プーチン大統領を焦らせる戦線の“残酷な現実”…新兵の平均生存時間は「35分」、進軍できたのは「1日わずか50メートル」 独裁政権がもたらした「異常な戦死者数」
世界最大の通信社であるロイター(日本語・電子版)は7月5日、「トランプ氏、ロシア・ウクライナ両大統領と電話会談 NATO会議控え」との記事を配信した。プーチン大統領の補佐官が発表した声明によると、プーチン大統領はトランプ大統領に《ロシア軍が自信を持って前進し、次々とウクライナの地方を解放しているのが「戦争の実情」》だと説明したという。だが、果たしてこれは真実なのか。(前後編の前編)
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軍事ジャーナリストは「今、最も激しい戦闘が繰り広げられているのは、ウクライナのドネツク州です」と言う。
「2024年4月から今年1月まで、ドネツク州の鉱山都市・ポクロウシクで激戦が繰り広げられました。ロシアは国民に反戦感情が広がるのを恐れており、傭兵や囚人で部隊を組織しています。そして指揮官は全滅前提の突撃・人海作戦を繰り返し命令し、ウクライナ軍は『ロシア軍に数十万人単位の死傷者が出た』との推定値を明らかにしました。太平洋戦争の沖縄戦でも日本軍の戦死者は9・4万人ですから、ロシア軍の損耗は桁が全く違います。今年の5月からはコンスタンチノフカという小さな街を巡って再び激戦が始まりましたが、多くの死傷者を出しながらロシア軍が前進できたのは『1日50メートルに過ぎない』と、アメリカのシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)は分析しています」

CSISは「ロシア軍の死者、負傷者、行方不明者を合わせた死傷者数は140万人に達した」と発表。ロシアの人口は約1億4000万人のため何と人口の約1%──それも基本的には男性──が重大な被害を受けたことになる。
ロシア軍は兵員不足を補うため外国人傭兵を雇っている。他にも低所得者の多い地域や、少数民族に高給を提示して入隊を募っている。
20分から35分で死ぬ新兵
ロシアの反体制メディアは「男性がいなくなった小規模の村が増加した。みな入隊し、戦死したためだ」と報じているという。
「アメリカの一部メディアは、ロシア軍の新兵が入隊し、前線に送られて戦死するまでの期間は10日から3週間に過ぎないと報じています。特に戦闘中での“平均生存時間”は20分から35分しかないという驚異的な内容です。韓国の中央日報が日本語電子版で詳しく伝えており、日本人もロシア軍のひどい実態を知ることができます(註)。7月3日にはロシア軍のラシモフ参謀総長がプーチン大統領にコンスタンチノフカの制圧を報告しましたが、これもアメリカ戦争研究所(ISW)が『明確な嘘』と否定しています。プーチン大統領がトランプ大統領に胸を張って言ったような、ロシア軍が『自信を持って前進』するような場面など、どこにも見当たらないのです」(同・軍事ジャーナリスト)
戦果を誇る発表内容から、プーチン大統領の焦りを読み解くのは難しいことではない。今となっては噴飯ものだが、大統領は2022年9月、ドネツク州を含むウクライナ東部・南部4州の併合を一方的に宣言した。担当記者が言う。
独裁制と異常な戦死傷者
「ロシアが軍事力でドネツク州を完全に占領し、それから併合を宣言するのならまだ分かります。ところがプーチン大統領は併合を宣言してから、ドネツク州で侵攻作戦を実施しているわけです。戦史に類のない桁外れの戦死者が出ても作戦を継続し、『順調に進軍している』などの虚偽発表を繰り返しているのは、とにかくデタラメでも何でもいいので戦果を国民にアピールしたいのでしょう。裏を返せば、プーチン大統領は相当に追い詰められていることが見て取れるわけです」
軍事ジャーナリストは「ロシアは独裁国家ですから、プーチン大統領の命令は絶対です。それが大きな悪影響を与えています」と指摘する。
「民主主義国家は『シビリアンコントロール(文民統制)』の基本原則を遵守します。公正な選挙で有権者に選ばれた政治家が軍を指揮、統制するわけです。とはいえ、軍は大統領や首相の命令なら何でも従うわけではありません。言論の自由が保障されている国家なら、トップが『何が何でもコンスタンチノフカを占領しろ』と命令しても、それに合理性が認められなければ、軍のトップは『コンスタンチノフカは守りを固めているので、別の街を攻撃しましょう』などと代案を提示して協議することが可能なのです。また前線には状況を正しく判断できる下士官がおり、その存在と判断が部隊の生存率を上げています。その下士官がロシア軍には全く不足しています」
追い詰められたプーチン
だがプーチン大統領は独裁者のため、その命令は絶対だ。大統領が直接の命令を下していない場合でも、いわゆる“忖度”が横行する。
「『どうあってもコンスタンチノフカを占領する』と無謀な攻撃を続け、桁外れの戦死傷者が出ている理由の一つでしょう。これも全ての原因は、プーチン大統領がドネツク州の併合を発表したからです。併合を既成事実化するため猛攻撃を開始すると、ウクライナ軍が必死に抵抗するので頓挫します。前進しないと自分のメンツが潰れるため、さらなる猛攻を行うという悪循環です。最前線に送られた兵士は、プーチン大統領のメンツを守るために35分で戦死していくわけです。あまりにもひどい話だと思います」(前出の記者)
プーチン大統領は6月28日、ウクライナ4州を完全に制圧するまで戦争を続けると表明した。軍事ジャーナリストは「この発表から、逆にプーチン大統領が追い詰められていることが分かります」と指摘する。
後編【ロシアを亡国に追い込む「プーチン大統領」致命的ミス…「キーウ空挺作戦」の大失敗がロシア兵「140万人戦死」の原因 緒戦での誤算が“終われない戦争”を生んだのか】では、ロシア軍における新兵教育の杜撰な実態や、なぜウクライナ軍は善戦を続けているのか、最前線で何が起きているのかを詳しくお伝えする──。
註:ロシア軍新兵、ウクライナ前線での生存時間は「数十分」(中央日報・日本語電子版:6月30日)
デイリー新潮編集部
