大敗アメリカ戦で露呈した大岩Jの“本当の実力”。個の能力が圧倒的に不足。今のままではパリ五輪でメダル獲得は厳しいだろう
パリ五輪を目ざすU-22日本代表が、10月8日から17日までアメリカ遠征を行なった。現地で2試合が組まれ、結果は1勝1敗だった。
パリ五輪の出場権は逃しているが、前回の東京大会で銅メダルを獲得したメキシコには4−1で勝利を掴んだ。相手は10月下旬に始まるパン・アメリカン大会(アジア競技大会に相当)に向けて再始動したばかり。23歳の選手も5名いたチームに対し、前線からのハイプレスがハマって相手を圧倒した。
日本の出場メンバーを見ると、メキシコ戦よりもアメリカ戦に比重を置いた感が強い。「アメリカは力の入れ方が違うんじゃないかな」と反町康治技術委員長は話しており、2戦目に標準を合わせるのは自然の流れだった。
そうした側面も踏まえ、メキシコ戦は“テスト感”が強かった。大岩ジャパン初招集のMF福井太智(バイエルン?)をアンカーで先発に抜擢し、パリ五輪世代のチームでは初出場となるGK野澤大志ブランドン(FC東京)をスタートから起用。前半で2−0としたため、後半は選手をより試しやすい状況になり、新井悠太(東洋大/東京V内定)や近藤友喜(横浜FC)といった初参戦組のサイドアタッカーも20分以上の出場時間を得られた。
遠征3日目に負傷した藤尾翔太(町田)に代わって追加招集したFW内野航太郎(筑波大)も、試合前日の合流ながら後半開始からピッチに立って1ゴールをマーク。フレッシュな選手たちのプレーはポジティブな要素だった。
ただ、忘れてはいけないのが、メキシコの強度がそこまで高くなかったという点だ。実際に戦った選手たちも、相手からは球際の迫力やタフさをそこまで感じられなかったという。
「力強さはもっとあるかなと思った。(僕らもボールを)そこまで奪えていないので、なんとも言えないけど、もう少し強い想定はしていた」(CB木村誠二/FC東京)
「そこまでガツガツというシーンはなかった」(CB鈴木海音/磐田)
だからこそ、メキシコ戦の結果を真に受けるのは難しく、本当の意味で試されるのが次のアメリカ戦であるのは想像に容易い。
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迎えた遠征ラストマッチ。メキシコ戦で主力組は出場時間を抑えており、状態は決して悪くない。昨年6月のU-23アジアカップ以来の招集となるCBチェイス・アンリ(シュツットガルト)や、久々の招集となった左SBバングーナガンデ佳史扶(FC東京)はテストの意味合いが強いように感じたが、負傷でメンバー外となったMF斉藤光毅(スパルタ)と、A代表の活動に参加していたGK鈴木彩艶(シント=トロイデン)を除くと、今考えられるベストな布陣でアメリカ戦に臨んだ。
しかし、結果は――。スコアでも内容でも完敗と言わざるを得ない内容だった。
開始6分にチェイスのパスミスからカウンターを浴びて先制点を献上。出鼻を挫かれると、以降はパワーとスピードを武器にグイグイ押し込んでくる相手に、ほぼ手も足も出なかった。
「自分たちのクオリティの低さが出たし、蹴らせてもいいけど、その後の回収が自分も含めて疎かになった」とはMF三戸舜介(新潟)の言葉。ビルドアップは封じられ、中盤の攻防でも競り負けてセカンドボールの回収ができなかった。
もっとも、自分たちの時間が作れなかったわけではない。15分からは、前線からのプレスで相手を自陣の深いところまで押し込んだ。FW細谷真大(柏)が前から圧力を掛け、左サイドに追い込めば三戸とバングーナガンデが、中央であれば松木玖生(FC東京)がボールを刈り取ってカウンターを仕掛ける。だが、いくつか良い展開もあったものの、ボールを奪った後のクオリティが上がらなかった。
「もっと前線でボールを奪って、ショートカウンター気味の攻撃もできた」(松木)
35分にバングーナガンデの左CKから松木のゴールで同点に追いついたが、決定機と呼べるものはほとんど作れなかった。
すると、ジリジリと押し戻されると、前半終了間際にロングボールで左サイドの裏を取られ、一気に局面を打開されてクロスからゴールを許した。
最終ラインを3枚入れ替えた後半は、再びアメリカのペースになり、耐える時間が続く。57分にはペナルティエリア手前右のポケットからボックス内にパスを付けられ、あっさりとネットを揺らされた。
73分にもFKから失点。ディフェンスラインと背後にボールを入れられると、GK佐々木雅士(柏)の手前で触られて4点目を許した。
アメリカ戦のパフォーマンスは決して褒められるものではない。自分たちの時間帯が前半にあったとはいえ、体格と身体能力で勝る相手に苦戦。「ゴールに向かってくる勢い、ボールを失わない気持ち。そういうのが伝わってくる感じがした」(三戸)。この言葉からも、今までにない感覚があったのだろう。
確かに積み上げてきた前線からの組織的な守備は通じ、戦術的な練度は日本に分があったかもしれない。だが、ボールを奪うことや攻守におけるゴール前の強さは相手が上。“サッカーの本質”の部分を含め、“個の能力”でアメリカに負けていた。
特にCB陣は、相手FWに対抗できるだけの力に物足りなさがあり、攻守で課題を露呈。木村はなかなかボールを運べず、身体のぶつけ合いでも後手に回った。チェイスもドイツで自信を深めていたものの、“繋ぎ”の部分で拙いプレーが頻発。後半開始から出場したCB西尾隆矢(C大阪)もビルドアップで成長の跡を見せたが、世界基準で考えれば、さらなるレベルアップが求められる内容だった。
ただ、1−4の結果に驚きはない。過去の欧州遠征でも、力の差を見せつけられても立て直してきたが、相手が後半にペースを落としたからであって、一歩間違えれば大差がついてもおかしくなかったからだ。
昨年9月のイタリア戦(1−1)や今年3月のベルギー戦(2−3)はまさにそう。前半に苦しんでも僅差のゲームに持ち込めたが、今までは最終的なスコアに隠されて問題が表面化していなかっただけなのだ。
世界で戦うためには、まだまだ力不足。今遠征でも三戸が打開力の高さを示し、中央でもサイドでも機能することを証明すれば、細谷も身体の強さと攻守で賢さを見せて、上のステージで戦える可能性を感じさせたが、全体的には厳しい。自クラブでレギュラーの座を掴めていない選手が少なくなく、個の能力は圧倒的に足りていなかった。
今のままではパリ五輪でメダル獲得を目ざすのは難しい。だが、幸いにも最終予選までは時間はある。
「局面、局面での個人戦術や(荒れた)ピッチ状況など、いろんなエクスキューズはある。だけど、試合になった時に何が出るかというと自力の部分。そういうところは目を背けず、次に向けての良いレッスンにしようと選手に話した」
大岩剛監督の言葉は選手たちに響くのか。アメリカ戦は大岩ジャパン発足後では初の4失点となったが、この大敗を意味あるものにできるかは自分たち次第。良薬は口に苦し――。アメリカ戦の大敗を肝に免じ、前に進んでいくしかない。
取材・文●松尾祐希(フリーライター)
