OBS

写真拡大

新茶のシーズンを迎え、大分県内の産地では製茶作業が最盛期を迎えています。全国でわずか1%未満(0.36%)という伝統の「釜炒り製法」を守る佐伯市本匠。希少なお茶「因尾茶」の魅力に迫ります。

【写真を見る】蒸さずに“炒る”本匠「因尾茶」 全国わずか1%未満…希少な製法「釜炒り」を守る人々

「鉄釜」で炒る職人のこだわり

摘み取った茶葉は発酵を防ぐため、熱を加える必要があり、煎茶や玉露といった一般的なお茶は高温の蒸気で蒸して製造されます。

これに対し、「釜炒り茶」は鉄製の釜で炒って作られます。因尾茶の製茶工場はこの時期フル稼働。生産者の小野隆寿さんが作業を一手に引き受け、休む間もなく工程をこなしています。

蒸気を使わないため、水分の管理が鍵となる釜炒り茶。みずみずしい新芽の一番茶しか使わないといいます。

本匠因尾茶生産組合 小野隆寿組合長:
「『釜炒り茶って何?』という人が多いですね。急須のない家もあるし、本当の味がわからないと思う」

効率化の波に…

煎茶は細長い針状なのに対し、釜炒り茶は勾玉状の丸まった形が特徴です。一体どんな味がするのか、新茶を試飲させてもらいました。

井口キャスター:
「おいしいです。口いっぱいに香りが広がって、すっきりとした味わいで、お茶の味がしっかり楽しめます」

釜炒り製法が希少となっている理由について、豊後大野市にある県農林水産研究指導センターに聞きました。

県農業研究部茶葉チーム 佐藤正幸研究員:
「茶葉を収穫して自分の家の釜で炒って作ることができます。煎茶の機械化が進んで、釜茶がそれに乗り遅れて産地として縮小されていったという経過があります」

九州の山あいに残るのみ

かつては全国各地で行われていた釜炒り製法は、効率的な大量生産が難しく、今では九州の山あいの地域に残るのみといいます。

県農業研究部茶葉チーム 佐藤正幸研究員:
「九州でごくわずかに残っていて、佐伯市では組織的に作っています。あとは個人でやっている方が点々と残っている状況です」

佐伯市本匠で暮らす三原信行さんは、「昔は栽培から釜炒りまで手作りする家が多かったが、今では珍しくなった」と話します。

三原信行さん:
「昔はゴールデンウィークに子どもたちが帰ってきて、お茶を摘んだあと、バーベキューをしてご飯を食べていましたが、そういった機会も少なくなりました」

唯一守り続ける「家庭の味」

今でも家庭で釜炒りをしているのは、曽根田秀子さんただ一人です。別の地域に嫁いだものの、母亡きあとは茶摘みの時期に実家に戻り、釜炒りを続けています。

曽根さん:
「味が違うから。このお茶に慣れてるからこの味がいいですね」

5月7日、本匠中学校の生徒が曽根田さんを訪ね、釜炒りを体験しました。5時間から6時間もかかる製茶作業。19人の生徒は1時間ほど手伝い、地元の伝統への理解を深めました。

(体験した生徒)「釜で炒るとき、手が熱くなって少しきつかったけど、良いお茶ができたらいいな」「初めて体験したが、お茶のことをより深く知ることができたのでよかった」

江戸時代から受け継がれている本匠の「釜炒り茶」。この土地の歴史と人々の誇りが詰まっています。