方再診料+薬代:約1,000~3,000円

認知行動療法(CBT-I)不眠に対する思考・行動パターンを修正する心理療法約2,000~5,000円(保険適用の場合)

精神科・心療内科(月1~2回通院)定期診察+処方管理。状態に合わせて薬の種類・量を調整月2,000~12,000円程度

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

知っておきたい公的制度

不眠の治療が長期にわたる場合、費用の負担を軽減してくれる公的な制度があります。「診断がついてから」でも申請できるものがほとんどですが、制度の存在を早めに知っておくことで選択肢が広がります。

■ 高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)

1か月間の医療費の自己負担が一定の上限額を超えた場合、超えた分が後から払い戻される制度です。上限額は年齢と収入によって異なります。たとえば年収約370~770万円の一般的な会社員であれば、月の上限は「80,100円+(医療費が267,000円を超えた分の1%)」となります。PSG(終夜睡眠ポリグラフ)の入院など高額な検査・治療を受ける場合でも、自己負担が抑えられることがあります。申請窓口は加入している健康保険組合または市区町村の国民健康保険窓口です。
事前に限度額適用認定証を申請することで、支払時に自己負担上限額まで支払を抑えることもできます。また、マイナンバーカード(マイナ保険証)でオンライン資格確認をすると自動で自己負担限度額が適用されるため、高額療養費の申請不要や、窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられるというメリットがあります。

■ 傷病手当金(しょうびょうてあてきん)

不眠症やうつ病などで仕事を休まなければならなくなったり、退職せざるを得なくなった場合に、会社員・公務員が加入する健康保険(協会けんぽ・健保組合)から支給される給付金です。給与の約3分の2に相当する額が、休業4日目から最長1年6か月間支給されます。自営業者や国民健康保険加入者は傷病手当金の対象外となりますが、自治体によっては独自の支援制度を設けているところもあるため、市区町村の窓口に確認してみましょう。申請窓口は勤務先の人事・総務部門または加入している健康保険組合です。

■ 自立支援医療制度(精神通院医療)(じりつしえんいりょうせいど/せいしんつういん)

うつ病・不安障害・統合失調症などの精神疾患で継続的な通院治療が必要な方を対象に、精神疾患にかかる医療費の自己負担を通常の3割から1割に引き下げる制度です。不眠症単独では対象外となることが多いですが、うつ病や不安障害を合併している場合は申請できる可能性があります。所得に応じて月額上限が設定されている場合、指定医療機関・指定薬局での対象となる精神通院医療については、上限額を超える自己負担が原則発生しません。
申請窓口は市区町村の障害福祉担当窓口です。

こんな不眠は要注意――すぐに受診すべきサイン

「眠れない」と感じる程度の不眠であれば、まずは生活習慣の見直しで改善できることもあります。しかし、以下のような症状がある場合、背景に別の疾患が隠れている可能性があります。睡眠不足の慢性化は、高血圧・糖尿病・心疾患・認知症のリスクを高めることが複数の研究で示されています。放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。

こんな症状があれば受診を考えられる主な原因

1か月以上、週3日以上眠れない日が続いている不眠症(慢性不眠障害)

日中の強い眠気・仕事中の居眠りが続く睡眠時無呼吸症候群・過眠症

眠ろうとすると足がムズムズ・不快感があるむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

気分の強い落ち込みや不安を伴っているうつ病・不安障害

いびきが激しく、呼吸が止まると指摘された睡眠時無呼吸症候群(SAS)

市販の睡眠改善薬を飲み続けても改善しない薬剤性不眠・精神疾患の可能性

特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)は注意が必要です。放置した場合、高血圧・脳卒中・心筋梗塞などの重篤な疾患を引き起こすリスクが大幅に上がります。また、重症化してCPAP療法(シーパップりょうほう:就寝中に専用マスクで気道を広げる治療法)が必要になると、定期通院を含めて月々8,000~20,000円程度の費用が生涯にわたってかかってしまいます。

編集部まとめ

不眠で初めて受診する際の自己負担は、一般的なクリニックであれば初回2,000~4,500円程度が目安です。検査や処方の内容によって異なりますが、高額療養費制度や自立支援医療制度を活用することで、継続治療の費用負担をある程度抑えられる場合があります。

初診の自己負担は3割負担で2,000~6,500円程度が目安。かかりつけ医や内科からのスタートがハードルが低くておすすめ

不眠の原因によって検査の種類は異なる。軽度なら問診のみ、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合はPSG(終夜睡眠ポリグラフ)が必要

継続治療費の目安は月1,000~12,000円程度。生活指導・薬物療法・認知行動療法(CBT-I)など治療法の選択肢は複数ある

「高額療養費制度」「傷病手当金」「自立支援医療制度(精神通院医療)」の3つを知っておくと、長期治療でも費用をある程度抑えられる場合も

費用面の不安は、医療ソーシャルワーカーへの相談で解決できることが多い

不眠症状が続いているなら、まずはかかりつけ医や近くのクリニックに相談してみてください。「眠れないくらいで受診してもいい?」と思う必要はありません。不眠は立派な医療の対象であり、早期に対処することで治療費も治療期間も抑えられます。費用の見通しが立つだけでも、受診へのハードルはぐっと下がります。

治療費や使える給付金についてわからないことがあれば、受診した医療機関の医療ソーシャルワーカー(いりょうソーシャルワーカー)に遠慮なくご相談ください。医療ソーシャルワーカーとは、患者さんの療養生活上の経済的・社会的な問題を一緒に解決してくれる専門職です。

※本記事の情報は2026年4月時点のものです。制度の内容・費用は変更される場合があります。詳細は各医療機関や加入している保険者にご確認ください。