「手足口病」はどのような感染経路で感染する?感染しやすい場所も解説!【医師監修】

手足口病は主に乳幼児に流行するウイルス性の感染症で、口の中や手足に水疱性の発疹が現れることが特徴です。毎年夏場を中心に流行し、保育園や幼稚園で集団発生することも珍しくありません。この記事では、手足口病の感染経路から予防方法まで、わかりやすく解説します。

監修医師:
居倉 宏樹(医師)

浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

手足口病の感染経路

手足口病の感染経路にはどのようなものがありますか?

手足口病の感染経路は主に3つあります。飛沫感染、接触感染、糞口感染です。原因となるウイルスにはコクサッキーウイルスA16型(CA16)、A6型(CA6)やエンテロウイルス71型(EV71)など複数の型があります。
手足口病は、症状消失後も2~4週間は感染源になりえます。そのため、子どもが元気になったからといって感染予防を怠ってしまうと、周囲の方への感染の可能性があります。

飛沫感染について詳しく教えてください。

飛沫感染とは、感染者の咳やくしゃみによって飛び散る飛沫(しぶき)で広がる感染です。
飛沫は通常1~2mの範囲に広がるため、近距離での接触時に特に感染リスクが高まります。インフルエンザも飛沫感染の感染症の一つです。咳やくしゃみで広がるイメージがあると思います。
手足口病では、特に症状が出現後最初の1週間は、唾液中のウイルス量が多くなります。子どもは大声で泣いたり話したりすることが多いため、飛沫が周囲に飛び散り感染リスクは高くなります。
飛沫感染を予防するにはマスクの着用が有効ですが、小さな子どもにマスクを着用させ続けるのは現実的に難しい部分もあります。そのため、咳エチケット(咳やくしゃみをする際は手やハンカチで口を覆う)を教えることや、症状がある子どもとの距離を適切に保つことが重要になります。

接触感染はどのようなときに発生しますか?

接触感染とは、ウイルスが付着した手指や物品を介して感染する経路です。また、唾液以外にも水疱やかさぶたの中にウイルスが含まれており、滲出液も感染源になります。

感染した子どもが口の中に入れたり、唾液がついた手で触ったおもちゃをほかの子どもが口に入れたり、手で触って、触った手を口に入れる

唾液や水疱からの滲出液に触れた手で触ったドアノブや手すりなど共用部分を介しての感染
タオルの共用

おむつ交換時の不適切な処理など

上記のようなパターンが主な感染の原因です。特に保育園や幼稚園では、子ども同士で同じおもちゃを使って遊んだり、おもちゃを口にしたりすることもあるため、感染リスクが高くなります。

糞口感染について教えてください。

糞口感染とは、感染者の便に含まれるウイルスが何らかの経路で口に入ることで感染する経路です。手足口病の原因ウイルスは腸管で増殖し、便中から排出されます。手足口病は腸管感染症に分類されています。症状が改善した後も便中からのウイルス排出は2~4週間以上続くことがありますが、発症初期に比べて感染力は徐々に低下していきます。
感染パターンとして多いのは、おむつ交換後の手洗いが不十分なケースです。手洗いをしたつもりでも、目に見えない微量の便からウイルスが付着し、感染が拡大することもあります。

手足口病に感染しやすい場所や季節

手足口病に感染しやすいのはどのような場所ですか?

手足口病が感染しやすい場所として多い場所は、保育園、幼稚園、学童保育などの集団保育施設です。これらの施設では、多くの子どもが限られた空間で長時間一緒に過ごすため、ウイルスが広がりやすい環境となっています。
また、家庭内での感染もとても多く、きょうだい間での感染率は高いです。特に年齢の近いきょうだいでは、おもちゃの共有や密接な遊びを通じて感染が広がりやすくなります。また、親子間での感染も起こり、看病をしている親が感染することも珍しくありません。

手足口病が流行しやすい季節を教えてください

手足口病は主に夏季に流行し、日本では例年6月頃から増え始め、7~8月にピークを迎えます。9月以降は徐々に減少しますが、10月頃まで感染者が見られることもあります。この流行パターンは、原因ウイルスであるエンテロウイルスが高温多湿の環境を好むことと関連しています。
ただし、近年は流行パターンに変化が見られることもあります。実際2024年は、9月頃にいったん感染者が増えた後、10月に感染爆発を起こしました。実際、保育施設内では季節に関係なく小規模な流行が起こることもあるため、年間を通じて注意が必要です。
そのため、季節問わず起こりうると考えて過ごすようにしましょう。
また、特に夏季に流行しやすい理由として、プールや水遊びの機会が増えることも挙げられます。エアコンの使用により室内が乾燥し、ウイルスが飛散しやすくなることも一因です。

手足口病の感染対策・予防方法

手足口病にはワクチンや予防薬はありますか?

残念ながら、現在日本では手足口病に対するワクチンや予防薬は開発されていません。手足口病の原因となるウイルスは複数あります。(コクサッキーウイルスA16型、A6型、エンテロウイルス71型など)
これらのウイルスは、ときに遺伝子の変異を起こし新たな流行株を生み出すこともあり、ワクチン開発が困難とされています。
そのため、手足口病の予防は日常的な感染対策を徹底するしかありません。手洗い、うがい、消毒などの基本的な衛生管理を徹底することが重要です。
治療についても特効薬はなく、対症療法が中心となります。発熱には解熱剤、口内炎の痛みには鎮痛剤や口腔用の軟膏などを使用します。多くの場合は7~10日程度で自然に回復します。しかし、まれに髄膜炎、小脳失調症、急性弛緩性麻痺(AFP)、脳炎などの中枢神経系合併症などの合併症を起こすことがあるため、体調をよく観察することが必要です。

自宅でできる手足口病の感染対策を教えてください

家庭でできる手足口病の感染対策として重要なことは、上述したように手洗いの徹底です。石鹸を使って指の間や爪の周り、手首まで丁寧に洗いましょう。特に食事前、トイレ後、おむつ交換後、外出から帰った後の念入りな手洗いを習慣にしましょう。手洗いは手足口病に限らず、そのほかの感染症の予防にもなります。
生活のなかでは、感染者とのタオルの共用は避け、ペーパータオルを使用するか、一人一枚のタオルを用意します。食器や歯ブラシも個人専用とし、使用後は熱湯消毒するか食器洗い乾燥機で高温洗浄します。おもちゃは定期的に消毒し、口に入れやすいものは特に注意して消毒しましょう。
また、換気も重要で、1時間に1回は窓を開けて空気を入れ替えましょう。乾燥しているとウイルスが蔓延し感染リスクが高くなります。

手足口病を発症後、何日程度感染させる力がありますか?

手足口病の感染力は、発症前から症状消失後まで長期間続きます。潜伏期間(感染してから発症するまで)は文献によりさまざまですが約2~7日程度です。
発症後の約1週間は特に感染力が強い時期です。この期間は唾液や鼻水、水疱の中に大量のウイルスが含まれています。
糞口感染では、便へのウイルス排出が症状消失後も2~4週間、場合によってはそれ以上続く可能性があります。このため、症状が治まった後も、おむつ交換やトイレ後の手洗いを徹底する必要があります。
また、出席停止期間については明確には定められておらず、学校保健安全法でも出席停止の対象になっておりません。水疱が完全に消失していなくても、全身状態が良好であれば登園・登校をしていいとされています。ただし、各施設の判断で自宅療養を求められることもあります。
上述のとおり症状消失後も感染対策を意識することが重要です。

幼稚園・保育園や学校、職場で手足口病が流行っているときに気を付けることを教えてください

登園・登校時は、子どもの体調を入念にチェックします。微熱、食欲不振、口の中の違和感など、感染時は初期症状に気がつけるようにしておきましょう。手足や口の中を観察し、小さな発疹がないか確認します。
家庭では、帰宅後すぐに手洗い・うがいをし、着替えをする習慣をつけることも重要でしょう。
また、大人の感染対策も必要です。成人のほとんどは不顕性感染をしているため発症リスクは小児と比べると低くはありますが、感染対策を怠ると感染するため、手洗いを始めとした対策は徹底しましょう。

編集部まとめ

手足口病は、主に乳幼児に流行するウイルス性感染症で、毎年夏場を中心に多くの子どもたちが感染します。原因となるウイルスは複数存在し、一度感染しても別のウイルスに感染する可能性があるため、繰り返しかかることもあります。
感染経路は主に飛沫感染、接触感染、糞口感染の3つで、症状が治まった後も便から2~4週間はウイルスが排出され続けるという特徴があります。
手足口病に特異的な治療法はないため、手洗いをはじめとした生活のなかでの予防が大切になります。

参考文献

国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト手足口病

東京都感染症情報センター手足口病とは