※画像生成AIで作ってみました
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ポテチの袋が白黒になる」ニュース、聞きましたか?

カルビーは本日(2026年5月12日)、「ポテトチップス」「かっぱえびせん」「フルグラ」など合計14品について、商品の安定供給を最優先するためにパッケージに使用する印刷インクの色数を従来仕様から2色に変更すると発表しました。2026年5月25日(月)週より店頭で順次切り替えて販売するとしています。

ちなみにポテチ、めっちゃ簡素な感じなります。中身のイメージも「ポテト坊や」も消えちゃった。

※プレスリリースよりスクリーンショット
image: カルビー

背景にあるのは中東情勢の緊迫化です。印刷のための原材料の調達不安定化で、商品の安定供給を最優先とする観点からの「当面の対応策」としています。もちろん変わるのはパッケージのみで、商品の品質への影響はありません。対象商品と時期はカルビーの公式プレスリリースに詳しく掲載されています。

で、何が足りなくなるのかといえば…印刷ということであれば、こちらもニュースでよく聞く「ナフサ(粗製ガソリン)」が原因と考えられます。石油由来のナフサは、プラスチックや印刷インキの原料になるんですね。

「なんで食べ物のパッケージの話が石油の話になるの?」…そう思った方、ご安心ください。順番に説明します。

まず「ナフサ」ってなに?

ナフサとは、原油を精製して取り出される石油製品の一種です。「粗製ガソリン」とも呼ばれ、ガソリンと似た透明な液体ではあるのですが、用途も中身も別物です。

主に化学工業の原料として使われます。エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンといった「基礎化学品」の原料になります。これらの基礎化学品から、ポリエチレンやポリプロピレン、合成ゴム、ポリエステルなどが作られます。

つまり、プラスチック製品、合成繊維、食品パッケージのフィルムやインクといったものたちが、ナフサを原料として作られているわけです。

問題はそのナフサが直面している現実です。2026年2月28日、米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃を契機に、ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に陥りました。

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾の出口に位置する幅約33キロメートルの細い海峡です。世界の石油輸出の約3割(日量約2000万バレル)がここを通過しており、日本の原油の約9割もホルムズ海峡を経由しています。世界最重要のエネルギーの「喉元」が、今、実質的に閉じてしまっているのです。

プラスチック製品などの原料となるナフサは原油を精製して作られます。需要量の4割を国内の精製設備からの供給、6割を輸入で賄っており、そのうち7割以上を中東に依存しているといいます。中東からの供給が止まれば、当然、ナフサの調達も滞ります。

(もっとも、5月12日朝の会見で、佐藤官房副長官は「現時点では供給場の問題が生じるとの報告は受けておらず、日本全体として必要な量が確保されていると認識しています」と発表しています)

とはいえ、現実問題としてカルビーがパッケージ変更に踏み込んだように、何かしらの原因で不均衡が生じているのかもしれません。このあたりは引き続き注視するとして、ナフサと印刷の話を進めましょう。

ナフサとインクは、どうつながっているの?

「ナフサが不足したら、なぜパッケージの色が消えるの?」というのが、今回のポイントです。

食品パッケージの袋に鮮やかな色を載せるには「グラビア印刷(軟包装グラビア印刷)」という方式が主に使われています。

業界団体である印刷インキ工業会によれば、印刷に使うインキは大別して着色材(顔料や染料)、ワニス(合成樹脂、油脂類、溶剤など)を主材とし、これに添加剤(活剤、硬化剤など)を加えた3つの要素から成っています。

溶剤がなければ、着色剤をフィルムに均一に溶かして定着させることができません。そしてこれらの溶剤の多くが、ナフサを原料とする石油系化学品から作られているのです。だからこそ、「ナフサ不足=インク不足」に直結してしまうんですね。

実際、印刷インクメーカーのサカタインクスは、印刷インキに不可欠な溶剤・樹脂などの原材料の調達が急速に難しくなっており、特にインキや希釈用溶剤については原材料の入荷制約が顕著な状況にあると4月2日に公式発表しています。

ではポテチパッケージは、なぜ白と黒ならOKなの?

※写真を加工したイメージ画像です
image: 長谷川賢人

カルビーのポテチパッケージのようにカラフルな色を諦めて2色に絞る、というのは本当に解決策になるのでしょうか?

答えは「Yes」で、理由は着色剤に使われる顔料の「種類の違い」にあります。

顔料は「無機顔料」と「有機顔料」に分けられます。無機顔料は天然の鉱石や金属の化学反応によって得られる酸化物などから作られる顔料で、有機顔料は石油などから合成した顔料です。ここが重要なポイントですね。

白インクの顔料の「酸化チタン」はチタンという金属の酸化物、つまり鉱物由来の無機顔料。石油を原料とする有機溶剤に大きく依存しません。

黒インクの顔料である「カーボンブラック」は炭素の微粒子。石油の不完全燃焼でも作られますが、天然ガスや石炭からも製造でき、調達経路が比較的多く、在庫も確保しやすい無機顔料です。

一方、赤・青・黄・緑などのカラフルな色は「アゾ系顔料」と呼ばれる有機顔料が担うことが多いのです。この鮮やかな発色をもたらす有機顔料も、ナフサを原料とする石油化学製品から合成されるのです。

さらにカラー印刷では、各色の有機顔料を溶かして均一に塗布するために大量の有機溶剤も必要です。白黒2色に絞れば使う顔料の種類が減り、溶剤の消費も抑えられます。

あるいは、紙など白っぽいパッケージの製品なら、「黒インク」だけで刷って、地の色を活かすデザインも考えられますね(印刷でいう「スミ一色刷り」ですね)。

もしコンビニが全部「白黒」になると、どうなんだろう…?

ナフサの供給難でインク原料の溶剤などが不足する状況は他のメーカーも同じとみられ、今後カルビーと同様の動きは広がるかもしれません。包装のデザインを簡素化したり、無地のパッケージを検討したり。

ちょっと想像してみましょうか。

いつも通りコンビニに入る…棚を見渡す…見慣れたブランドの商品が並んでいるけれど、全部白か黒か透明のパッケージ…カラフルで映えるお菓子も、カラフルなイラストで目を引いていた飲料も、ぜーんぶモノトーンの世界。

image: 長谷川賢人

……あれ、案外かっこよくないですか?

パッケージデザインって定期的にミニマルなデザインが好かれますし、それこそ昔の無印良品って、銀色の袋で文字だけのパッケージでお菓子売ってたりしませんでしたっけ。

※画像生成AIで作ってみました
image: Kento Hasegawa generated with FlowImage

もし、コンビニの棚が全部白黒になったら、ちょっと「未来にこういう方向性もあったかも感」が出てきますね。いっそ「禅」の境地というか、日本らしい侘び寂びを感じさせる空間になる?(言い過ぎか)

もっとも視認性やブランド識別は本当に難しくなるので、パッと手にとって買うとか、テンションが上がるとかが無くなりそう……あと、どれがどの味かすぐにわからないという実用的な問題があります。

カップヌードルもなんか軍用みたいになりましたね。わからないけど、これはこれでデザイン調整したらいけそう。

※写真を加工したイメージ画像です
image: 長谷川賢人

なんなら「世界情勢と環境に配慮したモノトーンコンビニ爆誕」なんてニュースをまた書く日が…そのうち来たりするかもしれませんね。

今のところは、白黒袋のポテチを食べながら「これが2026年か……」とつぶやくのも、また一興でしょうか。この記事を書きながら「のりしお」食べましたが、やっぱりおいしいなぁ。

Source:カルビー , FNNプライムオンライン , 日本経済新聞 , 経済産業省 , 資源エネルギー庁 , 印刷インキ工業会 , サンコー商事 , サカタインクス Ink , Spectee , artience

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