『エイリアン:アース』©2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

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 「エイリアン」と聞いたとき、あなたはどんな外見の地球外生命体を想像するだろうか。タコのような見た目の生き物を想像する人もいるかもしれないし、いわゆる「グレイ」と呼ばれるような巨大な頭に白目のない大きなアーモンド型の目を持った、銀色の体の二足歩行の生命体をイメージする人もいるかもしれない。だが、ある一定の人たちは、長い後頭部と目のない顔が特徴的な「ゼノモーフ」を連想するだろう。それほどまでに1979年に公開された『エイリアン』に始まったシリーズは、「エイリアン=地球外生命体」のイメージに大きな影響を与えたと言える。これまでに7作の映画が製作・公開された大人気シリーズの最新作『エイリアン:アース』は、初のドラマシリーズとして注目を集めている。

 物語の舞台は2120年。シリーズ1作目『エイリアン』の2年前だ。地球は国家でなく「プロディジー」、「ウェイランド・ユタニ」、をはじめとした、5つの企業によって統治されていた。その下で人間は、生物学的な部分と人工的な部分を併せ持つ人間であるサイボーグや、人工知能を持つ人型ロボットであるシンセティックと共生している。しかし、プロディジー社の若き創業者兼CEOのボーイ・カヴァリエ(サミュエル・ブレンキン)は、ハイブリッドという新たな技術を開発し、不死競争における新たな幕開けを告げる。これは人間の意識を吹き込んだアンドロイドで、不治の病の少女の意識を移植されたハイブリッドのプロトタイプ、“ウェンディ(シドニー・チャンドラー )”が誕生した。そんななか、5種の未知の生命体を載せたウェイランド・ユタニ社の宇宙船がプロディジー・シティに墜落。ウェンディは実の兄ハーミット(アレックス・ロウザー)がその救助活動に駆り出されたと知り、兄を助けるため、宇宙最恐の生命体を積んでいるとは知らずにほかのハイブリッドたちとともに墜落した宇宙船に足を踏み入れることになる。

 特別映像を見ると、5種の未知の生命体のなかには、ナメクジのように皮膚の上を這い回る生命体や、タコのような複数の触手を持った生命体も映し出されている。2種とも小型ながら背筋の凍るような不気味さと恐ろしさがある。残りの2種の生命体も含め、彼らはそれぞれどんな恐ろしい生態を持っているのか。しかしもっとも注目なのは、やはり見覚えのあるゼノモーフの姿だ。黒く光る長い後頭部と鋭い歯や爪、そして俊敏な動きと怪力は、これまでのシリーズで私たちを恐怖のどん底に落とし入れてきた“宇宙最恐の生命体”そのもの。そんなゼノモーフをはじめとする未知の生命体が大暴れする『エイリアン:アース』は、シリーズの最新作にふさわしい、過激な映像表現が満載だ。残虐で血みどろなシーンの数々に、シリーズのファンはもちろん、『エイリアン』シリーズを観たことがないという人も釘付けになってしまうだろう。ゼノモーフだけでなく、未知の生命体たちは揃いも揃って凶暴な生態を持っているようで、小型の生命体であっても油断はできない。彼らがどんな恐怖を味わわせてくれるのか、そこも見どころになるだろう。ゼノモーフはもちろん、それ以外の生命体たちにも注目したい。

 また、もうひとつ本作がこれまでと大きく違うのは、地球が舞台になっているということだ。これまでの映画シリーズでは宇宙船内や地球以外の惑星での戦いが描かれてきたが、今回はゼノモーフを含む未知の生命体が積まれた宇宙船が地球に墜落するという衝撃的な事故から幕を開ける。ウェンディたちはそれらの危険な生命体が地球に解き放たれる危機に直面しているのだ。『エイリアン』シリーズ特有の密室劇ではあるが、彼女たちは自分たちが生き残ることだけではなく、「エイリアンたちを宇宙船の外に出さない」という危険かつ不可能に近いミッションに挑まなければいけない。

 ウェンディたちがこの困難なミッションに挑む宇宙船内は、タイに建てられたセットで撮影された。このリアルで精巧なセットは、視聴者を作品の世界観に没入させる。シリーズのファンとしてうれしいのは、この宇宙船内が1作目に登場したノストロモ号にそっくりだということだ。『エイリアン:アース』は1作目の2年前が舞台ということで、宇宙船のテクノロジーの部分ではそこまで違いがないのだろう。シリーズの生みの親であるリドリー・スコットがエグゼクティブ・プロデューサーを務めている本作は、エミー賞をはじめとする賞レースを席巻した『SHOGUN 将軍』(2024年)のFXによる製作であることも相まって、世界観の作り込みが半端ではない。本格的なサバイバルスリラーを展開するうえで、このリアリティは必要不可欠の要素となっている。

 一方で、ハイブリッドの誕生など科学技術の進歩を感じさせる部分もある。『エイリアン』シリーズの魅力のひとつは、科学技術の進歩によるサイボーグやシンセティックの活躍だ。普通の人間と変わらない見た目の彼らは、これまでの作品のなかでもストーリーを左右する重要な役割を担ってきた。『エイリアン:アース』ではそこにハイブリッドも加わり、生身の人間との違いや関係性も注目ポイントのひとつとなりそうだ。未知の生命体が来襲するなか、サイボーグ、シンセティック、ハイブリッドは、破壊されることはあっても人間と違って“死ぬ”ことはない。一方で死から逃れられない人間は、危険な生命体と戦ってまで生き残る必要があるのだろうか。死なないハイブリッドとなったウェンディが、生身の人間である兄ハーミットを助けようとするのは「人間とはなにか」を考えるうえで重要な要素となるかもしれない。

 また、ハイブリッドを開発したカヴァリエは若き鬼才で興味深いキャラクターだ。どこか倫理観の欠如を感じさせる彼は、大人の体に12歳の少女の心をもつウェンディとある意味で似た部分を持つ人物ではあるが、彼女とは対極の“純粋さ”を持っている。彼がハイブリッドの開発によってなにを企んでいるのか、純粋なウェンディがその隠された秘密を知ったとき、どのような行動に出るのか。そういったドラマにも期待したいところだ。

 『エイリアン』シリーズの最新作、そして初のドラマシリーズとして注目を集める『エイリアン:アース』。主人公ウェンディをはじめとする新たな技術の結晶であるハイブリッドたちは、未知の生命体との戦いのなかで、どのような運命をたどるのか。『エイリアン』シリーズのDNAを受け継ぎながら、新たな要素も詰め込んだ『エイリアン:アース』は、シリーズのファンのみならず、大注目の作品となっている。

(文=瀧川かおり)