アスレタ(Athleta、同名のフットサルブランドとは別のGAP傘下ブランド)は、消費者に改めて自らをアピールするため、一度インスタグラムのアカウントを削除した。

誰かが別れを経験したときと同じように、アスレタはインスタグラムの投稿をアーカイブ化し、ブランドの新しい方向性を示す新しいコンテンツを投稿し始めた。最高クリエイティブ責任者に就任したばかりのジュリア・リーチ氏によれば、商品に焦点を当てたソーシャルメディア広告やマーケティングキャンペーンとは対照的に、動画主導の戦略、ユーザー生成コンテンツ(UGC)、インフルエンサーの参加によって、アスレタを21世紀へと導く方向性だという。

消費者への見せ方を根本的に変える

アスレタのブランド刷新は、親会社のギャップ(Gap)とそのブランドポートフォリオであるオールドネイビー(Old Navy)、バナナ・リパブリック(Banana Republic)、アスレタが売上の低迷、ファストファッションブランドとの激しい競争、アスレタの前CEOであるメアリー・ベス・ローテオン氏を含む主要リーダーの退任など、いくつもの問題に悩まされている重要な時期に始まった。バロンズ(Barron’s)によれば、ローテオン氏は3月、売上の低迷を受けて退任した。その後、アスレタはアロー・ヨガ(Alo Yoga)のプレジデントだったクリス・ブレイクスリー氏とリーチ氏を雇った。

リーチ氏のリーダーシップの下、ブランドの新しい方向性は自然、旅行、女性のエンパワーメントに重点を置いている。

ホリデーシーズンに突入する前に、ブランドのポジションを好転させ、ソーシャルやデジタルを手始めに、消費者への見せ方を変えなければならないという危機感がある。リーチ氏によれば、ソーシャルやデジタルは小売店より微調整しやすく、ブランド認知度を高め、新たなオーディエンスにリーチできるという。25年の歴史を持つこのアスレチックウェアブランドはインスタグラム以外にも、ウェブサイトや小売店の刷新を予定している。

「ソーシャル戦略では、まずひとつのことをうまくできるようになってから、次の行動を起こすべきだ」とリーチ氏は語る。「何でも全力疾走するのはやめた方がいい。顧客がいるとわかっている場所で、ひとつのことに集中した方がいい」。

ブランド認知度のテストとして

広告エージェンシー、サムシング・ディファレント(Something Different)の共同創業者兼最高クリエイティブ責任者、トミー・ヘンビー氏は、戦略的な観点から、インスタグラムの刷新はフォーカスグループとして機能し、マーケターは広告費をかけずにブランド認知度のテストができると述べている。

「何かを変えることに対して人々がどう反応するかを事前調査できる」とヘンビー氏は説明する。「しかも、5000万ドル(約72億9000万円)もの大金を投じる必要がない」。現在、アスレタはインスタグラムで85万人のフォロワーを獲得している。

現在のところ、アスレタはコンテンツ制作にこれまで以上の費用を投じていない。リーチ氏は社内のソーシャルメディアチームに対し、今あるものをもっと活用するよう求めている。また、TikTokで同じようなことをする計画はないが、ブランドのハンドルネームは確保し、インフルエンサーを通じて存在感を示している。

さらに、アスレタはスレッズ(Threads)を積極活用してきたが、エンゲージメントが低下しているため、「そちらに気を取られるのではなく」一定の努力にとどめる可能性があるとリーチ氏は述べている。

過去にボッテガ・ヴェネタもインスタとTwitterを削除

8月第3週の週末、アスレタはインスタグラムのアカウントを閉鎖し、85万人のフォロワーがアクセスしていた静止画とリール(Reels)をすべてアーカイブ化した。現在は「Power of She(彼女の力)」と書かれた投稿を皮切りに、これまでとはまったく異なる投稿を展開している。リーチ氏によれば、フォロワーは数カ月以内に、これまでより多くのユーザー生成コンテンツ、インフルエンサー、動画を目にすることになるという。

「チーム全員の手を握り、『これまでやってきたことに誇りがないわけではないが、変化を示す必要がある』と言いたい気持ちになった」とリーチ氏は振り返る。

2年前、イタリアのファッションブランド、ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)も同様の動きを見せ、250万のフォロワーを持つインスタグラムのアカウントとTwitter(現X)を削除した。現在は、Facebookのページだけが残っている。Wマガジン(W Magazine)によれば、ボッテガ・ヴェネタがソーシャルメディアのアカウントを削除した理由は今も不明だ。過去には、有名人が商品の発売やプロジェクトの発表に先立ち、話題集めのために同様の行動に出た例がある。

サムシング・ディファレントの共同創業者兼マネージングパートナーであるパティ・マコーネル氏は、「少し挑発的になるために、そのようなことをするブランドもある」と話す。「注意を促したり、少し考え方を変えてもらったりするため、これまでと違うやり方でフォロワーに驚きを与えることもある」。

[原文:Why Athleta archived most of its Instagram account as it attempts a brand refresh to woo back customers]

Kimeko McCoy(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)