現在51歳のsimeji(@gbsimeji)さんは、10年前、41歳のとき髪の一部が抜け白髪染めをやめることに。当初はダメージを受けた頭皮がよくなるまでのつもりでしたが、グレイヘアになった自分を見たときに「この髪色で生きていこう」と決意を固めたそうです。

【写真】美しすぎるグレイヘア「ショートもロングも素敵」なsimejiさんの現在(全11枚)

マイナスなことを言われない姿になりたかった

白髪染めをやめる数か月前のsimejiさん

── 約10年前、41歳のときに白髪染めをやめたsimejiさん。グレイヘアになる前はどんな髪だったのでしょうか?

simejiさん:子どものころから若白髪がありましたが、抜いてどうにかなるぐらいの本数でした。年代を重ねてちょっとずつ増えてきたんですが、20代になってからはカラーリングをしていたので特に気にしていなかったんです。ただ、30歳を超えたころ、「そろそろ白髪染めにした方がいいんじゃないか」と美容師さんに言われて。初めて白髪染めに変えなきゃいけないくらいの本数があるんだと自覚しました。

そこから、白髪が目立ってくると気になってしまい、1か月に1回は白髪染めをするようになりました。パーマや縮毛矯正もしていたので、髪の毛にはダメージがあったと思います。

── それだけ白髪を気にされていたのにもかかわらず、41歳のときに白髪染めをやめ、グレイヘアになることを決断されます。きっかけはなんだったのでしょうか?

simejiさん:あるとき、後頭部にハゲができていることに気がついたんです。病院にも行ったり自分でも色々調べたりしたと思うのですが原因はわからず。ただ、髪の毛が抜けているあいだは頭皮に刺激を与えることはやめたほうがいいとわかったので、白髪染めをやめようと思ったんです。

当時は「治ったらまた染めよう」くらいの気持ちで、グレイヘアに完全に移行しようという気持ちはありませんでした。

── 治るまでの期間限定の予定だったんですね。

simejiさん:はい。しばらく白髪で生活することになるからどんなヘアスタイルになるのか調べました。ただ、10年も前の話なので当時はまだ「グレイヘア」って言葉がなかったんですよね。ネットで「白髪染め やめた」などのワードで調べてみても例がまったく出てこなくて。白髪染めをやめたらどうなるのかがわからなかったんです。

── 情報もなく、41歳という年齢で白髪染めをやめることに、不安は大きかったと思います。

simejiさん:とても不安でした。調べても白髪染めをやめることに否定的な情報しか出てこなくて、「調べなきゃよかった」とも思いました。「白髪染めはして当たり前」とか「白髪を染めない女性なんて」といった否定的な言葉しか出てこなくて、「どうしよう」と途方に暮れていました。

そんななか、現在「グレイヘア東京」というYouTubeチャンネルを主催している、白髪ねぎさんという方のブログを見つけたんです。ねぎさんも当時40代前半で白髪染めをやめるという記事を書いていて、「やっと見つけた!」とうれしくて仲間のように思って読んでいました。

── 身近な方に相談はしましたか?

simejiさん:頭皮の問題があり、白髪染めをやめることはすでに決めていたので、周りには相談しませんでした。それに白髪についての考えは人それぞれだし、「やめた方がいいかな?」「どうした方がいいと思う?」と聞いても、困らせてしまうなとも思ったんですよね。

あ、でも、白髪染めをやめる前に友達のひとりに「ハゲができたから白髪染めをやめようと思っている」と話したことがありました。そうしたら「白髪染めをやめるってどうなの?」と少し辛辣なことを言われてしまって。仲がいい友達にそう言われてちょっと悲しくなり、「まずは完成した姿を見てもらおう」「グレイヘアになったときにマイナスなことを言われないような姿になりたい」と思うようになりました。

白髪染めした髪を切って「これだ!」と

10か月間伸ばし続けてグレイヘアに

── グレイヘアへはどんなふうに移行されたんですか?

simejiさん:それまで1か月に1回通っていた美容室にいっさい行かず、ひたすら髪を伸ばし続けました。当時は白髪と黒髪が半分半分くらいの割合だったので、後ろでしばるとそんなに目立たなかったんです。だから、仕事に行くときはカチューシャを使ってひとつにまとめて結んだり、友達と会うときはニット帽をかぶって隠したりしていました。伸ばしているときは見苦しかったので本当にいやでしたね。

10か月後にはグレイ部分がショートへアくらいの長さになったので、白髪染めしていた部分をばっさり切りました。そのとき、グレイヘアになった自分を見て「これだ!」としっくりきたんです。これが本当の自分の髪色なんだと思ったら、「治っても染める必要ないな、この髪色で生きていこう」って思えました。

── とても大きな変化ですよね。

simejiさん:グレイヘアになった日は、私にとって白髪を敵にしなくなった記念日でもあります。グレイヘアになってからは「ヘアスタイルを楽しもう」というメンタルに変わりました。人とは違うふうになったからこそ、「何でもあり」という意識が芽生えたというか。年齢を重ねて「もうおばちゃんなんだからいいや」といろいろ楽しくなってきたというのもあるのかもしれません(笑)。

40代って体型が変わってきて、服装や髪型、メイクなどそれまでしっくりきていたものが突然、似合わなくなったりする年代ですよね。私も白髪染めをやめるちょっと前は、何をやっても全然かっこよくなかったんです。自分を見つけられないというか。

── そういうタイミング、ありますね…。

simejiさん:でも、髪色に関わらず似合うスタイルは必ずあるはずと、グレイヘアになってからは何が自分にいちばん似合うのかを試しながら探しました。

たとえば、グレイヘアになって1、2 年目には青のヘアマニキュアをメッシュのように入れていました。当時は白髪の本数がまだ少なく中途半端な感じだったので、メッシュを入れることでグレイヘアを楽しんでいる人に見られたかったのもあります。髪型自由の職場だったので思いきり好きなスタイルにしていました。

少し色が落ちてしまっているんですが、今は黒とブルーのインナーカラーが入っています。グレイヘアあるあるらしいんですが、後頭部って白髪になりにくいらしいんです。私も例にもれず、後ろは黒と白のまだらなんですね。それが嫌なのと、黒と白のコントラストがはっきり出ておしゃれに見えるかなと思い、後頭部の一部を白髪染めで黒染めしています。その上から広範囲にブルーのヘアマニキュアをしているんです。ヘアマニキュアって頭皮や髪への負担が少ないし、黒い髪だと色を入れるために脱色しなければならないけど、白髪だときれいに色が入るんですよ。

黒とブルーのカラーを入れたツーブロックスタイル

── simejiさんのインスタグラムを見ると、グレイヘアになってから10年間、さまざまなスタイルを楽しんでこられたことがよくわかります。

simejiさん:グレイヘアだって自由に楽しんでいいんですよね。それぞれみんな白髪の生え方が違うからこそ、その人に似合う髪型って必ず見つかると思うんです。だから悩んでいる人はまず美容師さんに相談してみたらいいのではと思います。

── ちなみに、髪の毛が抜けていた部分は治りましたか?

simejiさん:いつのまにか治っていました。 毛が抜けるのには染毛剤などのダメージだけでなくストレスなどいろいろな原因があるみたいなので、白髪染めをやめたから治ったとは一概には言えないんですけど。今はふさふさです(笑)。

グレイヘアについて話せる場所を作りたい

── よかったです!グレイヘアになってから周りの反応はどうでしたか?

simejiさん:友達は「いいんじゃない」と悪くない反応でした。仕事や趣味の場で初めて会う人にはやっぱりびっくりされますね。「なぜ白髪なのか」「どういう人なのか」と興味を持つみたいです。そこから「白髪が増えてきてどうしよう」とか「ずっと染めているんだけど、毛量が気になる」と話しかけられて、白髪のおかげでコミュニケーションが増えました。みなさん興味あるんだなと感じます。

── さまざまな悩みがあると思いますが、白髪に悩んでいる方やグレイヘアに興味がある方に伝えたいことはありますか?

simejiさん:「グレイヘア」で検索すればSNSや記事がたくさん出てくるのでそれを参考にするのもいいと思いますし、私はオフ会などでいろんなグレイヘアの人に会うことをおすすめしたいです。実際に悩みを話したり、聞いたりすることで気づきがあるかもしれないし、自分が目指したいと思うグレイヘアの人に会える可能性もありますし。

私も「グレイヘア東京」のオフ会に参加しているんですが、参加者それぞれグレイヘアになったきっかけや状況は違うけれど、否定的な意見もあるなかでグレイヘアになることを選択した思いは同じなので、すごく励まされています。悩みや思いを共有できる場所がもっと必要だと思って、私もグレイヘアの人で集まるお茶会を始めました。

── 悩みをわかち合える場があるのはいいですね。

simejiさん:友達同士でもなかなか共有しづらい話題ですし、家族に「老けて見えるから」とグレイヘアになることを反対される方も多いんですよね。白髪を染めたくてもアレルギーなどで染められないとか、髪が薄くなってきたのでやめたいとか、それぞれいろいろな事情もあります。

まだまだ白髪は染めるものだという考えが根強いですが、白髪染めをする選択も、しない選択もあっていいと思いますし、白髪染めをやめたいときにその人その人の好きなタイミングでやめられて、受け入れられる時代になったらいいですね。そのために、私も「こういう人がいるんだ」という一例になれたらなと思っています。

取材・文/阿部祐子 画像提供/simeji